イベントレポート|採用頼みから「自社育成」への転換。経営人材を輩出し続ける7つの工程と「構造・認識・覚悟」の壁の越え方

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「次世代リーダーが育たない」「後継者計画が、いつのまにか形だけになっている」。──経営や人事の現場で、こんな手応えのなさを感じたことはありませんか。

外から経営人材を迎える手もあります。ですが、その道は思うほど広くありません。多くの企業にとって、経営人材育成の現実的な出発点は「自社で育てる」ことにあります。

再現性あるサクセッションを支える「7つの工程」と、その運用でつまずく「構造・認識・覚悟」の3つの壁とは何なのか。現場を捉え直すレンズを一緒にのぞいていきます。

※本記事は2026年8月4日にMIMIGURIが開催したウェビナー『経営人材は自社で育てる—MIMIGURIと解く、リーダー育成プログラムと3つの壁』の内容に基づいて執筆しました。詳しい解説は、アーカイブ配信をぜひご覧ください。

「経営人材は自社で育てるーMIMIGURIと解く、リーダー育成プログラムと3つの壁」アーカイブ視聴申込ページ

イベント登壇者

・株式会社MIMIGURI コンサルティング事業長 濱脇 賢一

大学在学中よりコンサルタントとして独立し、創業支援や事業計画の立案、広告戦略立案や地域ブランディングに従事する。また、長期でのBPRによる業務改善、中期での経営企画部・営業部へのハンズオンコンサルティングも経験。コンサルティング事業長と同時に、経営コンサルティングや組織デザイン・ブランド戦略の策定などのプロジェクトオーナーを務め、幅広く企業・組織・事業の成長に伴走。

・株式会社MIMIGURI Head of facilitation 渡邉 貴大

早稲田大学商学部卒。冒険教育や体験学習のファシリテーターを経て、企業の組織開発・人事制度設計・業務プロセス設計へと領域を広げてきた。強みは、対人支援・グループダイナミクスの知見と、制度設計やガバナンス設計といったハードな仕組みづくりを統合できること。 「共にファシリテーションし合う世界をつくる」をビジョンに、日本のファシリテーションの知の系譜をたどる研究にも取り組んでいる。

サマリー

  • 経営人材は「探す」より「育つ土壌を耕す」へ。 外から採るのは狭き門。自社の仕組みと文化を耕すことが、持続可能な土台になる。
  • サクセッションは7つの工程の「バトンリレー」。 前工程の成果物が次工程の入り口になるよう、“成果物”でつないで背骨を通す。
  • つまずきは「構造・認識・覚悟」の3つの壁として捉え直せる。 各壁に、制度・情報をつなぐ「機能的整合」、関係者の前提を揃える「精神的整合」、役割と本人の意思を重ねる「探究の整合」を対応させる。この3つの整合が、人が育つ場を耕すレンズになる。


なぜ、経営人材は「自社で育てる」なのか

人的資本の情報開示(有価証券報告書、2023年3月期〜)やコーポレートガバナンス・コード(補充原則4-1③)を背景に、後継者計画は経営の説明責任になりました。とはいえ、外から経営人材を確保する道は、希少性とカルチャーミスマッチという二つの壁で阻まれています。

MIMIGURIのHead of facilitationである渡邉は、いま起こしたいのは「人材の消費と奪い合い」から「自社で育てる=土壌を耕す」への移り変わりだと言います。「経営人材を奪い合うほど、市場そのものが痩せていく。自社でリーダーが育つ仕組みと文化を耕すことが、まわりまわって自社の持続可能性を高める。これがわたしたちのチームが考える、経営モデルの真ん中にある考え方です」

「本イベントで伝えたい真のメッセージと言ってもいい。各社が自社で育てる仕組みをつくることが、最終的には市場を育むことにつながる」
「本イベントで伝えたい真のメッセージと言ってもいい。各社が自社で育てる仕組みをつくることが、最終的には市場を育むことにつながる」

再現性は、7つの工程の「バトンリレー」から

再現性をもって自社で育てるために、サクセッションは次の7つの工程で回します。

  1. ポストとプール設計:行き先(ポスト)とバイネームの候補プールを可視化する
  2. 人材要件の定義:自社基準の“ものさし”をつくる
  3. 後継候補の見極め:充足度・ポテンシャル・登用時期を多面的に見極める
  4. 個別育成計画(IDP):本人・上長・スポンサーが合意した育成計画をつくる
  5. 経験による育成:必要な“修羅場経験”を積む戦略的配置を行う
  6. 研修と内省の設計:座学に留めず、実責任と振り返りをセットで設計する
  7. 指名・ガバナンス・移行:後継指名の手続きと、着任前後の移行を設計する

コンサルティング事業長の濱脇は言います。「前の工程の成果物が、次の工程の入り口になる──このバトンの受け渡しを意識できるかどうか、なんですよね」。完了を“議論した”ではなく“成果物が残った”で見る。ここで背骨が通るかどうかが、後の議論の深さを分けます。たとえば、工程1で整理した「将来必要になるポストと候補者の一覧」が工程2で人材要件を定義する前提になり、その要件が工程3で候補者を見極める評価基準へと引き継がれていく。成果物が、次の工程の入り口を用意していくわけです。

再現性のあるサクセッション7つの工程。工程の完了ステータスは”成果物”で測っていきます。
再現性のあるサクセッション7つの工程。工程の完了ステータスは”成果物”で測っていきます。

7つの工程で現れる「3つの壁」

7つの工程は、いわば「あるべき順序」です。ですが実際に回してみると、多くの組織がつまずくポイントがあります。これが大きな3つの「壁」です。

  • 構造の壁:制度・情報・プロセスがつながらず、選抜・育成・意思決定がバラバラに動いてしまう。
  • 認識の壁:「後継者はこの人しかいない」と、経営に必要な力を1人に求めすぎてしまう。
  • 覚悟の壁:候補者本人の「やりたい/やれる」と、周囲の期待や準備状況がかみ合わない。

そして、それぞれの壁には、越えるための異なる「レンズ」があります。構造の壁には、制度・情報を一本の線でつなぐ「機能的整合」。認識の壁には、経営をチームで捉え、関係者の前提を揃える「精神的整合」。覚悟の壁には、役割と本人の意思を対話で重ねていく「探究の整合」。MIMIGURIは、この3つの整合を通して「人が育つ場」を耕せると考えています。

ここからは、3つの壁を一つずつ、現場のエピソードとともにのぞいていきましょう。

「構造の壁」と機能的整合──縦割りを越える

毎年欠かさず選抜研修をしていても、なぜ後継者の議論は前に進まないのでしょうか。

研修で優秀だった人が、人員計画や経営陣の目線と噛み合わず、経営会議で「本当にこの人でいいのか」と議論が起きる。しかしよく見ると、選抜要件・研修成果・意思決定基準がバラバラのデータのまま置かれていて、評価の解釈が人によって違う──ここに原因がありました。

ここで使いたいのが、上流のポスト設計からアセスメント、研修ログまでを一本の線でつなぐ「機能的整合」というレンズです。

ある大手製造業では、研修と人員計画が分断し、判断が属人化していました。そこで選抜要件を“客観データで測れる水準”に置き直し、研修要件と連動させ、「研修効果の見える化」を共通の問いに据えました。すると、誰が・なぜプールにいるのかが一枚で見えるようになり、人事部の中が自然と噛み合いはじめた──そんな回り道の末の変化が起きています。

実際の取り組みを例にした、構造の壁の越え方。”見極め”の工程に課題があると当初は見立てていたが、本当の課題は全体の連動にあった。
実際の取り組みを例にした、構造の壁の越え方。”見極め”の工程に課題があると当初は見立てていたが、本当の課題は全体の連動にあった。

「認識の壁」と精神的整合──1人に背負わせない

最有力の候補がいるのに、「現業が忙しい」を理由に、なぜ何年も動かないのでしょうか。

「後継者は彼しかいない」と言いながら、多忙やレディネス不足を理由に据え置かれる。背景には、いまの業績が高い人ほど「その仕事から外せない」という見立てと、経営に必要な力を1人で担うべきだ、という前提があります。

ここで効くのが、業績(過去の成果)とポテンシャル(未来の可能性)を分けて見て、1人に集めないというレンズです。

経営人材育成の場に何度も携わった、コンサルタントの濱脇は言います。「経営要件を全部1人に背負わせると、要件定義を変えることすらできなくなるんですよね。経営を『集合体(チーム)』として捉えて、周りの受け皿ポストを先に整えてから権限を渡していく。そのほうが動きます」

ある老舗オーナー企業では、最高業績を出す事業責任者Aさんへの承継が止まっていました。Aさん1人に背負わせるのをやめ、支える側(ミドルやバックオフィスの責任者ポスト)を先に用意した。すると組織の運営が安定し、空いたAさんの時間が、全社の構想を描く経営職へのシフトを後押ししていきました。

認識の壁を越えたケースのポイント。意思決定がなぜかうまく進まない要因の1つとして、過去の”成果”と経営の”ポテンシャル”を混同してしまうことも挙げられた。
認識の壁を越えたケースのポイント。意思決定がなぜかうまく進まない要因の1つとして、過去の”成果”と経営の”ポテンシャル”を混同してしまうことも挙げられた。

「覚悟の壁」と探究の整合──意欲とレディネスの差を見る

意欲のある候補が潰れ、適任とされる人にかぎって葛藤して降りてしまう。これはなぜでしょうか。

「やります」という意欲を“準備できている”と読み違えて抜擢し、潰れてしまう。逆に、周囲の期待に反して「自分には向いていない」と葛藤し、固辞する。どちらも起こります。

ここで見たいのが、主観的な意欲に流されず客観データで準備度を見つつ、本人の“葛藤”に寄り添うという「探究の整合」のレンズです。渡邉は言います。「組織が、候補者の“判断留保”──つまり悩む時間を支える。役割と自分らしさが重なっていくプロセスに、伴走しつづける。そこが効くんです」

たとえば、約10人のチームを率いていたマネージャーを、計16名・3チームで構成される新設部門の責任者に抜擢したケースがあります。通常は3〜4年かけて段階的に経験する複数の役職を、約2年で駆け上がった結果、着任から1年ほどで役割を離れることになりました。ここから見えてくるのは、意欲を“準備できている”と混同しないこと。そして急に引き上げるときほど手厚い支えと「降りてもまた挑める」余地を残しておくことです。

一方で、「向いていない、降りたい」と何度も口にした幹部候補に、組織が短絡的に応じず、「いまの自分を捉え直す→小さく試す→振り返って言葉にする」といった段階的なプロセスで伴走した例もあります。判断留保を支えつづけた結果、役割と自分らしさが重なり、複数部門を束ねる執行役員として走りはじめたのです。

任せたポジションに後ろ向きな候補者は多い。例示のケースでは、役割と自己認識の狭間で起きている葛藤に、組織として一緒に向き合うことで経営人材まで育った。
任せたポジションに後ろ向きな候補者は多い。例示のケースでは、役割と自己認識の狭間で起きている葛藤に、組織として一緒に向き合うことで経営人材まで育った。


当日の対話から(Q&A)

Q. 「個別育成計画(IDP):本人・上長・スポンサーが合意した育成計画をつくる」の「スポンサー」って、メンターと何が違うのでしょう?

渡邉:ポストへの着任を後押しし、就任後のパフォーマンスにも組織への“説明責任”を負う存在です。最後の“指名の責任”まで引き受ける。そこが、日々の成長を支えるメンターとの違いですね。

Q. 「7つの工程」は多くて、まず何から手をつければ…?

濱脇:まずは「どのポストで、いつまでに、どれくらい足りないのか」を可視化する工程1(ポストとプールの設計)から、ですね。3年後・5年後に空くポストと候補プールの現状を時系列で描く。そこではじめて、後の工程に一本の背骨が通ります。

7つの工程それぞれの成果物について詳しく解説した資料は、本イベント資料の付録にしました。ぜひお手元で読んでみてください。

※イベント資料は、視聴後アンケートに回答いただいた皆様にプレゼントしております。イベント資料配布をご希望の際は、アーカイブ視聴から、アンケートの回答にご協力ください。

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おわりに──まず、自社の「壁」をのぞいてみる

経営人材が続いて育つ組織は、答えを持っている組織というより、“リーダーが育つ仕組みと文化”という土壌を耕しつづけている組織です。7つのバトンリレーを回しながら、「構造・認識・覚悟」の壁に先回りし、3つの整合(機能・精神・探究)で組織をつないでいく。ここに、人事のファシリテーションの面白さがあります。

完璧な設計図を探すより、まず一歩。自社の停滞は「構造・認識・覚悟」のどの壁に近いか──次の会議の前に、そこだけでも振り返ってみませんか。

アーカイブ動画と資料のご案内

本ウェビナー『経営人材は自社で育てる』のアーカイブ動画と登壇資料、基礎編のホワイトペーパー『次世代リーダーの育て方』は、申込みいただいた方にお送りしております。もう少し深く探究してみたい方は、こちらからのぞいてみませんか。

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出典

  • コーポレートガバナンス・コード(取締役会によるCEO等の後継者計画への主体的関与・監督。2021年改訂版の補充原則4-1③)|東京証券取引所 https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/index.html ※2026年7月21日の改訂で「補充原則」の区分は廃止され、基本原則4+原則26+解釈指針の構成に再編されました。引用した「補充原則4-1③」は2021年版の番号で、現行版では該当規定の位置づけ・表現が異なります。
  • 「人材版伊藤レポート2.0」(経済産業省、2022年5月公表)|プレスリリース https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220513001/20220513001.html /報告書PDF https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/pdf/report2.0.pdf
  • 人的資本の情報開示(有価証券報告書、2023年3月期〜。企業内容等の開示に関する内閣府令 令和5年1月31日改正により「サステナビリティに関する考え方及び取組」欄を新設)|金融庁 https://www.fsa.go.jp/policy/kaiji/sustainability-kaiji.html
  • 経験による育成/タフアサインメント(工程5):「一皮むける経験」=McCallら(1988)・金井壽宏ほか/「70:20:10」=Lombardo & Eichinger(CCL)/経験学習サイクル=Kolb(1984)
  • 後継候補の見極め(業績×ポテンシャル):9ボックス・グリッド/タレントレビュー=GE・McKinsey に由来する一般的な実務
  • 「3つの整合(機能的・精神的・探究)」の土台:MIMIGURI経営モデル「CCM(Creative Cultivation Model)」=構造(機能的整合)と文化(精神的整合)を「探究の整合」で束ねる整合性モデル(詳細はホワイトペーパー『次世代リーダーの育て方』を参照)

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