対話に意義を感じ未経験からコンサルタントに。MIMIGURI 柳川小春のキャリア #冒険的キャリア Vol.1

  • 柳川小春

    コンサルタント

  • 一橋大学経済学部卒。HR領域のソフトウェア会社でブランディング・マーケティング責任者を経験。MIMIGURIでは、数十名規模のベンチャーから数千名規模の大企業まで、さまざまな規模の組織変革に、遊び心を持って対話を重ねながら伴走している。

MIMIGURIは組織や経営に対する深い洞察と専門知を持つコンサルティングファームとして、さまざまなコンサルタントが在籍しています。そのバックグラウンドは多様で、企業再生コンサル、組織人事コンサル、ファシリテーター、PM、デザイナー、経営企画、人事、BizDev、法人営業などの経験を持つメンバーが活躍しており、本記事では、コンサルタントとして活躍する柳川小春さんのキャリアの変遷や思考の変容、働く上での価値観を伺いました。

未経験からコンサルタントとなり、ご自身を「人見知りで社交性がない」という柳川さんが、誰よりも顧客のことを深く読み解き、対話を通じ相手の立場に立つことで見えた景色とは。記事の最後には、チームメンバーからのコメントも掲載。ぜひ最後までお読みください。

聞き手:二宮みさき

上司としても部下としても葛藤する中で、相手の景色に立った“対話”を通して見えたもの

──柳川さんは、HR領域の事業会社で新規事業の立ち上げやブランディング・マーケティング責任者を経験後、2021年にMIMIGURIに入社されました。MIMIGURIを知ったきっかけを教えていただけますか。

柳川 前職在職中の2020年に、上司の薦めで『問いのデザイン(安斎勇樹/代表取締役Co-CEO 著)』に出会いました。

当時、チームメンバーが急激に増える中で、メンバー間の関係性の課題に向き合っていました。新しい関係性の構築にどういった工夫ができるのか、チームみんなで課題に向き合うためには何ができるのか、興味関心を持っていた時期でした。『問いのデザイン』の考え方を活かし、総合的な対応はどう起こせば良いか、日々の業務の設計に使っていた記憶があります。

──『問いのデザイン』がきっかけで、MIMIGURIに?

柳川 いえ、そのときは「問い」をこんなにも掘り下げる、良い意味での変態さがある安斎さんという面白い方がいると認識していましたが(笑)、当時のミミクリデザインを詳しく知っていたわけではありません。

実は、さらに前の2017年頃、冒頭で触れた『問いのデザイン』を薦めてくれた上司からの期待に応えられず苦しい時期がありまして。上司の言っていることがさっぱり理解できず、なぜ自分がつらいのかもわからない。どうしたら乗り越えられるのだろうと、内省していた時期がありました。

その際に読んだ本(マーシャル B.ローゼンバーグ著『NVC人と人との関係にいのちを吹き込む法』)に「どこまで相手の景色に立って考えられているのか」という観点の話があり、本当にガーン!というくらい強い衝撃を受けて。ずっと自分の景色での不満を考えていましたが、上司の景色に立ったとき、私たちは本当に対話しているのかと問い直せたんですよね。そうすると、例えば社長だったら、上場直後でこういうプレッシャーがあるとか、リーダーとしてこういったリターンが必要だとか、何をしてほしいかが見えてきました。

橋を架けるポイントを見つけた上で対話をしたら、初めてちゃんと話せたと感じました。話してみると、お互いに「良いサービスをお客さまに届けたい」という目指している点は一緒だと気づき、その上で、どこがずれているのか、どこをどうすれば気持ちよく向かい合えるのか話が進んだのです。

それから潜在的な関心として“ナラティブ”や“対話”というキーワードが常に脳内にある状態で目の前のミッションに向き合う中で、『問いのデザイン』に出会いました。

──実際の業務ではどう活かされていましたか。

柳川 ちょうどコロナ禍に入り、チームのミッションや働き方が大きく変わりました。私はマーケティング領域を管掌していたので、以前はオフラインの展示会でリード獲得をしていたものを全てオンライン化し、業務プロセスや目標設計の見直しを行う必要がありました。

特に業務プロセスの変更は急務だったので、優先的に取り組んでいたところ、チームに何名か不調者が出たのです。急激な環境変化に対応する必要がありましたから。とはいえ、当時の自分としては、それでもやらなきゃいけないという気持ちが強かったと思います。

結論、その後チーム一丸となり危機を乗り越え、オンラインのリード獲得やミッションの達成をする成功体験を作れました。けれども、不調者を出してしまったプロセスには問題があったとずっと思っていて。

宇田川(元一)先生の勉強会に行き、当時リクルートマネジメントソリューションズさんと開発されていた「組織における対話方法」も学びながら実践しました。その中で、今度は、自分が気づいていなかったメンバーの景色が見え始めました。それまで、精神論じゃないですが「やるしかないんだからやるでしょう」というような、自分の景色を当たり前と捉えている部分がありましたが、覆される機会があったのです。そして、リーダーが第一声をあげたり、マネージャーが1人で抱え込むような構造の不健全さ、職場風土のあり方というものに目が向くようになりました。そこでも、やはり対話ってすごいなと思い、多くを学びました。

──上司と柳川さんにおける“対話”から、今度はコロナ禍において、メンバーや部下と柳川さんの関係性に立場が変わり“対話”の意義を感じられた。

柳川 そうです。それらは、社内のマネジメントやファシリテーションの文脈ですが、マーケティング業務を行う上では、顧客パーセプションの変化を起こす必要があり、顧客コミュニケーションという意味でも価値を感じていました。当時、日本ではまだ認知の低いプロダクトを広めるところに責任を持っていたので。

そもそもマーケティングのキャリアを楽しんでいたのは、ユーザーさんとの遠隔での対話や、対多数のコミュニケーション設計が根本的に楽しかったからだと思います。

事業会社からコンサルティングファームへ。顧客よりも顧客のことを考えて見えた、顧客が本当に欲しかったもの

──前職でもやりがいを感じ成長されてきた中で、異業種であるコンサルティングファームのMIMIGURIにジョインされたのはなぜでしょう。

柳川 いくつか理由はあるのですが。

ひとつは、プロダクトに立脚せずに課題を捉えて、ソリューションを提供したくなったからです。前職はHRテックのプロダクトを提供していましたが、事業会社は自社のプロダクトで解決する課題を捉える必要があります。業務の中ではHRの課題を知り触れる機会が増えるけれども、プロダクトで解決できるところはここまで、プロダクトとしてあるべき機能はここまで、となります。それはプロダクトを開発し提供する上では適切だと理解しつつ、もっと広い課題に興味を持っちゃったんですよね……。だから、ある種ソリューションを持たない会社で、プロダクトに縛られずに自分たちでソリューション設計して、課題解決していける環境にチャレンジしたいと思いました。

二つ目は、自分自身のケイパビリティ探究をもっと楽しんで行きたいと感じていました。勢いのあるベンチャー企業で、入社から早々にマネージメントキャリアになったことは、現在の業務にもつながっているので感謝しています。けれども、私としては、もう少し人間性を磨き垂直的にも成長した上で、自分の納得がいくスピードで幸せだと感じられるような人生を歩みたいなと。

最後に、お客さんと直接対峙して最前線に居続けたいというのもあって。マーケティング業務では一対多のコミュニケーションが多かったのですが、一対一での“対話”がやっぱり好きなのかもしれないですね。

──MIMIGURIでのコンサルティング業務では、顧客の課題を分解・分析した上でご提案し、顧客と「一緒に考える、一緒に作る」という共創の価値観もあります。事業会社でも顧客の声を聞き、仮説を立てペインを見つける取り組みは多いですが、コンサルティングならではの捉え直しやソリューションの提案等、どうやって“事業会社脳”から“コンサル脳”に変容させ、途中にどういった葛藤がありましたか。

柳川 葛藤も何も未経験でしたからね(苦笑)。

濱脇さん(濱脇賢一/コンサルタント)のオンボーディングが大きかったと思います。入社して何ヶ月も言われ続けていたのが「もっと顧客のことを考えなさい」、ただその一言をひたすら聞き続けました。お客さん以上にお客さんのことを考え続けなさいと言われて、それを愚直にやり続けました。

──これまでも顧客のことは考えていたと思いますが、具体的な違いは何でしょう。

柳川 「顧客」という言葉に含まれる領域が、桁違いに広がったし深まったのが最大の変化です。話している内容は、本当にお客さんのためになるのか、という。今、この瞬間は良いかもしれないけれど、将来的にお客さんの組織・事業のためになるのか、そこで働く方々をはじめとするステークホルダーの方々にとってよりよい未来に繋がるのか、その先でより良い“社会”に寄与するのか、そこまで考えられているのか。目の前の困りごとを解決するのは誰でも考えられるけれど、もっと長い時間軸で、もっと深いレイヤーで、真のパートナーになれているのかを考え続けています。

──実際に顧客からいただいたフィードバックで、嬉しかったことや変化したことはありますか。

柳川 印象的なのは、先方からのご依頼内容と異なるご提案をした際に、「ずっとこれについて話したかった!」「もっと話し合うべき課題があるかもしれない」とリアクションをもらうことですね。この問いについて話したかったというように、それをきっかけに先方同士で勝手に話しが弾む瞬間は嬉しいですね。さらに、「(当初の予定より)もっと領域を広げて一緒にやりませんか」と先方から言っていただけるのは喜ばしいです。

──柳川さんなりに先方のご相談を解釈し、問いを置き直して、本質的な課題を見極めている。「お客さんよりもお客さんのことを考える」ということですね。

依頼をくださる企業の方々は、なぜ本質的な課題が見えづらくなっているのでしょうか。そういった際、MIMIGURIだからこそのソリューションがあるとすれば、どんなものでしょう。

柳川 いわば表層的な課題設定になってしまうのは、求められているアカウンタビリティの期間幅が規定されているからだと思っています。ご自身の管掌領域で、例えば3ヶ月で結果を果たさないといけない。そういった時間軸で会話が進むので、限られた問いに閉じやすいです。

かつ、それらを越境するためには、社内の様々なステークホルダーを突破しないといけない。例えば利害の一致しない別部門と話をしないといけないというように、様々な不確実性が頭をよぎり、気付かぬうちに問いを矮小化し、自分の中で解決できるものに設定しがちです。そういった際に、担当者1人で拡張するのは難しくても、ファシリテーターやコンサルタントが入ることで解決する場合があります。

仲間のポテンシャルを信じる。一人では立ち向かえない問いにも、多様なレンズで考える糸口を

柳川 MIMIGURIならではの特徴としては、人事なら人事というように領域で担当するのではなく、1人のコンサルタントやファシリテーターが横断的に提案できる点ですかね。この領域は他の専門家やチームに渡さないといけないということがなく、領域横断的に問いを立て担当できるのは強みだと思います。

先方からは育成の課題だと相談を受けたとしても、対話をしてみると事業開発のプロセスだったり組織文化の問題が絡んでいたりする場合もある。そういう場合も全部まとめてファシリテーションの価値を発揮できますし、社内の複雑な関係性もある中で、第三者がファシリテートすることによって、一緒に話していたら問い直されるかもしれないという期待を持っていただいてると感じます。

──逆に捉えるとコンサルタントの知識の幅が広く、どの職種、どの業界のことにも精通しているように聞こえますが……。

柳川 いやいや、もちろん全ては分からないですよ(笑)。

MIMIGURIの良さは、自分が分からないことにも問いを立てられる点です。当然、自分自身でも勉強しますし努力が全然必要ないわけじゃないですけれど。

自分では分からない場合も、どうすると良いだろうとほとんど0の状態で社内に投げかけたら、もう100返ってくる環境です。多様なレンズを持った経験豊富なメンバーがいるので、直接的な知識がなかったとしても、考える糸口がいくらでもつかめますね。

仲間のポテンシャルを信じ、分からないことも分からないと言えるのがMIMIGURIの良さだと思います。あ、仲間のポテンシャルを信じて問いを立てる感覚も、オンボーディングプロセスで得たものです。

──仲間のポテンシャルを信じる、良い言葉ですね。仲間がいたことで挑めたプロジェクトはありますか。

柳川 ある企業のDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)推進プロジェクトで、先方が望む状態を作ろうという発想でプロジェクトを設計したことがありました。そこでメンバーの志田さん(志田雅美/メディウムデザイナー)から、ちょっと待て、と言われまして。詳細は割愛しますが、端的にいえば、DE&Iの推進を、企業の市場価値を上げたり事業に寄与するという文脈だけに閉ざして良いのかという指摘でした。

本当にハッとして。そういう考え方そのものによって、本来見直していきたい既存の社会構造をより強化する方向加担していないのか、既存の論理の中でのDE&Iを便利な道具にして良いのかという視点でした。

──DE&Iを推進しようとしているのに、結局マジョリティーしか見ていないのではないかという。

柳川 そうですそうです。

私は、とにかくクライアントの目の前の課題にフォーカスしてしまいやすいので、多様な視点で声をかけてもらうことによって、揺さぶられるんですね。自分の中の生き方そのものや物事の捉え方が揺さぶられるし、例えば経営学的な文脈だけではなく社会学的な文脈でも捉えたときにどうあるべきなんだろうと視点を行き来しながら問い直せています。

──柳川さんの強くて良い部分として、顧客のお話を飲み込みすぎてしまう中で、チームメンバーがいることで、本質に立ち返ることができる。強みであり弱みある部分を仲間が補ってくれてる状態ということですね。

柳川 それがあるからこそ、生きていられる感じです。自分の良さは捨てずに自覚した上で、それを揺さぶられるような、本当にこれでいいんだろうかみたいな感覚を、安心して仲間に委ねられるっていうのは良い環境だなって思います。

顧客の先にあるものを見つめ続けるMIMIGURIだからこそ、インクルーシブな社会を作れると信じている

──これから、MIMIGURIで、もしくは社会に対してやりたいことはありますか。

柳川 まだ綺麗にまとまっていないですが……。

先ほどのプロジェクトの話からもつながりますが、今は、もっとインクルーシブな組織や社会を作っていきたいと思っています。

これは答えのない難しいテーマだとも思っています。ともすれば一般的な会社においては、効率的に事業を営むために、誰かを置いてけぼりにすることが前提となって組織が設計されてるケースが少なくないと感じています。組織もそうですし、社会もそうだなと。

私自身も、気づかぬうちに誰かを置いてけぼりにするとか、見て見ぬふりをすることをやっているかもしれないし、これからもやってしまうかもしれない。

でも今後、組織や社会のあり方は、1人1人が、その人のレンズや良さを持ち寄ってみんなで生み出していく。トップダウンで組織が変化するだけではなく、ミナベさん(ミナベ トモミ/代表取締役 Co-CEO)が「気長な経営」とよく社内でも言っていますが、長い目で見たら多様な視点での変化があると思っています。その変化を促す事を私は支援していきたいですね。

──それが「MIMIGURIなら実現できる」と感じているのはどうしてでしょうか。

柳川 クライアントワークですから、顧客に価値を発揮するのが前提の仕事ではありますが、MIMIGURIにいるみんなの目線って、その先にあるんです。目の前のお客さんの抱える課題や起きている問題事象は、どういった社会構造から生まれてるかということに探究心を燃やす仲間がいっぱいいます。

そういった長い目線で一つ一つの案件に向き合うのと、一つの独立した案件として目の前の顧客の要望に応えたら終わりっていう目線で仕事をするのとでは全然違うと思っています。MIMIGURIでは、より広くお客さんの課題を捉えて、それをある種“気長に”解決していくことを大事にできるから、MIMIGURIでならできると信じています。

評価制度でも、定量的な成果も当然見られますが、成果を出す過程で自分自身の探究が深められているか丁寧に壁打ちしながらリフレクションを深めアウトプットしていく“ミグシュラン”という独自の評価制度・環境があります。目の前の仕事だけをやっていても評価されないというか、長い目線での自分自身の発達に目を向ける必要がありますね。

MIMIGURIはそういった知的な厳しさ、探究への期待を持ちながら、仲間に対し探究を深める支援を惜しまない愛とリスペクトを前提としている環境だから、弱い部分のある私でもなんとかクライアントワークの中で探究活動を続けていける気がします。

自身には社交性がないと言っていた柳川さん。顧客、上司・部下、同僚、全ての相手との“対話”を大切にし、相手の目線に立ち続けているからこそ、MIMIGURIでの活躍とご自身の人生の豊かさを両立させられているのだと感じました。

さて、実際の柳川さんの活躍を、チームメンバーたちはどのように感じているのか、メッセージをもらいました。

斎絢矢さん(ファシリテーター)より:

小春さんは、誰よりも『仲間・顧客・社会の可能性を信じ抜く人』であり、その可能性探究のために惜しみなくGIVEができる人です。また、常に人や物事と真摯に向き合い、"良さ"や"価値"に目を向け、愛をもってそれを伝え続けてくれる人でもあります。人や組織の変容に伴走する上で、先の見えない難しい状況もたくさんありますが、小春さんがいてくださることで、顧客も私たちメンバーも、自分たちらしく困難を乗り越えていける感じがしています!

安野友博さん(プロジェクトマネージャー)より:

小春さんを一言で表現すると、"一人じゃないということに気づかせてくれる人"ではないでしょうか。表面的におこなっていることは、コンサルティングや課題解決ですが、その実、一見立場が異なるクライアントとMIMIGURIが、深いところで繋がり、志を共にできるということを、互いに見出す。このプロセスに日々向き合われているように感じます。それゆえに多忙でもあるので、ご自身の時間も作ってほしいですね!

濱脇賢一さん(コンサルタント)より:

未経験からの入社であるにも関わらず、柳川さんは「自分で手を動かさないとずっとわからないと思う」とよく仰っていました。目の前の対話を大事にしながらもプロジェクトや顧客のゴールに向き合う、その前提にある自分らしい学習や探究のスタイルを磨いていくことは今もなおご活躍されている要因なのかなと感じております。


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  • マーケティング・広報

    二宮 みさき