文化に寄り添い、「対話」と「仕組み」でより良い組織をデザインする(メンバー対談・ミナベトモミ / 安斎勇樹)

  • 安斎勇樹

    Co-CEO

  • ミナベトモミ

    Co-CEO

  • 東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。現在は東京大学大学院 情報学環 特任助教を兼任。博士号取得後、株式会社ミミクリデザイン創業。その後、株式会社DONGURIと経営統合し、株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEOに就任。経営と研究を往復しながら、人と組織の創造性を高めるファシリテーションの方法論について探究している。主な著書に『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』、『問いかけの作法:チームの魅力と才能を引き出す技術』、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』、『ワークショップデザイン論』などがある。

  • 早稲田大学第一文学部 ロシア語ロシア文化専修卒。広告ディレクター&デザイナー、家電メーカーPM&GUIデザイナーを経て、デザインファーム株式会社DONGURIを創業。その後に株式会社ミミクリデザインと経営統合し、株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEOに就任。デザインキャリアを土台にしながら、組織/経営コンサルティング領域を専門とし、主にTech系メガ/ミドルベンチャーの構造設計・制度開発を手がける。特に人数規模500名超えのフェーズにおける、経営執行分離・マトリックス型の構造設計と、それらを駆動させるHR制度運用を用いた、経営アジリティを高める方法論が得意。

これまでミミクリデザインでは、メンバーへのインタビュー記事を通じて、メンバーの専門性と、弊社のコーポレートメッセージ「創造性の土壌を耕す」との結びつきについて発信してきました。今回は特別編として、現在組織デザインの専門家として参画するミナベトモミ( @tomomiminabe )と、弊社代表の安斎勇樹( @YukiAnzai )による対談企画をお届けします。

まずミナベからは、2019年3月から組織マネージャーとして参画し、メンバーの一人として関わる中で、ミミクリデザイン特有の組織文化に触れた際のエピソードや、大事にしてきたポイントを伺いました。また、安斎からはミナベが組織づくりに関わったことで生じた変化について、経営者の目線から語ってもらっていました。組織を「内側」と「外側」の両方からデザインしていく中で重要なエッセンスが詰まった記事となっています。ぜひご覧ください(聞き手:水波洸)

組織の文化に寄り添う中で新たに見えてきた、「判断の留保」の価値

よろしくお願いします。まず代表の安斎さんにお伺いしたいのですが、ミナベさんが組織デザインの専門家としてミミクリデザインに参画したのが、2019年3月。それから今日に至るまで、組織づくりに関するナレッジの収集や発信により一層注力されていた印象を受けます。安斎さんが組織開発・組織デザインの領域に関心を寄せるきっかけとして、ミナベさんによる影響も少なからずあったのでしょうか?

安斎そうですね。ミミクリデザインにジョインしてもらった当初、ミナベさんにはミミクリデザインの組織構造や制度の面でサポートをしてもらおうと考えていたのですが、それとは別に何か面白いことができそうだという漠然とした感覚もあったので、それでは何ができそうかと、探ってみることになりました。まず最初に「ミナベさんがミミクリデザインにもたらしてくれている価値や良さとは何なのか?」という話から議論が始まり、そこから、「ミミクリが持っている組織開発(対話やワークショップを中心的な手法とした、組織内の文化や関係性のデザイン)の知見と、ミナベさんが専門とする組織デザイン(組織における制度や仕組みのデザイン)の知見を組み合わせることが重要なのではないか」という仮説が生まれました。

安斎その仮説を起点に議論を重ねて、経営学や組織開発、組織デザインなど、さまざまな領域のナレッジを共有しながら、お互いこれまで専門外だった分野について知見を深めていくとともに、「組織デザインと組織開発を組み合わせる中で、ミミクリデザインという組織の枠組みの中で何を大事にしていくべきか」といった重要な論点が見えてきました。

「組織開発と組織デザインをいかに組み合わせるか」というのは、11月に開催された研究会*でも中心的な問いとして扱われていましたね。

安斎そうです。あの研究会の話題提供で語った内容が形になるまでに、実はかなり濃密なやり取りが僕とミナベさんの間で日々重ねられていました。

*WDA限定研究会「対話と仕組みで組織をファシリテートする-ワークショップ×組織デザインの可能性を探る」
2019年11月20日開催。「組織デザイン」の専門家であるミナベトモミと、「組織開発」のクライアント案件を多数担当してきた安斎勇樹による話題提供や、参加したWDAメンバーとのパネルディスカッションを通じて、組織を「内」と「外」からデザインしていく上で重要となるエッセンスを探究しました。
お二人の話題提供を全編収録したイベントアーカイブ動画を、ミミクリデザインが運営する会員制オンラインコミュニティ『WORKSHOP DESIGN ACADEMIA』内で公開しています。興味のある方はぜひ下記リンクより詳細をご確認ください。
https://www.mimicrydesign.co.jp/wda/

ミナベ本も相当読み込みましたし、論文もめっちゃ読みましたよね。なんとなく知っている概念でも、本来どのような文脈で用いられている言葉なのか、しっかり調べました。

安斎組織という枠組みの中で、文化やコミュニケーションなどの「ソフト」な部分と、制度や構造、仕組みといった「ハード」な部分は、一見すると対立しているように見られがちです。しかし、ハードとソフトをしっかりと区分できるようなキーワードが何かあるのかというと、いまひとつはっきりしません。結局「『内側からか外側からか』という切り口の違いこそあれど、『組織をよくする』という目的に向かっている点では同じ」と、研究会で主張した結論に至るまでには、膨大なインプットに加えて、これまでの実務と研究で得た知見を整理する必要がありました。

たしかに今回の研究会は、ミミクリデザインを運営する上でお二人が得てきた実際的なナレッジが、一般化された上で参加者に広く共有されていた点が特徴的でした。たとえば、研究会での重要キーワードの一つに「心理的契約**」という言葉が出てきましたが、ミナベさんは、組織マネージャーとしてミミクリデザインに関わる中でも、心理的契約の形成を重要視されていたのでしょうか?

**心理的契約
職場におけるあらゆる関係性の中で構築される暗黙的な「期待」や「義務」など。雇用主と従業員、あるいは従業員同士においてこの心理的契約のギャップないしはマッチが、個々のエンゲージメントに大きな影響を与える。

ミナベそうですね。組織がうまく機能していく上で、メンバー同士が心理的契約の存在を意識することはとても重要です。そして、そのための手順としては、まず対話を積み重ねることで組織全体に通底する共通言語や文化が生まれて、その後にメンバー個人間の心理的契約ができあがると言われています。また、僕自身も、組織のカルチャーを理解して、心理的契約を結ばなければ、その組織に合った仕組みを精緻に作ることは難しいと考えています。

ミミクリデザインの場合は、どのような文化やコンテキストがあると感じましたか?

ミナベとにかく、対話の文化が根付いていることを強く感じました。どのメンバーも、対話の力を信じている。正直なところ、最初の頃は、その文化が強すぎて戸惑ったこともありましたね(笑) 理屈の上では理解していても、実際に関わり合う中では、腑に落ちない部分も結構ありました。

どんなところで「腑に落ちない」と感じたのでしょうか?

ミナベ例えば、関わり始めて最初のころ、ある会議に同席させていただいた時に、「全然結論を決めないな...」と思ったことがありました。なんだか、ボール回しをずっと続けているように見えたんです。だから、終わった後に安斎さんに「あれってどういう状況だったんですか?」と訊いてみたんですが、そしたら、「エポケー***です」って返ってきて。

***エポケー
ドイツの哲学者・フッサールを創始とする現象学における、あらゆる先入見を拝して、目の前の事象をあるがままに記述する態度のこと。また懐疑主義においては、エポケーは「判断を留保すること(suspension of judgment)」を意味する。

エポケー(笑)

ミナベ「え、エポケー??」みたいな(笑)ミミクリの場合は、たとえ答えが見えていたとしても、より良い結論が出る可能性を諦めず、対話を続けようとする傾向がとても強い。だから、安斎さんから「エポケーです」と言われて、「なるほど!」と思いました。

ミナベさんはそのような文化の違いとどのように向き合ったのでしょうか?

ミナベ「早く決めなよ」と批判的に指摘することもできなくはありませんでしたが、まずはミミクリの文化を理解することが大切だと思っていていたので、しばらくそのエポケーに寄り添うことにしました。そうすると、対話を続けるうちに最初に見えていた結論よりも良い結論が見つかったり、チーム内で信頼感が形成されたりと、良い部分もたくさんあることがわかったんですよね。

安斎ミミクリのマネージャーは、すべての打ち合わせを対話モードでやろうとしてしまうんですよね。だから、アジェンダがたくさんあってもまずチェックインから始まるし、誰かの意見がそのまま反映されるのではなく、自分の意見に対して相手がどう思うかを聞いて、お互いにとって何が最善の結論なのか、対話をしながら探し続けてしまう。一つの事柄の意思決定を終えるまでにすごく時間がかかってしまうんです。ミナベさんが言ってくれたように良い部分もあるけれど、ベンチャー企業なので、早く終えられる意思決定は早く終えたほうが基本的には良いですよね。

ミナベさんが関わるようになってから、マネージャーによる会議の進め方に何か変化はあったのでしょうか?

安斎あったんですよ。順を追って説明すると、最初の頃はマネージャーたちもミナベさんも、まずお互いの文化を知ろうとしていました。その後は、マネージャーたちの場合は、今の自分たちの進め方の良い部分と悪い部分を理解したはいいけれど、そのバランスをどう取るかで迷っていました。ミナベさんは、僕らが対話を重視していることを知って、フッサールの本をめちゃくちゃ読み直してましたよね(笑)

ミナベ読んだよね。改めてめっちゃ読んだ...。それで、結局どんなふうに折り合いがついたのかと言うと、「判断の留保は、ただやみくもに留保するわけではないよね」という話をしました。判断の留保は本来、「本当は意思決定の判断ができるんだけど、あえて留保すること」を指す言葉だったんです。だから、意思決定ができない状況で対話して、結論がなかなか出ないのは、判断の留保とはいえません。それを理解した時に、判断の材料を集めて意思決定できる状態にするまでは僕の方でサポートできるから、その次の段階である対話による深掘りは、マネージャーたちにやってもらおう、と思いました。僕の関わり方がはっきりと見えたんですよね。

安斎「対話の場では意思決定をしなくてもよい」や「対話をしたのだから、意思決定に責任を取らなくてもよい」と思われているケースがありますが、それは誤解です。そのような意識で行なわれるコミュニケーションは生産的ではないですよね。意思決定のモードも、対話のモードも、組織の生産プロセスに何か資する要素があるから、そのモードで取り組む意味が生まれます。二つのモードのメリットとデメリットを理解しながら、状況に応じて切り替えていくことが重要で、我々としてもそこを取り違えてはいけないなと思いました。今後組織が拡大していく中でも、対話を大事にしていく価値観は変わらないと思います。だけど、だからこそ対話が重要である理由や、逆に意思決定が求められるタイミングがどこなのか、正確に理解して伝えていく必要があると思っています。

メンバーによる内発的動機に溢れた仕事を、制度と仕組みによってサポートする

ミナベさんが代表を務める株式会社DONGURIさんには、2019年3月に公開されたミミクリデザインの現在のWEBページの制作を担当してもらいました。ミナベさんと安斎さんはそれ以前からお知り合いだったのでしょうか?

安斎ミナベさんと初めてお会いしたのは、2018年の秋頃でした。他の方の紹介でDONGURIさんの社内勉強会に呼んでいただいたんですが、その場では挨拶程度で、特に話し込んだというほどではなかったんです。家に帰ってから、DONGURIさんのことを改めて検索して調べてるうちに、ミナベさんが執筆された採用や人事関連の記事が目に止まったんですよね。その頃は、ミミクリもそろそろ採用活動を始めようとしていた時期だったので、気になって読んでみたら、採用・人事に関する戦略がたくさん書かれていて、「あの人、頭の切れる人だったんだ!」と、その時思いました(笑)

ミナベ初めて聞いた(笑)

安斎勉強会の時も、社内ですごくいじられてたから。CEOなのに(笑)...だけど、ミナベさんの行動の一つひとつには、実はちゃんと戦略があるんですよね。僕が参加した勉強会も、外部の人を招待して実施すれば、その人たちがSNSで発信するから、DONGURIさんのことを知らない人にも情報を拡散してもらえるという意図があったんだと思います。後からその戦略に気づいたんですけど、まんまとSNSで拡散してしまった。それで、逆に好感を持ちました。「あ、なるほど、すごい」って。

ミナベそんなふうに思ってたんだ(笑)

安斎その日からSNSで繋がって、DONGURIさんの様々な動きが視界に入るようになったことで、気になる存在にはなっていました。それで創業2周年に合わせてミミクリデザインのウェブサイトをリニューアルするにあたって、「DONGURIさんにお願いしてみたい」と僕が気まぐれで言ってみたら、他のメンバーも賛同してくれて、正式に依頼することが決まりました。

勉強会以降にお二人が改めて会ったのは、新しいWEBページに関する打ち合わせの時でしょうか?

安斎そうですね。ただ、ミナベさんは初回と二回目の打ち合わせに同席していたくらいで、実作業に口を出すことはほとんどありませんでした。あらゆる工程を現場のメンバーに任せていて、それでもなおとてもクオリティの高いウェブサイトを作ってくださったので、DONGURIという会社の組織づくりがうまくいっていることを感じました。

ミナベさんは最初の打ち合わせの時が、ミミクリデザインのオフィスに来社した最初の機会ですよね。どのような印象を持ちましたか?

ミナベ事前に調べようと社名で検索したら、ワークショップをやってる画像ばかり出てくるから、打ち合わせ中も「ここからいつワークショップを仕掛けてくるんだろう」と思ってドキドキしていました(笑)だけど、安斎さんも同席していた他のメンバーもすごく真面目で、結局なにも始まらないまま終わっちゃって...。

安斎そんなやたらめったらワークショップやらないから(笑)

ミナベずっと警戒してましたね。いつワークショップやるんだろうって。

そこからミナベさん個人が、ミミクリデザインの組織デザインに関わるようになるまでの経緯を教えてください。

安斎ちょうどDONGURIさんにウェブページのリニューアルを依頼していた時期は、ミミクリデザインのメンバーの数も少しずつ増えてきていたので、組織に階層を設けて、マネージャーを配置する必要性を感じ始めていました。ちょうど僕自身も子どもが産まれたこともありましたし、代表としての職務に集中する意味でも、現場はマネージャーに託そうと思っていたんです。だから、当時は組織の構造を変えようといろいろ考えながら試行錯誤していました。その時に、ミナベさんからお話をいただいて、事業計画づくりや組織づくりのコンサルティングに入ってもらうことになりました。

ミナベ組織の理念や目指したい方向性に対して強い共感を覚えた一方で、実際のところ、当時のミミクリデザインは、安斎さん個人にものすごく負担がかかる構造になっていました。そうした状況を見たときに、ミミクリが組織として大事にしている部分を保持しつつ、持続可能性が上がるように構造や仕組みを変化させて、最終的に理想が実現するのだとしたら、それは僕にとってもすごく夢があることだと思えたんですよね。

組織の姿勢や目指す方向性に共感した点が大きかったんですね。

ミナベ僕が他の組織に関わり始める時は、基本的にタスクありきではないんですよね。まずは面と向かって話してみて、出てきたミクロな課題を解決しながら、だんだん視野を広げて、大きな課題にアプローチしていくようなイメージでしょうか。例えば「評価制度を作りたいから入ってほしい」というように、初めからやることが決められている依頼のされ方はとても苦手です。どちらかというと、目の前の人が、知的探究心などの内面のポジティブな想いを原動力として仕事ができるように、サポートをしたいと思っています。結局のところ、「好きな人が困っているから助けたい」というところが大きいのかもしれません。

「学習者」としてのスタンスを楽しみ、対話によって醸成される組織文化を味わっていく

組織づくりを任せている中で、安斎さんはミナベさんのどのようなところを特に頼りにしていますか?

安斎僕とミナベさんでは、背景に持っている知識基盤や、これまでキャリアの中で積み上げて来たものの性質が、良い意味で明確に異なっています。ミナベさんの場合は組織づくりや経営における知識と経験を僕よりもかなり豊富に持っていますよね。...DONGURIさんって今何期目でしたっけ?

ミナベ8期目ですね。

安斎ミミクリデザインが現在3期目なので、単純に経営者として5年先輩ですよね。また、ミナベさんは他のベンチャー企業のコンサルティングも多数担当されていて、組織デザインの専門家として日々試行錯誤しながら知見を積みあげられています。それはミミクリに不足していた知でもあったので、とても頼りにしていますね。それからもう一つ、頼りにしているというと少し意味合いは異なるかもしれませんが、ミナベさんはコンサルタントであると同時に学習者でもあると僕は思っていて、その姿勢にはとても好感を持っています。

どのような姿勢から「学習者」だと思うのでしょうか?

安斎コンサルタントとして、うまくいくための方略を随所で示してくれるのですが、それらはあくまで仮説として提案されていて、ミナベさん自身もそれが絶対の正解だとは思っていないんです。

ミナベ思ってないんですよ。

安斎....(苦笑) だから、僕ら自身も考えるし、ミナベさんの提案に対して疑問があれば、素直に尋ねることができる。お互いにとってより良い結論を対話的に導き出せる関係性が築けていると感じます。最初の頃だけは、ミミクリのメンバーが組織デザインの専門家であるミナベさんをある種神格化してしまって、ミナベさんの言うことをそのまま受け入れてしまいがちなところがありましたが、ミナベさんのあくまで仮説として提案してくれる姿勢のおかげで、今では僕らも自分自身で考えて試行錯誤することができていると感じていますし、学習の機会を失わずに済んでいると思っています。例えば採用に関しても、ミナベさんの意見と僕らの意見が食い違うこともあって、そういう時はすぐに「一回話そう」となりましたよね。

ミナベありましたね。その時もめっちゃエポケーした...(笑)でもやっぱりその過程が重要で、対話によってできあがった文化が、組織の資産となってくるんですよね。特に採用の話は、最終的にはどんな人と一緒に働きたいかという話になってくるので、その部分に関する思いを言語化して、文化として醸成していく良い機会だと思っています。どのような着地の仕方をするかはひとまず横に置きながら、とにかく仮説を出し合い、コミュニケーションを取り続けることの重要性はお互い理解していたので、とにかくめっちゃ話しましたね。終電がなくなるまで話し続けたこともありました。

そうしたミミクリデザインの文化に寄り添うことは、ミナベさんにとってストレスではなかったのでしょうか?

ミナベストレスは全然なかったです。先ほど安斎さんが僕のスタンスを「学習者」的だと話してくださいましたが、僕の気質として、知らないことを体験するのがめちゃくちゃ好きなんですよ。普段の仕事もその延長線上にあるというか、さまざまな会社にコンサルタントとして入り込んでから、その会社の独特の文化や言語に触れて、体系化して、学習していく過程が楽しいんです。ただ、もちろんお金いただく以上は、価値を出さないといけません。だから、単に入り込むだけでなく、自分が提供できる知見は提供します。そういう意味でミミクリの場合は少し特殊でしたね。僕は組織デザインの専門家だから、先に適した組織の構造をインプットするところから始めることが多いのですが、ミミクリの場合は、コミュニケーションを重視する組織だったこともあって、いきなり構造をがらっと変えると、予期せぬハレーションが起こる危険性がありました。だから、まずは僕もひたすら対話に付き合って、どうすれば円滑にもっとも良い方向に向かえるのか、見極めながら関わっていましたね。

なるほど。安斎さんからはいかがでしょうか。ミナベさんの関わり方について、他に重要だと思う部分はありますか?

安斎そうですね...。ミナベさんが心の底からマネージャーである東南(裕美)和泉(裕之)遠又(圭佑)小田(裕和)のポテンシャルを認めてくれているのは、僕が安心してミナベさんに関わってもらっている大きな理由の一つです。時に心配になることもありますが、ミナベさんが第三者目線で「マネージャーのポテンシャルがすごい!」と太鼓判を押してくれていることで、このマネージャーに任せておけば中・長期的には大丈夫だろうと思えるんです。

ミナベ安斎さんもそうですが、マネージャーの人たちは、僕が示唆を与えたら自分の中でサイクルをグルグル回して、思考をガンガン深めて、すぐに新しいものを返してくれるんですよね。若いが故にインターフェイスが追いついていない部分はあると思いますが、ここまでハイポテンシャルな思考能力を持った人たちが集まっている会社なんて、ほとんどないと思っています。組織的に学習環境を整えることでどこまで伸びていくのか、ワクワクします。

今後が楽しみです。本日はありがとうございました!

ミナベ・安斎ありがとうございました。

  • Writer

    水波洸

  • Photographer

    猫田耳子