どれだけ詳細に計画を立てても、いきなり正解はないので。それでも、ロードマップがあることで立ち戻る北極点ができた

  • 吉田稔

    コンサルタント

  • 矢口泰介

    コンサルタント

  • 横浜国立大学経済学部卒業。総合人材サービス企業で中途採用コンサルティングとキャリアアドバイザー業務に従事。その後地元前橋市で実兄と洋菓子店を創業、接客から経営全般業務に従事。特に地場産業と連携した商品企画、ブランディングに力を入れる。2018年よりDONGURI(現MIMIGURI)に参加し、ブランディング・事業開発を中心にコンサルティング業務に従事。

  • 早稲田大学第二文学部卒業。デジタルエージェンシーで約7年間ディレクターを務めた後、MIMIGURIの前身であるDONGURIにジョイン。マーケティング知見・デザインシンキングを基軸にしながら、デザインリサーチ/サービスデザイン/UXデザイン/ファシリテーションを武器に、事業開発・組織開発・組織変革プロジェクトのリーダーを務める。

時代の潮流の変化に応じ、新たな価値を生み出す意思決定をしなくてはならない。どんな企業でもそうした変革とは無縁ではありません。

しかし、形式だけ事業や組織を変えてもなかなか理解されない、定着しない、という課題が立ちはだかります。既存の人材や資源を最大限、活用し、新たな挑戦に立ち向かう筋道を立てるために、何が必要なのか、その答えは不定形なもので、だからこそ対話が重要となります。

対話を軸に、ゴールに向けて道なき中に道を作る、その一つの例となるのが、株式会社ニューズベース(以下、NEWSBASE)です。展示会やカンファレンス、セミナーなど、各種イベントの支援、プロデュースに取り組んできたNEWSBASEは、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)を主軸に置く株式会社ウィズアスを吸収合併しました。

会社が大きな変革を迎える中で、新たな事業戦略の創出とロゴ開発、そして、5ヵ年の事業ロードマップの作成・浸透までをMIMIGURIは伴走しました。

これまでの知識や、価値観をリセットする、「アンラーン」を起点に、対話を通して、今まさに変革を起こそうとしているNEWSBASEについて、代表取締役社長の亀井義勝さんとマーケティング本部の黒木昭洋さんのお二人と、MIMIGURIの吉田稔と矢口泰介が語ります。

吸収合併に伴い、組織も事業も転換点を迎える中、5ヵ年の事業ロードマップを作ろう、となったのはどのような経緯からでしょうか?

亀井ここ数ヶ月が激動でして。すごく以前のことのように思えるので、詳細な時間軸については正確ではないかもしれませんが、昨年、二社が合併するタイミングで、改めて「結局なんの会社なんだ?」という問いが出てきたんです。そこで、MIMIGURIと一緒に整理をする中で、会社のコアコンピタンスを言語化した「ビジネスプロセスマネジメント」というキーワードが出てきました。「ビジネスプロセスマネジメント」という概念が共有できるようになった段階で、必然的にじゃあそれをコアにどういうふうに事業ロードマップでやっていくのか、を決める流れになったと記憶しています。

黒木私はちょうどこの「どういう事業ロードマップでやっていくんだ」というタイミングでこのプロジェクトに参入しました。「ビジネスプロセスマネジメント」の会社を目指そうという目標が決まって、要素分解する過程で、ボードメンバーが集まって話す、という場を作りました。新たな事業ロードマップを展開する上で、「ビジネスプロセスマネジメント」という概念を全社的に浸透させるため、まずは、ボードメンバー間での目線合わせが必須でした。顔を付き合わせて話す中で、徐々に浸透していったと感じました。
何より、この場自体もすごくよかったですね。もともと、ボードメンバーが一堂に会する場は月に一回程度しかなかったのですが、この要素分解の過程で一緒に話す口実ができ、コミュニケーションのハードルが下がったなと思います。

ロードマップを立てる中で、大変だったことはありますか?

吉田これまでは今あるものから最大限の成果に繋げよう、とフォアキャスト思考で様々な物事を捉えることが多かったと聞いていて、これまでの考え方をアンラーンして、ロードマップから逆算するバックキャスト思考に転換するのにご苦労されていた記憶があります。

亀井5年後にどんな事業や組織になっているのかを見据えて計画を立てる中、バックキャスト思考になかなか慣れず、苦労しました。正直、今でも慣れきっていないなという部分もあります。

黒木私もなかなかバックキャスト思考に苦戦した記憶があります。馴染みのないところからスタートだったので、とにかく大変だった記憶があります。

矢口一度亀井さんと黒木さんとMIMIGURIでロードマップを作ってみて、ボードメンバーの皆さんに共有して、そこでフィードバックをもらったんですよね。

黒木そうですね。その際も、当然ではありますが、各所からいろんな粒感の意見が出てきて。取りまとめるのが大変でしたね。タスクの切り出しや優先順位を考える中で、当初2年かけてやろうと思ったところが5年かかるね、となったり、当初5年かけてやろうと思っていたものが、こうすれば1年でできる、となったり、紆余曲折がありました。

吉田ロードマップを現実的なものにするために、キードライバーを考える必要がありました。そこで、キードライバーがどのようなものになるのか、検討するための材料としてKPIツリーについて、MIMIGURIならこうするのでは、という叩きを作って、一緒にブラッシュアップしましたね。

(ここでNEWSBASE亀井さん、予定があり途中退席)

今回、MIMIGURIが伴走する中で印象に残っている点はありますか?

黒木コンサルを入れてやっていくことに慣れておらず、対話しながら決めていくプロセスにも苦戦することもありました。そんな中でも、様々な手法を提案してくれて、引っ張っていってくれてよかったと思っています。とにかく私たちが慣れない中で、大変だったと思うので、逆にMIMIGURIさんの方が印象に残っていることの方が多いんじゃないでしょうか?(笑)

吉田そんなそんな(笑)。 個人的には、ロードマップを作って、ボードメンバーに伝えて、様々な角度からくる質問に答える、という会があって、そのとき、回答する亀井さんの言葉にナラティブが乗っている、と感じてすごく感動したのを覚えています。

黒木僭越ではありますが、私の目線から見ても、亀井から、ロードマップを見据えてバックキャスト思考に基づいたメッセージを出していただけることが増えているな、と感じています。

慣れない取り組みを進める中、よかったことがあればお聞かせください。

黒木あくまで私の目線で、という回答になりますが、一つ目は、ボードメンバーで共通言語ができたということです。ロードマップを伝えて、実際の戦略やプロジェクトに落とし込む過程で共通言語が浸透していったなともいます。
二つ目は、ロードマップがあることで、これから何をしていくのか、ということの目線が揃ったということです。これまでもヴィジョンはありましたが、ヴィジョンを噛み砕いたことで視点を合わせることができたと思います。
そして、もう一つは経緯の部分でも言ったことと重なるかもしれませんが、ロードマップがあることで、ボードメンバーを中心に様々なレイヤーでコミュニケーションの機会を設けることができるようになったことです。今は、ロードマップの要素である市場開発や事業開発、知識創造、人材育成、組織開発などを切り分けてプロジェクト化し、実現に向けて実行しています。さらに、一年分のロードマップを三ヶ月に分割し、プロジェクトの進行と突き合わせる、ということをしています。具体的には、私がファシリテーションをして、亀井をはじめ、ボードメンバーで進捗を確認する、という会を週次で設けています。さらに、四半期に一度、各プロジェクトごとに進捗状態を共有し、半期に一回は全社で見直す、というサイクルを今まさに作っています。

矢口黒木さんがファシリテーションをする、という週次の会は確かロードマップ策定のときにはじめたものですよね! あれからずっと続いているんですね。いいですね。すごく嬉しいです。

ロードマップを実行するフェーズに入られている中、実際に活用してみてどうですか?

黒木実際にアクションに落とし込むと、綺麗事ばかりじゃなくて。これで進めて大丈夫? という各論になることも多々あります。
ロードマップと言っても一つの仮説であって、必ずしも正解ではありません。実際に動かした結果のわからなさに悩むこともありますし、これからもそうした課題に直面すると思います。ただ出した以上やる、ということで腹を括っています。
どれだけ詳細に計画を立てても、いきなり正解はないので。それでも、ロードマップがあることで立ち戻る北極点ができたな、と感じています。