PLAYFOOL Workshopに埋め込まれた“遊びの可能性“を探究する(WDAインタビュー・Asoboost Lab)

  • 淺田史音

    デザインリサーチャー

  • 東京大学大学院工学系専攻博士課程。兵庫県出身。生産技術研究所と英国Royal College of Artによって2016年12月に共同設立されたRCA-IIS Tokyo Design Labにて、設立当初からプロジェクトに関与。最先端の工学技術へのデザインの関わり方を模索すべく、実践を行いつつ、デザインプロセスを観察、デザインメソッドの開発を目指している。ミミクリデザインでは、PLAYFOOL Workshopのプロジェクトリーダー及びデザインリサーチを担当している。

今回のインタビュー企画では、ミミクリデザインとStudio PLAYFOOLとの共同開発プロジェクトPLAYFOOL Workshop Facilitator Programme"が輩出してきた認定ファシリテーターのうち、関西地方を拠点として特に精力的に活動するユニット・Asoboost Lab(アソブースト・ラボ)*のメンバーである、Sayaさんとのりちゃんのお二人に、PLAYFOOL Workshopを実践し続けることで新たに発見した魅力や、得られた知見について深堀りしていきました(聞き手・淺田史音)。

*Asoboost Lab(アソブースト・ラボ)からご挨拶
2018年に関西でPLAYFOOL Workshop認定ファシリテーターの5人が集まってPLAYFOOL Workshopをもっとたくさんの人に知ってもらうため、グループで活動することにしました。メンバーはニシイ、Saya、のりちゃん、たぬき、かげの5名。ファシリテーターの経験が豊富な人から未経験の人まで、バックグラウンドは全く違います。それを活かして5名がそれぞれの知恵を出し合い活動をしています。遊びの要素には自己肯定感を高めたり、自己決定したり職位とは無関係に対話ができたりと、イノベーションにおいて遊びに大きな可能性を感じています。実験的な意味も込めてLabを最後につけました。今後は”遊び - 意味のイノベーション”にフォーカスしてPLAYFOOL Workshop以外のことも行なっていこうと目論見中。面白い仲間を募集中。みなさん一緒に遊びましょう!
Sayaさん(写真左)とのりちゃん(写真右)

まずは、どういったきっかけからAsoboost Labを結成して、活動を始めたのかといったお話から伺ってもよろしいでしょうか?

Saya私たちがPLAYFOOL Workshopの認定講座を受講したのが2018年7月でしたよね。その認定講座の二日目の夜に、今回受講した認定者とWDA*のメンバーでの飲み会がありました。その時に(WDAメンバーの)中西さんという方がいらっしゃったんです。

*「WORKSHOP DESIGN ACADEMIA(WDA)とは...
ミミクリデザインが提供する、最新のワークショップデザイン論が体系的に学べるファシリテーターのためのオンラインコミュニティ。様々なイベントに加えて、毎週配信される動画コンテンツやメルマガ、また会員専用のオンライングループ内で交流を通じて、ワークショップデザインや周辺領域について学べる環境を日々提供している。現在新規参加者募集中。

Saya中西さんは、自分の会社の中で毎月何かしらワークショップやゲスト講演を企画されている方で、PLAYFOOL Workshopにも強く興味を示してくれました。それで、一度開催してみないかとお声がけいただきました。ちょっと悩んだんですけど、帰り道に「認定講座取ったからには、やらないと意味ないですよね」という話を、(現Asoboost Labの一員である)ニシイさんにしたら、「じゃあ、やります?」と言ってくれて、企画がスタートしました。

のりちゃんその後、その日に一緒に認定講座した人たちに声をかけて、集まった人でAsoboost Labを結成しました。私たちはあまりワークショップ業界に馴染みがあるわけではないので、「こんなにすぐデビューするんだ」と驚きました(笑)

実際に中西さんの会社でやる前に何度か練習会をされていましたよね。

のりちゃんそうですね。翌月の8月と10月に仲間内だけで練習会をして、11月に本番を迎えました。 

Sayaさんはその後ペルーでも実践されてましたよね?

Sayaはい。中西さんの会社で実践したその翌月にはペルーの首都・リマで実施しました。その実践が終わった後も、だいたい二ヶ月に一回くらいの頻度で、PLAYFOOL Workshopを開いていましたね。PLAYFOOL Workshopにはエクササイズが4つありますが、この日はエクサイズ2、この日はエクササイズ3...といったふうに、細かく分けて何度か実践しました。

のりちゃんこう考えると、結構やってますね(笑)

Sayaやってますよ(笑)私はとにかく続けることが大事かなと思っていました。一回ストップしてしまうとどうしても忘れてしまうし、熱が途切れるんじゃないかな、と考えていて。だから、まずは本番の日をできる限り決めてしまっていましたね。

ペルー(リマ)でのPLAYFOOL Workshopの様子

▲ペルー(リマ)でのPLAYFOOL Workshopの様子

PLAYFOOL Workshopをまず体験して見た時に、どんな魅力を感じたか、お話し頂いてもよろしいでしょうか?

SayaPLAYFOOL Workshopを体験したときの感想としては、頭で考えることから解放されて、純粋に楽しめるワークショップだなって思いました。

のりちゃんそうそう。単純に「すごいおもしろい!」って思ったよね。私もサラリーマンだったからわかるんですけど、ビジネス領域では役に立つ物事だけを上手く集めて、役に立たないものは切り捨てられる人が優秀だとされしまうことが多いと思うのですが、PLAYFOOL Workshopの場合は、一見すると無駄に思えていたものが、アイデア発想の過程でふと活かされる時があるんですよね。そんなふうに、これまでの全ての体験や知識の結び付け方を体得していくのがPLAYFOOL Workshopだと思います。
過去のどうしようもないエピソードなんかも、PLAYFOOL Workshopで頭を絞ってアイデアを出そうとして、自分の中の経験が総動員されるうちに、何かと結びついたり、組み上げられたりする。そうするうちに、最後には面白いアイデアに仕上がっていて、「すべての体験には意味がある!」と思って、自己肯定感が高まっていく気がしました(笑)

Saya確かにPLAYFOOL Workshopの、具体的な課題解決の手法ではなく、その前段階の“準備運動”に近いものだという点は重要かもしれませんね。

のりちゃんそうですよね。例えば、卓球という競技を上手くなろうと決めていたら、まずは卓球のスイングを教わろうとしますよね。だけど、PLAYFOOL Workshopの場合は、その前段階である、あらゆる競技にとって必要な準備運動やストレッチの方法にあたるような活動だと思っています。身体がほぐれてないと、スイングもうまくいきません。それと同じで、創造的な活動をする前に必要な身体づくりをやっているような感覚があります。

みなさんはチームとして活動していますが、チームという観点から改めて気づいたことは何かありますか?

Saya先ほども軽く触れましたが、私たち二人はワークショップを開催した経験はあまりなかったんですよね。他方で、(他のメンバーである)ニシイさんやかげさん、たぬきさんはワークショップの実践経験が豊富な方々でした。でも、結果的にそうした経験値の差はむしろあってよかったと思っています。ワークショップの基本的な組み立て方や、運営に必要なこと、反省点については、他の三人がよくわかっていて、私たちは初心者だからこその突拍子もない要素を継ぎ足していくというふうにいつも進めています。そうした協働の仕方ができるのは、ある程度の実験的な試みが許される、PLAYFOOL Workshopだからこそなのかなと思います。PLAYFOOL Workshopって、とりあえず手を動かしてみるだとか、発言してみることを促されるじゃないですか。PLAYFOOL Workshopをきっかけとして集まったからか、チームの風土としても同じ空気が流れていると感じます。PLAYFOOL Workshopの実践って、極端な話、「失敗なんてない」と思っています。失敗か、成功かではなく、やるか、やらないか。だから、しょっちゅう実験として、部分的にエクササイズを改変しています。

自由にプログラムを改変しても良いのもPLAYFOOL Workshopの利点の一つですよね。

のりちゃんそうですね。いろんな実験ができる。もし思うようにいかなかったら、「次回はこんなふうにやってみたらいいかもね」とか言いながら、次に活かします。もちろん、いい加減に、いきあたりばったりに改変してるわけではないのですが、私たちの突拍子もないアイデアに対して、「それはちょっとまずいんじゃない?」という感じにあんまりならないのは、PLAYFOOL Workshopの価値観をみんなが理解しているところが大きいのかな、と思います。

SayaAsoboost Labでは、ミーティングの時に「それ面白い!」というフレーズがよく出てきます。「あ、いいじゃん、それ面白い!やってみよう!」って。面白いかどうかが、とても大切な基準になっているんです。これも、PLAYFOOL Workshopだからこそ、そういう空気ができてると思いますね。例えば、社会的なテーマについて考えたり、なにか解決策を導き出したりするワークショップの場合は、「面白い」だけじゃ済まなくて、どうしても真剣にならざるを得ないと思うんです。

のりちゃんシリアスになりすぎず、実験できたりする余地が大事にされているというのは、やはり大きいと思いますね。手を動かしてやってみないとわからない部分は当然ありますから。そういう意味でやはり失敗はないと思っていて、仮説を立てて、やってみて、どんな結果であれ、何かしら経験は得られているな、という実感はいつもあります。

効果的な仮説を立てるのもなかなか難しいように思えますが、それがうまくいっているのはどうしてなのでしょうか?

Saya認定講座で、PLAYFOOL Workshopの理論的な背景を学ぶ講義の時間がありますよね。認知科学的な理論などの講義で得た知識があったからこそ、毎回仮説を立てられています。その仮説を元に実際にやってみて、「あぁやっぱりそういうことだったんや」と改めて発見するというか。

あとはやはりチームで取り組んでいるのは大事な点だと思います。自分一人だけで理解したつもりになってみても、それが本当に正しい理解なのか、正直確信を持てない部分も当然あります。だからこそ、みんなで話しながら、確かめていくことができるのは大きいと思います。

認定講座では講義とファシリテーション演習やそれに対する講師からのフィードバックなどが行なわれる(写真は東京会場)。

のりちゃんPLAYFOOL Workshopって、ファシリテーターにとっても面白いワークショップだと思っています。なおかつ、ファシリテーションをやった分だけ、その面白みが深まってくる感じがするんですよね。どんな問いを投げたら参加者の「あ、こうしてみようかな」を引き出せるのか、考えるのが楽しい。しかも、投げかける問いによっては、自分が思いつかなかったことが場から出てくるんですよね。参加者だけでアイデアやコメントが連鎖して、勝手に盛り上がっていったりする。だから、茶々を入れるような気持ちで、プログラムを少しだけ改変してみたくなります。なんとなくプログラム全体としてそういう設計になってるような気がします。

Sayaそうですね。私はPLAYFOOL Workshopのある意味での不真面目さや、楽しい雰囲気が好きなので、ワークショップを体験したときは、「あ、いいな!」と思って、講座を受講して、「なるほど!」と思って、仲間と実践し始めたら、「苦しい!」って感じです(笑)だけど、その苦しみが楽しいと思っている部分もあるんですよね。

のりちゃんクリアしたい局面があるからこそ苦しいのかもね。私たちが初めはいち参加者としてPLAYFOOL Workshopに参加した時の楽しさを、自分たちのイベントの参加者たちにも体験してほしいと思っていて、だけど、そう思えば思うほど、ちゃんとしたいという気持ちが強まるから、自然とハードルが上がっているんだと思います。ライブ活動に勤しむアーティストに近い感覚なのかもしれません。最高のステージをしたいと思ったら、楽しいけど苦しいですよね。それと同じなんじゃないかな、と。

Sayaそう思います。少しずつ上手くなる過程が楽しいんです。遊びと同じように、がむしゃらにやっているうちに少しずつ上達していく。そういうものだと思っています。

ありがとうございます。最後に、Asoboost Labの今後の展望について聞かせてください。

のりちゃん最近は、純粋に「遊ぶ」ということを突き詰めたいよね、という話をしています。

SayaPLAYFOOL Workshopを実践していく中で、「遊び」を通してつながったからこそ、利害関係のないフラットなチームづくりができたのではないか、と思ったんですよね。

のりちゃんそれも遊びの一つの効果なんじゃないかなって。誰かが一人だけが面白いとなるような状況では、他の人は面白くないですよね。そうならないように、みんなが面白いようにやっていくためには、すぐに多数決を取るのも乱暴で、ある程度話し合う必要も出てくると思うので。あるいは、例えば泥団子を作るとして、ツルツルにしようと思ったらかなりの研究が必要ですよね。遊んでるときって、追求するじゃないですか。わからないことがわかるようになっていく。そんなふうに、単純に「遊ぶ」ということで、どんな良い効果がもたらされるのか、実験的に探っていきたい。あるいは、子供の頃のような純粋な遊びの感覚を提供できる場を創れたら、それはそれで面白いかなと思います。

今後の活躍をとても楽しみにしています。本日はありがとうございました!

Saya・のりちゃんありがとうございました。

今回のインタビューを通して、「私たちはあまりワークショップ業界に馴染みがあるわけではない」と話すお二人が、PLAYFOOL Workshopを通して楽しく実践を重ねている様子を伺うことができ、とても嬉しい気持ちになりました。また、お話の中で語られるPLAYFOOL Workshopの魅力についても、PLAYFOOL Workshop独自のものも当然ありながらも、質の高いワークショップの多くに共通で見られる要素も含まれていたように感じます。PLAYFOOL Workshopを一つのモデルケースとしながら、ワークショップについて、さらに探究を続けていきたいと強く思いました。

  • Writer

    淺田史音, 水波洸