対話の土壌を、オンラインで育むには――横断型組織をプレイフルにする「遊びのデザイン」の実践知。

  • 熊本ひとみ

    組織コンサルタント

  • 和泉裕之

    ダイアローグデザイナー

  • 中央大学卒業後、レイス株式会社に入社し、スカウト事業の立ち上げからバックオフィス部門マネージャーを務める。その後、Webマーケティングを手掛けるヴァンテージマネジメント株式会社にジョインし、組織風土文化形成を行うチームメイキング部門のマネージャーに。在籍時代、GPTW「働きがいのある会社」4年連続ランクイン。2017年よりデザインコンサルティングファーム・株式会社DONGURIにてクライアント・自社の組織デザインを行う。

  • 静岡県出身。日本赤十字看護大学卒業。在学時から「対話(dialogue)」という、物事への意味付けに着目したコミュニケーション手法に関心を持ち、ワールドカフェやOSTなどの対話の場作りを多数実践。卒業後はフリーランスファシリテーターとして4年間の武者修行を経験した後、株式会社ミミクリデザインの立ち上げに参画。現在は少人数〜数万人規模の組織にて、組織ミッション・ビジョン・行動指針のデザインや浸透(自分ごと化)を対話型ワークショップで支援。また、組織内における対話的風土づくりや内部ファシリテーター育成など、幅広い組織開発/人材育成を担当している。

ミミクリデザイン(以下、ミミクリ)とDONGURIの横断経営が開始してから、まもなく1年が経とうとしています。ミミクリは「創造性の土壌を耕す」、DONGURIは「 PLAYGROUND」というビジョンをそれぞれ掲げ、横断経営が始まる前から、個人の内発的動機から生まれる「遊び」や「創造性」を大事にする文化が共通していました。

2020年3月の横断経営開始と同時に共同オフィスに移転したものの、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、業務や対話はオンラインへと場を移しました。当初は互いに初対面となるメンバーが多く存在していたにも関わらず、現在は共同プロジェクトや新たなコミュニティも自然発生的に誕生し、活気あふれる対話が行われています。

対面の制限がある中で、ミミクリとDONGURI(以下、ミミ&グリ)という、重なり合いながらも異なる文化を有する2つの組織の対話の土壌は、どのように育まれていったのでしょうか。

オンラインでも組織をプレイフルにするコミュニティづくりの秘訣を、ミミ&グリを横断する2人のコミュニティマネージャーに聞いてみました。


組織文化を「輸入・輸出」し合うことで、互いの場が育っていく。

和泉さんはミミクリでBtoB事業のチームマネージャーと、ミミ&グリにおける横断組織のマネージャーの両方を務めていらっしゃいます。改めて現在どのような業務をされているのか教えてください。

和泉僕はミミクリでは「BUTAI」チームのマネージャーをしています。ミミクリではチームのことを「ユニット」と呼ぶのですが、BUTAIはBtoBで、企業の方々に対して組織開発や人材育成系の案件を担当することが多いユニットですね。僕個人の最近の業務としては、リーダーシップの育成のための研修であったり、企業の理念浸透を目指すワークショップのプログラムに関する業務を中心としています。僕自身が実施して運用するのではなく、クライアント社内の皆さんで実施していただくためのマニュアルや運用動画などを作って納品する、という形が増えてきていますね。業務に共通する点としては、僕がもともと「対話が趣味」みたいなところがあるんですよ。ずっと対話のワークショップもしていたので、研修も何かを教えるような形より、「自分たちにとってリーダーシップとは何だろう?」と対話するようなものや、社内に対話の風土を作るにはどうしたらいいのか?という組織開発の取り組みが多いんですね。

株式会社ミミクリデザイン Manager / Dialogue Designer 和泉 裕之

その対話の風土作りは、今まさにミミ&グリの自社内で取り組まれていることでもありますね。

和泉そうですね。自社では、DONGURIの熊本と一緒にミミ&グリ横断組織の社内コミュニティマネージャーを担当しています。ミミクリには立ち上げから参画していたものの、ミミ&グリの横断経営が始まった2020年の3月頃は少しお休みをいただいていまして。2020年6月に復帰してから、少しずつコミュニティマネージャーとして動くようになっていきました。これは経験としてですが、組織に風土を作るのはどうしても時間がかかるんですよ。これまでにも、クライアント企業に向けて単発の研修や数ヶ月に渡るプロジェクトは実施したことがあるものの、その後の対話の場に立ち合い続けているわけではない、というのが本当のところで。対話的な風土を僕自身が本当に耕した経験があるかと言うと、そうは断言できないな、とも思うんですね。そういう意味でも、自社のミミ&グリで創造的な対話の土壌を耕すことは、初めての挑戦でもあるんですよ。

ミミ&グリというコミュニティを、和泉さんと熊本さんでどのように分担してマネジメントされているのかをお聞きしたく思います。横断経営がスタートしてから、コミュニティの場をどのように築かれていったんでしょうか。

熊本ミミ&グリの2社は以前から交流はあったものの、横断経営の開始時は話したことのないメンバーもいるような、お互いに知らないことも多い状況でした。横断経営の開始と同時に1つのオフィスに居を構えたので、本来であればその場で自然にコミュニケーションが発生して、少しずつミミ&グリが接合されていくことも想定していたんです。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大のタイミングが重なってしまったことから、横断経営直後からオンライン中心のリモートワークへの切り替えることになって。対面できない状況の中でもコミュニケーションは密に取れるように、施策を可視化して整理したんです。

株式会社DONGURI 組織コンサルタント 熊本ひとみ

その施策の可視化は、具体的にはどのように行っていったんでしょうか。

熊本初めに事業ドメイン単位やチーム単位、役割の横の接合、目的毎に表を作り、「既に取り組んでいる施策」を埋めていったんですね。その空欄を埋めるように、「新しく取り組む施策」を考えていったんです。例えば、交流の面では「お互いを知るコミュニケーション機会」、情報共有の面では「業務上の情報共有機会」や「組織レイヤーでの情報共有」、長期的な視点で「キャリアや今後を考える目的」、というところですね。加えて「プレイフルにできるレクリエーション」という要素も考えていきました。その中で優先順位をつけて必要性の高い施策から順に取り組んでいって、6月に和泉が復帰したタイミングで取り組みたい施策を共有して、一緒に運営するようになっていくという流れでした。

和泉6月から毎週金曜日の夕方に「コミュニティ会」というミミ&グリのメンバーが自由に参加できる交流の機会を設けているんですが、僕が社内のコミュニティ施策に取り組むようになったのはそのタイミングからでしたね。

熊本あとは、ミミクリの月次会や週次の朝会などもそうですね。

以前のミミクリは、朝会を実施していなかったとお聞きしました。ミミクリでも朝会を始めるようになったのはどのような経緯だったのでしょうか。

和泉ミミ&グリ横断での組織開発に取り組むにあたり、DONGURI側の定例の場にも顔を出すようになっていったんですね。安斎(ミミクリデザイン 代表)と初めてDONGURI側の朝会に出た時に、「これは是非ミミクリでもやろう!」という話になったんです。というのも、当時のミミクリは全員が顔を合わせるのが月次の全体会だけだったんですよ。加えてオンライン中心のワークスタイルになると、全体感が把握しにくい状況になってしまうと考えていたんですね。オフラインであれば半日くらいかけてじっくり対話することも可能ですが、オンラインでは3時間程度が体力的にも限界だったので。情報共有や対話の場を週次の朝会で設ければ、全体会の場をもっと有効活用できるんじゃないかという話になり、DONGURIの朝会を参考にしながら、ミミクリ流に取り入れていきました。

熊本こういう、ミミクリとDONGURIでお互いに「輸入・輸出」しあう関係っていいなと思っていて。DONGURIの朝会も少しやり方を変えたんですよ。以前のDONGURIの朝会は各チームのマネージャーから直近の情報共有をする場だったんですけど、組織開発の観点から私もミミクリの朝会にも参加するようになったら、時間の大半を対話に使っていて。それが衝撃的だったんですよね。「なるほど、対話中心の使い方もあるのか!」って。そこから、DONGURIの朝会でも対話の時間を取り入れたりするようになっていったんです。

組織の対話の場は「学び」だけが目的ではない。

組織の内部にまで入り込みながら、文化やノウハウを互いに「輸入・輸出」しあう関係は、横断経営という形ならではですね。横断経営のタイミングではSlackも早くに統合されていましたが、各チャンネルの統合に向けた設計はどのように行っていかれたのでしょうか。

熊本共同プロジェクトも走り出していたので、情報共有の効率性を高めるためにも、6月の段階でSlackは1つに統合しました。ただ、コロナ禍の影響もありメンバーによってはまだ顔を合わせたことがない人もいる状態だったので、最初から一気に全部統合すると心理的安全性として低いのかな、と思っていて。なので、ミミ&グリを統合したチャンネルも作りつつ、ミミクリとDONGURIそれぞれの全体・雑談チャンネルを残しておいたんです。何かあった時にいつでも戻ってこれる、安心できる「実家」のような場所になればいいなと思って。Slack統合して最初の1〜2ヶ月くらいは、ミミクリとDONGURIのチャンネルにそれぞれ投稿があったんですけど、共同プロジェクトやミミ&グリのメンバーを掛け合わせたシャッフルランチの会を重ねていくことによって、主語が「ミミ&グリ」になってきた感覚があって。そのタイミングで、アナウンスの上で完全な統合を行いました。合わせて、人事に関する内容以外はすべてオープンチャンネルで運用することで、情報の透明性を高くすることも意識していましたね。

いつでも帰れる「実家」となる場と移行期間があることで、主語が無理なく「ミミ&グリ」に移っていったんですね。シャッフルランチの取り組みは、どのようにスタートしていったんでしょうか?

熊本時期としては6月くらいから開始して、完全にオンラインで行っています。初めはマネージャー同士を中心に、徐々にメンバー間でも実施していきました。あらかじめプロフィールシートを用意して、メンバー全員に記入してもらった内容をもとに組み合わせを考えています。

プロフィールシートはいつでも見られるように公開されていて、新しくメンバーがジョインする度に更新がアナウンスされていますね。性格診断など遊び感覚で記入できる項目が多く、見ているのも楽しいなと思います。

和泉あの項目は全部、熊本が考えてるんですよ。実は、ランチの組み合わせ考えるのも結構大変なんですよね(笑)。

熊本苦労してます(笑)。毎回、組み合わせるのに2時間くらいは考えながらやっていますね。

和泉この組み合わせだと、誰が場を回すんだろう? とかね。

熊本そうそう。4人組の構成で考えるんですけど、共通する話題の種がないと難しいだろうと思うので、最初はやっぱり趣味が似ている人と組んでいって。4人中、1人くらいは初対面の輪の中でも臆せず発話できる人を混ぜたり、良い対話の場になるようにバランスを見ながら考えてます。皆からも終わった後にアンケートを記入してもらって、またそれを改善するっていうのをやってたりとかして。「今まで話したことがないけど話してみたい人」を記入してもらって、次に活かしたりもしています。

具体的な改善の要望が来ることもあるんでしょうか?

熊本例えば「食事中だとなかなか集中できない」という声もあって。ティータイムに飲み物片手に話す方が集中できるかも、という意見をもらったりとか。あと、前後に会議の予定が入ってる場合もあるんですよ。場合によって会議が長引いてしまうこともあるので、アポの時間のすぐ後に設定するのではなく、そのバッファが持てるような時間帯設定だと嬉しい、という声もありましたね。

確かに、日々の予定には流動性が伴うからこそ、なかなかシステマチックにはいかないところですね。「この時間帯のカレンダーが空いているからOK」という話ではないですもんね。

熊本なので最近は、そもそも日程調整するときに、ランチだけではなくティータイムの時間帯も候補に入れて、それぞれ前後のアポがない時間帯を選んでもらって調整する、という形で改善しています。

改善のきめ細やかさが、すごい……(笑)。

熊本いやいや(笑)。

和泉しかも熊本がすごいのは、そのPDCAを回すのがめっちゃ早いんですよ。何か1施策打ったら、すぐアンケート取って、改善できる点が上がってきたらすぐ次回で改善するっていう。

朝会や全体会でも、直後にすぐアンケートを取られたり、感想や意見を求めるスレッドを立てられていますよね。次の日には「これをこう改善します」という話が挙がっていたりとか。

熊本振り返りや改善は、ミミ&グリ全体でやっていますね。全体会も終わってからメンバーからの感想をもらって、次週のマネージャー定例でマネージャーの所感とか意見を反映して、次回はこうしよう、とアップデートするようにしています。冒頭でお話しした週次のコミュニティ会も、少しずつ改善を重ねていったんですよ。

和泉運用して1ヶ月くらいのタイミングでアンケートを取って、方向修正を重ねていきましたね。

コミュニティ会は現在、毎週異なるテーマで自由に対話が行われる場所になっていますよね。最初はどんな感じだったんでしょうか。

和泉最初はもう、毎回が全部リフレクション(内省)だったんですよ。「今週、振り返りたい仕事上の出来事は?」というテーマを設定してスプレッドシートを用意して、各々が振り返りたい項目を簡単に書いて、それをもとに3人1組でZoomのブレイクアウトルームを作り対話をする、という時間でした。話し手と聞き手と書き手、というように役割をはっきり決めて、ファシリテーションしなくても回るようなプログラムを作り込んでいたので、リフレクションの機能としては果たせていたんですけど。一時期、参加者がすごく少なくなったんですよね。

熊本最初は10人くらい来てくれたので「皆のサードプレイスが作れたかもね」と喜んでいたら、ある時からパタッと、参加者が激減して。それが2〜3週続いたんですよ。私と和泉は、コミュニティ施策の改善を週次で協議してるんですけど、そこで「これはテコ入れが必要だ」という話になったんですね。

そこから、どのように改善されていったんでしょうか。

熊本そもそもの目的に立ち返りました。「人数を多く集めるのが目的なんだっけ?」とか「何のための施策なんだっけ」みたいなところから話して。無理に人数を増やすことを目的にすると、メンバーが本当に求めている場じゃなくなるかもしれないなと思ったんです。金曜のこの時間であれば、和泉と熊本は必ずここにいて、何か話したいことを話せるっていうちょっとホッとする場みたいな形でまずは定期的に続けてみよう、と。で、来てくれた人には「今週も色々あったけど、いい一週間だったな」って思ってもらえて、週末を気持ちよく過ごして、また来週から楽しく働こう!と思えるような場にしていきたいね、と対話をしたんです。

和泉施策スタート時の目的として、リフレクションの文化をもっと根づかせたいっていう思いは個人的にはあったんですよね。組織学習的な観点から言えば、何か経験をしたとして、それを学びにするには、その間に振り返りが必要になるからです。リフレクション会に参加した人からの評判は良かったんですよ。出来事を言語化して教訓まで落とし込めますし、他の人のリフレクションもスプレッドシートで見れて「学びになった」という意見もあったんです。でも、やっぱりなんて言うんでしょうね。日々の業務の中に「ためになること」「学びになること」って、溢れてるんだと思うんです。ミミ&グリで言うなら、僕らが運営しているCULTIBASE(ミミ&グリが運営するメディア)の記事や動画もあるし、社内でナレッジをシェアする会もあって。多分、求められてる場ってもう少し気軽に楽しく話せる場なのかな、とか。実際に、アンケートを取ってもそういう声があったんですよね。そこから「最近ハマってるもの」「最近観た映画」というような緩めのテーマに調整していきました。

熊本「耳で聞くだけの参加もしたい」という声もあったんですよね。なのでROM参加もOKにして、今は耳だけのROM専で参加してくれてるメンバーとかもいるんです。

和泉あと一番大事なのが、実際に自分が熱量を持って話せる場なのか、ということですね。そういう衝動的な問いが立っていたり発話されていたら、自然と「次も出ようかな」って思うんじゃないかな、と。コミュニティ会が今すごくいい流れになってるなと思うのは、対話の中でメンバーの新たな共通項が見つかって、連鎖的に新たな場が生まれてることなんですよね。「攻殻機動隊を語る会」とか「ペット好きの会」とか「ファッション好きの会」とか。そういうコミュニティの芽みたいなものが出てきた時に、熊本が着実に「これやりましょう!」ってすぐに施策に落としていってくれるので。

熊本そこはやっぱり、熱いうちに取り掛からなきゃ、と(笑)。

確かに、金曜日の夜は新しい交流会のスレッドが立つことが多いような気がします。場を用意するだけではなくて、参加する個人の衝動を大事にされているからこそ、連鎖的に新しい場が生まれていくんですね。

組織をプレイフルにする遊びのデザイン。没入感を生み出すのは“本物らしさ”。

2020年11月からは新しく、熊本さんと和泉さんがパーソナリティを務める「ミミ&グリradio(仮)」も隔週でスタートしました。ミミ&グリメンバーをゲストに迎えてZoomで社内限定配信するという、リッチなコンテンツですよね。ラジオの配信がある日は、Slackもいつも以上に盛り上がっているように思います。

和泉初回から20人くらい参加してくれましたね。良い反応が来ていて、すごく嬉しいなと思います。

企画も本格的ですよね。社内にある噂を当人に確かめる「都市伝説」とか、人生を変えた一曲を聞く「ストライクミュージック」とか、クイズ「私、実は〇〇なんです」とか。

和泉企画のアイディアはほとんど熊本が出してくれたんです。

熊本私、すごくテレビっ子だったんですよ。なので、テレビ番組にあるようなコーナーを草案として出して、そこから本来の目的に沿うように和泉が肉付けしてくれて、現在の形にまとまっていった形ですね。

和泉僕が肉付けしたのは「どうせなら本物らしくする」というところかもしれませんね。例えばBGMで言うと、最初はラジオでよく聞くようなテーマソングだけを流すつもりだったんですが、「都市伝説のコーナーにも何かそれらしい音楽を流そうよ」とか。

熊本都市伝説っぽい音楽、一緒に探しましたよね(笑)。

アンケートフォームで番組へのお便りを募集していたり、投稿者はラジオネームを使えたり(笑)。読まれたら、制作予定の番組オリジナルステッカーがもらえる……というように、本物らしいラジオの仕掛けが施されていますよね。

熊本そう、ステッカーもジングルも作りたいんですよ! あいにく、人手不足で……(笑)。

和泉こうなったら、作れる人を早めにゲストに呼んで、一緒に巻き込んだ方がいいかもしれない(笑)。

新しくジョインするメンバーについても、オンボーディングの施策を練られていますよね。先日行われたオンラインでの歓迎会は、単なる交流の時間ではなく、新メンバーに関するクイズ問題があったりと、当日のプログラムが作り込まれていて驚きました。

熊本歓迎会もオンボーディングプランの一つとして設計しています。以前のように皆で食事しながらワイワイと話をする、ということができなくなってしまったものの、皆で歓迎する雰囲気も出したいですし、早い段階で「仲間の一員になったね」とお互いに認識できるようになりたいなと。なので、日程としてもジョインしてから日を空けずに実施するようにしています。

オンラインになってから、オンボーディングの施策設計にはどのような変化があったのでしょうか。

熊本ミミクリもDONGURIも、もともとオンボーディングのプログラムはあったものの、オンラインになったことで難易度がさらに上がったところはありますね。リモートだと、直接顔を合わせて「ちょっと聞く」「ちょっと話す」がなかなか難しかったりとかするので。ジョインしてから最初の時期は、マネージャーやメンバーとの接点を確保して作るようにしています。オフラインの時よりも詳細に週次で、誰がどういうことをするのか? というレベルまで落とし込んだ設計になっていますね。そうしたオンボーディングプログラムと並行して、歓迎会では新しいメンバーのことを皆が知れる機会になるようにクイズ問題を作ったり、ニックネームを考える企画を設けたり。あとは、歓迎会の後、何かの話題に繋がるきっかけを生むコンテンツにすることを意識して設計していますね。

和泉熊本はそういう遊びのデザインが得意なんですよね。話は少しずれるかもしれないんですけど、例えばワークショップデザインでも、場の目的から逆算してうまく問いを練る人と、ワークに遊びのエッセンスを加えて面白い活動にするのが得意な人とで、結構分かれたりするんですよ。ワークショップの中で「落ち葉を拾う活動をしたら面白いんじゃないか?」というアイデアが出てきたりと、一見すると場の目標達成に繋がるのかわからなくとも、その行為自体に純粋に面白さを見出して楽しんでしまう人もいて。熊本は場の目的を意識しながらも、問いの立て方というよりは遊びのアイデアを考えるスキルが長けているんだろうなと思います。

熊本問いは難しいです。書籍の『問いのデザイン』(安斎による共著)読んで、勉強にも参考にもなりましたけど、自分にはできる気がしないです(笑)。和泉は逆に、最初の問いの立て方とプログラム設計の、両方のバランスが取れているような気がします。普段もそのあたりをすごく和泉がやってくれているので、もしかしたら私たち2人のバランスが取れているのかもしれないなと。

お話を聞いててそう思いました。あと楽しむというところで言うと、朝会や全体会などで場のメンバーに対して「プレイフルに頑張りましょう」と呼びかけていたり、ミミ&グリには「プレイフル」という言葉が根付いているなと感じるんです。DONGURIやミミクリデザインの組織ビジョンにも通ずる大切な言葉だと思うんですけど、お二人にとっての「プレイフル」ってどんな意味なんでしょうか。

熊本この前、CULTIBASEで上田信行先生の「プレイフル」についての解説記事を読んでしまったので、その影響をすごく受けた回答になってしまいますね。「真剣に物事に取り組む」「本気だからこそ楽しい!」って、まさしくだなあと。

和泉あと、プレイフルに関連する大事な要素として「リアリティ」があると思うんですよね。例えば「ミミ&グリradio」も、普通に考えたら本当のラジオじゃないってわかるじゃないですか(笑)。空想のごっこ遊びとわかっていながら、いかに“本物らしさ”を忍ばせるかが、参加者をその世界に没入させる鍵だと思うんですよ。社外のワークショップも、社内のコミュニティ施策も、何かを作る仕事も。なんでもそうだと思うんですけど、本物らしさは細部に宿るので、手を抜いちゃいけないんだろうなと思います。

熊本そうですね。だからこそ「楽しく真剣に向き合って取り組む」「真剣に遊ぶ」というところに行き着くんだろうなと思います。

今回のお話をお聞きして、ミミ&グリのコミュニティにプレイフルな空気が漂う理由がわかったような気がします。まもなく横断経営も2年目に突入していくところですが、最後に今後の展望についてお聞かせください。

熊本この1年は、お互いを知るという土台づくりだったり、チーム単位と事業ドメイン単位の業務上での関わり方を模索しながら立ち上げていく時期だったと思います。お互いを知ることもできましたし、「こういうことに取り組んだら面白そう!」というアイデアも自然発生的に生まれてきていて、第一歩はうまく踏み出せたなと思っています。2年目以降はレイヤーをさらに上げて組織的な目線で、「ミミ&グリという場をどうしていきたいのか?」というビジョンの対話やイシュー解消の取り組みをしていけるようになればいいなと思います。全員の主語が「私」とか「チーム」ではなく「ミミ&グリ」になって、自然発生的に対話が生まれていく場になり、新しい事業やブランドの立ち上げなどもしていけるようになったらいいなと。

和泉横断経営のスタート時に「どんなコラボの仕方があり得るだろう?」「どんなシナジーが生まれるだろう?」と話していたことは、少しずつできている気がするんですよね。一方で、コミュニティの場でたくさんの対話が重ねられていることで、お互いのわかりやすい魅力だけじゃなくて、隠れた魅力とかも見えてきているんです。だから、期待しているコラボレーションには2年目以降もどんどん取り組んでいくと同時に、予想外のコラボレーションも生まれてくるといいなと思っています。

熊本実はこれからの2年目、ミミ&グリにまた新しい変化が起きようとしているんです。これからも皆でプレイフルに面白い場していきながら、ミミ&グリに関わる皆さんの場も、さらに楽しくしていけたらいいなと思いますね。


個々の衝動が発揮され、活気ある対話が次々に生まれるミミ&グリ。<br> 横断型という特殊な組織をプレイフルに育む秘訣は、“真剣に遊ぶ”遊びのデザインにありました。

これから訪れるらしい、ミミ&グリの「新たな変化」。春の足音とともに近づく未来が、今から待ち遠しくてたまりません。

  • Writer

    田口友紀子