ミドルマネジメントを“ONE TEAM”にする経営統合の在り方とは(前編)

Guest :
安斎 勇樹Co-CEO
  • 安斎 勇樹

    Co-CEO

  • 東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。現在は東京大学大学院 情報学環 特任助教を兼任。博士号取得後、株式会社ミミクリデザイン創業。その後、株式会社DONGURIと経営統合し、株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEOに就任。経営と研究を往復しながら、人と組織の創造性を高めるファシリテーションの方法論について探究している。主な著書に『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』、『問いかけの作法:チームの魅力と才能を引き出す技術』、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』、『ワークショップデザイン論』などがある。

  • このポッドキャストでは、株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEOであるミナベトモミをファシリテーターとして、MIMIGURIのメンバーやマネージャーをゲストに迎えて普段の業務やキャリアについてディスカッションしていきます。
  • 第10回のゲストは、MIMIGURI代表取締役Co-CEOである安斎勇樹です。

安斎・ミナベの出会いと、意気投合

  • CULTIBASEや書籍を通してコンテンツ・知識の共有は精力的に行ってきた一方で、事業や組織など内側についてはなかなか伝えられていないMIMIGURI。「結局、どんな事業をやっているのですか?」「経営統合してからどうなったんでしょうか?」と尋ねられることも多い。
  • MIMIGURIの談話室では、安斎とともにMIMIGURIの内側についてお話ししていく。今回は、PMI(Post Merger Integration:企業合併後の統合プロセス)のナレッジとして公開されている事例が少ない、組織文化の構築についての紹介だ。

  • ミナベと安斎の出会いは、約2年半前にさかのぼる。DONGURI(MIMIGURIの前身の会社の1つで、ミナベがCEOを務めていた)のイベントで初めて対面した二人は、ひょんなことから一緒に北海道に行くことになる(詳しくはこちら)。
  • それを機に仲良くなって、2019年9月に「一緒にやりませんか」とミナベが安斎に提案をした。当初はケイパビリティの相性の良さを生かしてコンサルティングパッケージを共同開発するだけの予定だったが、「IDEOの創業者・ケリー兄弟のように、実務経験と研究知見をかけあわせてみませんか」というミナベの提案に、安斎も「面白そうだ」と意気投合。資本業務提携に向かって歩き出すことになる。

ミドルマネジメントを“ONE TEAM”にする

  • 一般的な企業合併では、経営陣が意思決定をしてトップダウンにメンバーに伝える。しかし、DONGURIもMimicry Design(MIMIGURIの前身の会社の1つで、安斎がCEOを務めていた)もマネジメントを重視する組織だったため、安斎・ミナベはまずマネージャーたちに「どう思う?」と意見を聞き、まずは双方のマネージャーが対話できる機会を何度も設けた。
  • 飲み会をしたり、「どうお互いのケイパビリティを生かせるか?」と可能性を探るワークショップをしたりと、経営陣だけではなくミドルマネジメントをONE TEAMにすることにかなりコストをかけた。
  • 結果として、PMIの方向性は「それぞれのメンバーのケイパビリティをどう活かすか」を主な観点として練り上げることになった。この期間の対話は、両社の組織の重心をすり合わせていく過程だった。

感染症拡大と葛藤

  • 渋谷区にいいビルを借り、いよいよ資本業務提携を実践していこうとした矢先、緊急事態宣言が発令された。最初は「3年くらいかけてゆっくりと両社の境界が融けていけばいい」と考えていたミナベ。まだ実感がなくふわふわした状態だったと言うが、感染拡大に伴って、すぐさま経営者として全力でリーダーシップを発揮しなければいけない状況になった。
  • また、DONGURIに比べて歴史が5年浅かったMimicry Designでは、業務インフラが整っていなかったりチームレイヤーの一階層上の広い管掌範囲を担えるマネージャーが育っていなかったりと手をつけるべきことが多かった。未曾有の感染症とPMIという2つの大きな変化にはさまれ、提携直後はミナベにとっても安斎にとっても葛藤の日々だったという。
  • 一方で、この時期にミナベが体系的に構築したマーケティングファネルは安定的なリード獲得につながり、安斎が自身のポジショニングを探りながら得た「組織」や「問い」というキーワードは書籍『問いのデザイン』の出版や組織コンサルの知見につながっている。一番苦しいところをこの時期にやってしまったことが、その後じっくりと組織マネジメントに時間を割くことができる余白を生んだとも言える。