ミドルマネジメントならではの知見や経験が見えなくしていた自分の「鎧」。仲間との対話で見えてきたマネジメント実践への糸口

  • 湯川卓海

    プロジェクトマネージャー

  • 慶應義塾大学理工学部電子工学科卒業。神奈川県出身。大学在学中にミュージカル制作や演劇制作に携わったことをきっかけに、創造性あふれる組織のマネジメント手法に興味をもつ。新卒で面白法人カヤックに入社。クライアントワークのプロジェクトマネジメントを務める。会社内の新人賞を受賞し、2年目以降には事業部内の知見共有会の場づくり、ディレクションを行う。現在は、創造性を維持、向上し続けられるような組織開発や組織デザインを探究している。MIMIGURIではCULTIBASEや組織開発・人材育成プロジェクトのマネジメントを担当している。

“マネジメントの仕組みが整わず、チームの才能を事業価値向上に活かしきれていない”
“理念実現のために「誰が」「何を」やるのか組織内の人員配置や運用の考え方がわからない”
“1on1でメンバーの魅力と才能を引き出せない”

今、組織やチームのマネジメントは、激しく変化する環境に適応するためにパラダイムシフトが求められています。

株式会社MIMIGURI(以下、MIMIGURI)は、かねてより人と組織の創造性を引き出す理論と実践知を学ぶオンラインの学習プラットフォーム「CULTIBASE」を提供してきましたが、2022年12月安斎勇樹が全コースを総合監修するCULTIBASE Schoolを開校しました。CULTIBASE Schoolは、マネジメントの最新理論と実践技術を身に着けたいという志を持った受講生と実績豊富なファシリテーターが集い、対話的な実践ワークとコミュニケーションを通して学びを深めるオンライン対話型学習プログラムです。

今回は、チームの関係性を築き、事業価値を最大化する技術を学ぶ「ファシリテーション型マネジメントコース」第一期の卒業生である大柴知美さん高野広己さんのお二人と、CULTIBASE Schoolを運営するMIMIGURIの湯川卓海にCULTIBASE Schoolでの学びを振り返っていただきました。

<プロフィール(敬称略)>
大柴知美
大学卒業後、コニカ株式会社(現コニカミノルタ株式会社)入社。感光体、トナーの研究開発に長らく従事した後、ボトムアップイノベーション推進、人財開発・組織開発を担当。2023年より化成品事業部化成品事業統括部事業企画部所属。

高野広巳
大学院修士課程修了後、メーカーやコンサルティングファーム、スタートアップ企業など複数社を経験したのちに2021年10月にミロ・ジャパン合同会社の創業メンバーの1人として参画。カスタマーサクセスチームの立ち上げ、顧客の導入・活用の伴走支援に従事。

多様なメンバーとの対話、自らへの問いかけ。とにかく考え、探索し続けた3ヶ月

まずはお二人がお仕事で取り組まれていることについて教えて下さい。

大柴私は現在コニカミノルタ株式会社で事業企画部に所属しています。昨年度までは開発本部で、R&D組織のボトムアップイノベーション推進や人材育成全般を担当していました。

高野私はミロ・ジャパン合同会社という外資系企業の日本法人に所属しています。ミロ・ジャパンはビジュアルコラボレーションプラットフォーム「Miro」を提供している会社で、日本で事業を開始した2021年からカスタマーサクセスマネージャーとしてお客様の導入・活用サポートに携わっています。

お二人がCULTIBASE Schoolに出会ったのはどのようなきっかけだったのですか?

大柴以前からCULTIBASE Labの会員だったこともあり、Labを通してCULTIBASE Schoolを知りました。CULTIBASE Labに興味を持ったのは、安斎さんがよく仰っている「創造的衝動」に関するお話がきっかけです。社内で人材開発に携わっていく中で、様々なことを前に進めるには各々の”やる気”が重要だと感じていたのですが、安斎さんのお話を聞く機会があり強く共感したのと、「創造的衝動を蓋しているものは何か」「どうすればその蓋が外せるのか」についてより深く探求したいと思いました。

特にR&D組織においては、皆さんとても真面目で設定された課題に一生懸命取り組むのですが、自分で「これがやりたい!」と口に出していう機会は少ないんです。業界として新しい発想が求められている状況で、これまでとは異なるアプローチが必要だと感じていました。

高野私はもともとファシリテーションに興味があり、PodcastでCULTIBASE Radioを聞いたり安斎さんの著書『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』を読んだりしていました。「Miro」は他のSaaSプロダクトと比べると使い方の自由度が高く、何でもできる反面、使う人の想像力に委ねられてしまうという難しさがあります。お客様自身に良い使い方を見出してもらうための問いかけや、ファシリテーションをしっかり学びたいと思っていたところ、TwitterでCULTIBASE Schoolを知って応募しました。

ファシリテーションを働きかけたいベクトルが大柴さんは組織のメンバーに、高野さんはお客様に対して向いているのが興味深いですね。ちなみにこれまで社内外で研修や勉強会といった学びの場を経験されたことはありましたか?

高野私はあまり経験がなかったです。大柴さんはどうですか?

大柴社内では、例えばダイバーシティに関する研修やデザイン思考に関する研修、メンバーとの関係性を構築するための取り組みなどを経験してきました。ただなかなか実践に繋がりづらい、という課題感があり……例えばそうした場において理想の動き方やコミュニケーションの取り方を頭で理解できても、実際の現場に戻ると思い通りにはできないといった声をよく聞きました。一方でCULTIBASE Schoolには対話に価値を感じている人が集まっているので、その場でロールプレイング的に実践を行えます。また対話を通して他者への理解をより深めた上で、スキルの向上にアプローチできる点が従来の研修と違うと感じました。

実際にCULTIBASE Schoolを受講してみて、楽しかったことや大変だったことを教えてください。

高野全体を通して、とにかく考える時間が多かったので大変かつ楽しかったです。たとえば対話するためには、自身の思考を改めて省察する必要がありますし、他の方の意見を咀嚼したり、実際の現場への持ち帰り方も考える必要があります。1つの正解があるわけではないので、ひたすら探索している感覚がありました。

大柴そうですね。受講期間中は、授業の日までに動画コンテンツを1時間程度見て、課題について考えてから対話に臨むというサイクルで進むのですが、考えようと思うといくらでも考えられるので時間の捻出が大変ではありました。

あとはCULTIBASE Schoolに集まる人はバックグラウンドはもちろん発想や考え方も多種多様で、会社では出会えないような人との対話は刺激を受けましたし楽しかったです。逆にCULTIBASE Schoolでは共通の思いを持った方も多くいて共感を得られたことが、社内の現場では違う捉えられ方をすることもあるので、その違いも面白いと思いました。

湯川CULTIBASE Schoolを設計している立場の人間としては、いろんな会社の人との対話を通して「そもそも自分はどういうことを考えているんだっけ」という自己認識の解像度が上がっていく機会にしたいと考えていたので嬉しいです。多様な人達が集まる一方で、メンバーを生かしていきたいとかファシリテーションで創造性を高めたいという部分は共通の思いを持っているからこそ、新しい気づきや発見を得てもらいやすいのかもしれません。

知見や経験が見えなくしていた自分の「鎧」。対話を通して気づいた囚われとは?

社外の方も交えた対話を通して思考の深まりや、新たな発見があったとのこと、素晴らしいですね。特に「視点が変化した」「予想外の学びだった」と感じたことがあれば教えて下さい。

大柴DAY2(2回目の授業)で自分以外の誰かの立場になりきって悩みを語るワークがありました。完璧さを求める傾向があり途中段階の考えを共有することが苦手な部下になりきった際、同じチームのメンバーから「その気持ちはよくわかる、自分のアウトプットの粗が気になってしまって前に進めない」という意見をもらい、やっとその同僚の気持ちがわかるようになりました。このワークがきっかけでコミュニケーションの仕方を変えるようになりました

高野やや抽象的ですが「自分はこんな鎧を着ているのではないか」という気づきを得られたのが予想外でした。こうあらねばいけない、という強い固定観念をCULTIBASE Schoolでは「鎧」と呼んでいるのですが、自分にはそんな鎧はない、と考えていたんです。ただグループワークの中で他の方が自分の鎧として語ってくれたことが、自分にも当てはまっていることに気づかされて、客観的に自分を見れたような気がします

グループワークのシートより。「部下の発達」だけでなく「自分自身の発達」にも向き合った

湯川まさに、受講生の皆さんの課題やモチベーションを捉え直したり解像度を上げたりということに時間を割くようにしていました。CULTIBASE Schoolに参加されてる方は、すでに知見も経験もたくさんお持ちな一方で、同じくらいの解像度で語れる場や仲間が見つからず孤独感を抱えている方も多いと思います。対話を通して「自分はこういうこと考えているんだ」と言語化してもらい、更に自分ほど解像度が高くない人たちも巻き込みたいときにはその言葉を武器に向き合っていけるようになると嬉しいです。

大柴そうですね。たとえば私の場合だと、人材開発に関連した施策をやりたいと思っても「そこに時間使うとどんな成果が得られるのか」といった意義を問われ、定量的に示すのが難しく相手に伝えにくいと感じることが多々あります。。ここの言語化をスパッとできるようになって、メンバーをどんどん巻き込んでいけるようになりたいですね。

高野私は昔コンサルティングファームで働いてたこともあり、お客様に対して答えを提示しないといけない、それができないと価値がない、というような囚われを無意識に持っていました。でもMiroのプロダクトとしての特性としても正解を提示するには限界があり、リサーチして材料を揃えて提案をするというよりは、 ワークショップをやって次にどんなことやりましょうか、目指していきましょうか、と一緒に考え伴走するやり方にシフトチェンジしているところです。結局カスタマーサクセスマネジャーの仕事って何なんだろうと考えたとき、ファシリテーションという切り口で捉えられるようになったのも大きな変化だと思います。

6日間だけの学びではない。CULTIBASE Schoolを経て得られた気づきと新たな実践とは

対話で自分を客観的に見つめる機会が生まれ、1人で課題に向き合うだけでは得られない気づきが得られたのですね。受講を経て、何か新しい試みを実践されていたら教えて下さい。

大柴3月の終わりにCULTIBASE Schoolのメンバーで飲み会を行ったのですが、そこで学びを継続したいねという話になりました。様々なアイディアが出たのですが、「ただ継続するのではなく終わりのある継続をしたい。いつの間にかなくなるものではなく今回はこれをやろう、を何回も繰り返したい」と提案してくれた方がいました。これを受けて、今は非同期の輪読をやっていて、次はCULTIBASE SchoolのプログラムをDAY1からやり直そうというアイデアを温めています。プログラムの中で「対話から何かが生まれる瞬間を体験したい」と考えていたのですが、まさに飲みながら対話をしてアイディアが生まれ、実践されてることにちょっと感動しています。

高野具体的な試み、というわけではないのですがシンプルに人の話をより傾聴するようになりましたね。もちろんこれまで聞いていなかったわけではないのですが、対話の氷山モデルの絵が自然と頭に浮かび、聞き流してしまうような発言も深ぼったり、エポケー(すぐに判断しないこと)を意識したりということを心がけるようになりました。

得られた学びが、日々の実践や心がけに活かされているのですね。

大柴そうですね。実を言うと受講するかどうかの迷いがあったのですが、対話を通じて得た学びや仲間は、独りで本を読むだけでは得られないものなので今では6日間のためだけの学び・受講料ではなかったのだと思っています。結果的に2期の「組織デザインコース」の受講も決めましたし、かけた時間やお金を上回るものを得られたと感じています。

湯川CULTIBASE Schoolで、ひいてはMIMIGURIのミッションとして目指している「創造性の土壌を耕す」ということは6日間で終わるわけではなく、むしろ始まりだと考えています。ここで見つけた仲間や言葉、気付きと一緒に組織を耕す人が増えればと思っているので、そのように言ってもらえるのはとても嬉しいです。
高野さんが「話を聞くようになった」と仰ってましたが、話を聞くことも創造性の土壌を耕すのにとても大事です。Schoolを知らない人や組織も、Schoolの卒業生の働きかけで良い方向に変わっていくことを期待しています。

完結した学びではなく、むしろ得られた学びを武器に人とチームの成長を促すような仕組みや場づくりの実践がこれから始まるのですね。最後に、学びの機会を検討している方へメッセージはありますか。

高野私はMiroで日本の伝統的製造業のお客さんも多く担当しているのですが、組織のミドルマネジメント層の方には、上手くいかないと悶々としている方がたくさんいらっしゃいます。例えば、部門をまたぐハードルが高くてコラボレーションができないといったお客様にMiroを使ってもらうことが多いのですが、そうした課題を持った方にはCULTIBASE Schoolのような対話型の学びがぴったりなのではないかと思います

大柴興味を持った人に見てもらうのが一番いいなと思うのですが、高野さんも仰ったように特にミドルマネジメント層の方って悩みが尽きないので、そうした方がCULTIBASE Schoolに参加することで気が楽になる側面もあるのかなと思います。ミドル層って会社としての目標達成に邁進しつつ部下の意思も尊重したい、という状況にあって、様々な場面で板挟みになることが多いと思います。組織の中にいると、どちらを優先すべきか、という思考になりがちですが、AかBかだけではないやり方が様々あることに気づくと楽になるのかなと思います。

  • 取材・文

    久野美菜子