【対談シリーズvol.2】資生堂の社員46000人にビジョンに向けた行動指針を浸透させる -不可能を可能にしたワークショップデザインとは?-
安斎 勇樹
Co-CEO
東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。現在は東京大学大学院 情報学環 特任助教を兼任。博士号取得後、株式会社ミミクリデザイン創業。その後、株式会社DONGURIと経営統合し、株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEOに就任。経営と研究を往復しながら、人と組織の創造性を高めるファシリテーションの方法論について探究している。主な著書に『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』、『問いかけの作法:チームの魅力と才能を引き出す技術』、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』、『ワークショップデザイン論』などがある。
ミミクリデザインは2018年、資生堂の全社員46000人に向けたワークショップを開発しました。グローバル共通の行動指針「TRUST8」を、社員ひとりひとりの”自分ごと”にするワークショップはどのようにして生み出され、運営され、作用したのか。資生堂ジャパン株式会社 人事部 部長 田岡 大介さん、株式会社資生堂 人事部 人材・組織開発室 人材・組織開発グループ グループマネージャー 今泉 千春さん、株式会社ミミクリデザイン代表 安斎 勇樹が振り返りました。笑顔満載の対談をお楽しみください。
ワーキングプリンシプル「TRUST8」
2015年度〜2020年度の中長期戦略「VISION 2020」実現に向け、2018年度にグローバルリーダーシップチームが定めたもの。VISION 2020の後半3か年(2018年〜2020年)での成長加速を目的に、資生堂グループ社員のグローバル共通の行動指針として制定された。
楽しさが記憶に残り、遊びが言葉の力を変える
安斎今回、資生堂全社社員のみなさんが「TRUST8」をひとりひとりの目線で楽しみながら深く理解し、実行できるようになるためのワークショップを開発させていただきました。プロジェクト終了から数ヶ月経ちましたが、狙い通り自分ごと化は伝播していっていますか?
今泉千春さん(以下、今泉)おかげさまで世界の全リージョンで実施できました。EMEA(Europe Middle East Africa)地域本社には特に浸透していて、はやくも自分たちでワークショッププログラムにアレンジを加えて実施されています。ミミクリさんのワークショップに創造性を刺激されたようです。
安斎勇樹(以下、安斎)現在進行形で、世界中のチームが取り組んでいるのですね。
今回のプロジェクト、弊社としては、トップが決めた行動指針の世界浸透という壮大なテーマでのお仕事で腕が鳴りました。
今泉われわれ人事部では、行動指針をもっと行動につなげていくために何ができるのかな、ということを引き続き考えています。上位概念である「ミッション」からおろすワークショップもあるでしょうし、いわゆる人事的なアプローチだと評価制度に使うとか。制度面の硬いやりかたと、柔らかいやり方の両輪で浸透させていく上で、ミミクリさんの遊び心を大切にしたワークショップは柔らかいほうの軸として機能してくれています。
安斎柔らかいほうの軸が必要という認識は、もともとお持ちだったのですか?
田岡 大介さん(以下、田岡) プレイフルラーニングを提唱している上田信行先生のレゴを使ったワークショップに参加したときに、「やっぱり面白いものしか記憶に残らないな」と思っていたのです。そんなときにたまたま、今泉から安斎さんのことを聞いて「おもしろそうじゃん」と。
今泉もとは、私が安斎さんのワークショップデザインの公開講座に参加したのが始まりです。個人的な興味でいろいろなワークショップに参加する中で、ワークショップデザインを研究している安斎さんのお名前を知りました。それで参加したら、おもしろいうえにめちゃくちゃ構造化されていて美しかった。はじめは仕事とは切り離していたのですが、仕事においてもどこかで何かに使えるのではないかと思い始めて。田岡に話をしたところ、「どういうことができそうか、ざっくばらんに教えてもらいに行こう」ということになりました。
田岡何を相談しようか、あれもあるね、これもあるねと、いろいろ思い浮かべていました。そうしたら、アポイントの当日にちょうど「TRUST8の浸透策を人事部で考えて欲しい」という指示がきまして。安斎先生にお会いして、いろいろ話しているなかで突然「実は今日こういう話があります」と切り出すことになりました。
今泉はい、予告もなく、そのときに初めて聞きました(笑)。
田岡いざ切り出してみると、その場で「ワークショップというテクノロジーを使ってこんなことができる」というエッセンスをうかがうことができて。じゃあその線でご提案いただきたいと、初めての出会いでありいきなりのスタートとなったんですよね。
安斎そうでしたね。はじめは人材育成の文脈でワークショップで何ができるか、ワークショップ形式の研修もできるし、研修講師の方にワークショップのやりかたを教えることもできるし、といったアイデアを考えていたのですが、突如として巨大な「TRUST8の世界浸透」というテーマをいただいたんです。
田岡46000人いるんですけどって(笑)。
今泉対象があまりに巨大で、まず全員で対話は不可能ですよね、というところから始まりましたね(笑)。
安斎ワークショップって多くても数十人でやるので、46000人が同じワークショップをするってものすごくチャレンジング。でも、すごく楽しそうだなと思いました。チャレンジングではあるのですが、ワークショップと「理念を広げていく」みたいな組織内コミュニケーションは相性がいいので。研修を1回やるとかよりも、僕らとしても挑戦のしがいがあることができそうだなと。
今泉事実、「その発想はなかった!」というプログラムができました。
安斎紆余曲折を経て、設備やツール、時間的な制約も考慮した、どんな国のどんな状況でも安定的に回せる2時間ぐらいのワークショップが完成しましたね。冒頭で「TRUST8」の動画を見てまずは頭で理解した上で、楽しみながら体に染み込ませることができるプログラムを設計しました。
前半に、自分と「TRUST8」の関係性を理解することを目的とする2つのワークを置きました。ひとつめが「8つの中で自分にとって大事な3つを選ぶ」。ふたつめが「8つのうち1つを削除して、新たな1つを追加して、自分のチームによりフィットする新しいTRUST8’(ダッシュ)をつくるとしたら?」という問いで、ディスカッションを交えました。後半は、「自分たちのチームが職場で『TRUST8’』を実現した様子をからだで表現してポスター撮影をする」というワークです。
今泉8つのうちの1つを削除するっていう部分、すごく好きでした。
最初にご提案いただいたときは、個人的には面白いなと思ったのですが、年齢も社歴もバラバラの46000人にどう受け止められるんだろう?という不安もありました。
田岡僕も率直に面白いと思いました。冷めた見方をする部門とかもあるかなとは思ったんですけど、「体を動かしてやってみましょう」といってやり始めると、子供の遊びじゃないけど、絶対に楽しくなってくるという確信があった。この楽しさって伝わるんじゃないかな、と。実際、最後に撮影したポスターを報告してくださいと依頼したらけっこう面白いのが送られてきます。社内でも「こないだワークショップやりましたよ」って声をかけてくれる。「どうでした?」って聞くと、やっぱり最初に「楽しかった」が出てくる。
これってけっこう重要で、「ためになった」という前に、「楽しかった」記憶として残るというのは、僕らがすごくやりたかったこと。そういうふうに感じています。
安斎楽しさはミミクリデザインとしてこだわりを持っているところなので、うれしいです。
今泉社内で「TRUST8」がポジティブに受け止められていて、まだまだ完璧じゃないですけど、「自分たちのTRUST8」っていう感覚が高まっていることを感じます。ワークショップという入り口があったからこそ、楽しい記憶とひもづいた親しみが醸成されたのだろうと思います。
安斎当初心配だったのは、経営層が決めた8つの行動指針のひとつを消して書き換えてしまうというワークが、果たして受け入れていただけるのか。そわそわしていました。浸透させていくのが目的なのに、壊してどうするんだ?と思われないかな、と。ところが最初に役員チームでトライアルをしたときに、取締役常務の青木淳さんが、「自分たちのチームは、この行動指針はもう実践できているから消して、代わりに”Smile”を入れようか」と率先して取り組んでおられたので、安心しました。
田岡確かに、現場で展開してもらうための説明会とかで「なんで削るんですか?」っていう質問が出て、マニュアルのFAQにも入れたりもしました。でも、実際にやってみると、一つ削って新しい言葉を考えるところが最高に面白いんですよ。だからあそこが一番印象に残ります。ポスター撮影では、現行のTRUST8と自分たちで考えたTRUST8’。どちらを撮ってもいいのですが、8、9割は自分たちでつくったほうを撮っていました。
それぐらい、自分ごと化する上で有効だったと思う。そして、ワークが終わった後に翻ってTRUST8を眺めると、一個一個の言葉が持つ意味が変容している。「これはこういうことだったのかな。8つの中のこの部分に、実は自分が今日考えた言葉を込められる」というふうに。「与えられたことを正しく理解する」というよりも、「自分たちもつくることに関与した」という感覚を得てもらえたのではないかと思います。すごくよかった。
安斎ひとつ削ってひとつ足すというやり方は、ミミクリとしてもこだわりをもったしかけでした。シンプルだけど、遊びがあって、考えさせられる。今回のワークショップの肝ですね。
田岡自分にとって特に大事な3つを選んでみようっていうのは、もしかしたら僕らでも発想できたかもしれない。でも、「1つ削ろう」は、僕らだけで考えたら絶対に出てこなかったと思います。これってミミクリさんの中ではなんで生まれたんですか?
安斎今回のプロジェクトは、全社的な理念をトップダウン型で浸透させていくプロジェクトでした。けれども人間は上から「これをやろうね」とか「これが大事だよ」と言われても、心の底から「わかりました」と納得するのは難しくて。組織として大切にしたい理念やビジョンを、自分の目線から能動的に「編集し直す」ような経験がないと、絶対に自分ごとにはなりません。それに、そもそもトップの方々も、上から押さえつけるのではなく、社員が主体的・能動的に働けるための指針としてTRUST8をつくっておられると思うんです。であるならば、浸透の方法も100%上から落としていくのではなく、どこかボトムアップ的な要素を入れる必要があると思ったんですね。
しかも、そのプロセスを楽しみながら推し進められる方法を考えたときに、「ひとつ消すとしたら」というアイデアが生まれました。日常のモードから離れて「TRUST8」を自分ごとで考えられて、なおかつ遊び心を持って取り組める仕掛けになるんじゃないかなと思ってご提案させていただきました。
重要なのは学びや変化と相似形の遊びを埋め込むこと
今泉わたしは実は後半のポスターのセッションにも不安があったんですが、実際にトライアルで展開していく中で印象がガラっと変わりました。変わったタイミングは2回あって、1回目は人事部の中で試したとき。部屋を出て、ポスターを撮りに行ったときに、猛烈にワクワクしてきて、なにこれ楽しい!って体感し、これはいけるな、と。田岡さんも、相当スパークしてましたよね。スパークしているポスターがマニュアルに載って世界中に配られています。
今泉2回目は、汐留本社で部門長向けに実施したとき。わたしは出られなかったんですが、楽しそうにしておられたっていう話をきいて、これはもう大丈夫だなと思いました。
田岡それから、トライアルの段階で、日本語を話さない人たちだけのチームで実施をしたら、ものすごく工夫してポスター撮影をしていて、盛り上がっていた。それを見て、これは海外でも大丈夫そうだなと思いました。
実は、僕が忘れられないのが実施に至らなかったワークショップ案のボツネタだったりします。時間や準備物の制約の中でもれてしまったのですが、他にも面白くてやりたかったアイデアがありました。
安斎ボツネタはいろいろありましたね。TRUST8を象徴としたキャラクターをレゴブロックでつくるアイデアや、逆にTRUST8の実現を阻むモンスターを職場から見つけ出して目玉を貼るワークとか。手を動かしたり体を動かしたりしながら、自分にとってのTRUST8を編集するためのワークアイデアがいろいろある中で、世界中に広げていくときに一番やりやすい方法を選んだということですね。ポスターはカメラさえあれば撮れるので。
田岡制約がある中で、本当にマニュアルひとつで世界で展開されていくものになっていったっていう部分、我々としてはとても感謝しています。さまざまなアイデアに共通するのは、遊び心や楽しさでしたね。
安斎はい。遊び心はミミクリデザインが重視している点です。遊びには、非日常的な活動の没入しているうちに、日常のものの見方を揺さぶり、普段は気づかなかったことに気がつける効果があります。むやみやたらに、ただ楽しく遊ぶことに意味があるとは思っていないのですが、学ぶ上で「必然性のある遊び」が必ずプログラムに入るようにこだわっています。
今泉それ、すごくわかります。安斎さんおっしゃったように、むやみやたらに遊ぶのではない、というのが、初めて講座に参加したときからずっと魅力なんです。楽しいだけのワークショップの経験もあるんですが、なにかが違う。
安斎たしかに、よく誤解されるのですが、そもそもつまらない研修を表層的に遊びでごまかすのとは違うんです。起こそうとしている学びや変化の本質的な構造を読み解いて、同じ構造を持った遊びを活動に組み込む。そのプロセスは、本質的に楽しい営みになるはずなのです。
今回の「TRUST8をひとつ消していいよ」というワークも、一見すると遊びっぽくはないんだけど、実はすごく遊び心のある時間で。「えー、どれを壊そうかなー」「このTRUSTは自分的には譲れない!」、という試行錯誤的なやりとりは、本質的に楽しく、かつ意味があったと思います。
田岡まさしくその通りですね。僕らも楽しかった。楽しくワークショップをして、終わってから「で、なんだったっけ?」となりたいわけではない。楽しさがあるからこそ学びが深まるという設計にこだわっていただけたことが、こういう結果に繋がったのかなと思います。
安斎資生堂さんでは他にもいろいろな研修をされていると思うのですが、他の研修とわれわれのワークショップとの違いは、やはりこういった部分でしょうか?
田岡すごく濃く、人間の心の動き方を捕らえられているところが稀有だなと思います。打ち合わせの中で「前半は後半の足場がけ」っていう表現をされていたことが印象に残っています。「足場がけ」という聞きなれない言葉に表出していた考え方の構造性に感銘を受けました。設計に納得感があるし、方法論に落とし込まれているところがすごくおもしろい。
だから、プロジェクトが終わった今でも、何かやるときに「ミミクリさんだったらどう考えるのかな」っていうのを聞いてみたくなります。
安斎ぜひいつでも聞いてください!
今泉途中の打ち合わせで上司も入って意見交換させていただいたと思うんですけれども。骨太に構造化されているので、上司から鋭い質問が入っても、表層の方法論で右往左往することなく常に「それはこの部分のお話ですね」と論点のありかを示して、有効な対話に導いてくださる。安心しておまかせできました。
田岡あ、それわかります。われわれの上司筋の人たちのミミクリさんに対する信頼が、最初の段階で形成できたのでやりやすかった。それがないと、けっこう「あれはどうなの」「これはどうなの」と社内で横槍が入って前に進まないみたいなことあるんです。だけど、ミミクリさんの場合は「この人たちはわれわれの狙いをきちんと理解して設計するノウハウを持っている」という信頼を最初のトライアルで感じてもらえたので、やりやすかったですね。
安斎常務取締役の青木淳さんがプログラムの初期提案の打ち合わせに出ていらしたときは、緊張しました(笑)。「ワークショップ?なにそれ?意味あるの?」みたいな反応だったらどうしよう、と。
田岡緊張してたんですか?そうは見えませんでした(笑)。
安斎けれども結果として、トップの青木さんが誰よりもワークショップマインドをお持ちで、僕らの提案を面白がってくれて、感銘を受けました。企業によっては、組織変革のプロセスに遊び心を導入するなんて、絶対に稟議を通らない、なんてことも耳にします。田岡さん今泉さんら人事部の皆さんからも、仕事を真剣に遊ぶような、「面白そうだからやってみよう!」という風土を感じます。そういう創造的な土壌があったからこそ、楽しい遊びの先に、組織を変化させるエネルギーがあることを共感いただけたのかな、と思います。いっぽうで、各部門のみなさんのワークショップマインドはどうですか?
今泉実はなかなか進まない地域もあって、その地域の人事担当と話をしていると、「もっとプロセスに関わって楽しくて意味があることを理解してから進めたかったんだな」と感じます。TRUST8の浸透を大事に思っているからこそ。本社から地域に広げる過程で、楽しさの温度が伝わる範囲を超えちゃうんですよね。
田岡一方で、「騙されたと思ってやったら楽しかったです」みたいな反応もたくさんありました。進まないリージョンの中の一つの国から「やりました」って連絡があって、めっちゃ楽しそうな写真が送られてきた。これってワークショップの設計の力だと思うんですよね。
きちんとした背景情報があって、納得してからやります、というのじゃない。多少乱暴な「やればわかるから」という渡し方でも、結果やってみたら面白い。これは本当にワークショプの設計やマテリアルの力だと思う。僕らもすごいな、と感心してます。そもそも、そういうのをやりたいっていう無茶なオーダーをしているんですけど(笑)。
安斎そう言っていただけるとうれしいです。それが遊びの力だと思うので。遊びって、「遊ぼうよ」って言う時に、なぜそれが面白いのかプレゼンして伝えるよりは、「いいから一回やってみようか」ってやってくうちに楽しくなって「ああ、そういうことね」って理解できるものだと思う。誰かが「この指とまれ」って言って、なんとなく止まっただけだけど結果こんなに時間が経ってたー!みたいなことが起こせるといいなと思って遊びの力を使っているので、そういうご報告があったというのは狙いが当たったという意味でも嬉しいです。
安斎今後もし、ミミクリと何かするとしたらどんなことが考えられますか?
今泉今回、顔の見えないところまで含んだ46000人への浸透でご一緒させていただいたので、今度は逆に、小グループで関係を密に築いて関係の質を上げていくときに何が起きるか、という実験をご一緒してみたいです。
田岡僕は、よりヒューマンな感じのテーマ。例えば上司が部下を思う気持ちとか、信じて頑張らせる気持ちとか。そういうことが現場のマネジメントで課題になっているんです。これだけ人数の多い会社で、大勢を見ているマネジャーもいるなかで、「ちゃんと思いやられている」とか「自分のことを信じてチャレンジを後押ししてくれる」とか、「将来のことを一緒に考えて今を一緒に頑張ってくれている」と、部下サイドからも感じてもらいたいと考えています。
でも、日常の行動をつぶさに見ていくと、「きちんと伝わるように話せていなかった」ということに気付けたりとか、気持ちの部分でも「今おれ、こいつのことを考えてやりたいって心の底から思ってる」みたいな変容が起きるようなことが、なにかできないかな。
部下を大事にすることの必要性って頭では理解できるじゃないですか。頭で理解できたことを、気持ちでも体感して、いざ向き合うときに「あのときの気持ちになろう」って切り替えられるような、身体知ができたらすごいおもしろいだろうなと。ものすごく売れると思いますよ。
今泉気持ちが変わったら、行動も変わりますよね。それはほしい。
田岡夢のような希望を言いましたけど。
安斎今回のプロジェクトは、ワークショップの1回のインパクトや、遊びを上手く使ってデザインすればいろいろな人がファシリテーションして広げていけるというワークショップの魅力を使うことができました。いっぽうで、今おっしゃっていただいたような課題に対して、1回で終わりじゃなくて、同じ人たちで何回も繰り返しながら長期的な変化や深い関係性をつくっていくということも得意なのがワークショップです。そういう、手の届く、目の見える、手触りのあるプロジェクトには是非トライしたいですね。
田岡あともうひとつは、遊び心あるプログラムを設計できたり、問いを立てるセンスが磨けたりするような、僕ら人材育成担当者に対するトレーニングがあったらいいなと思います。
僕らからすると、「なんでこんな風に考えられるんだろう」って思うわけですよ。
社内の課題に立ち向かった時に、ミミクリさんがもっているようなものの切り取り方とかアプローチのしかたを僕らが持つことができれば。現場で打てる手も広がるかもしれない。
安斎問いを立てる力と、遊び心を使う力は、実は根本的にはすごく似ています。目の前の問題にストレートに立ち向かうのではなく、違う角度から問い直してみる発想は、見立てる遊びそのものなので。そういう力を育むための組織内ファシリテーターの育成プログラムは、今後も問いと遊びの研究を進めながらブラッシュアップしていき、近い将来に皆さんにもお届けできればと思います。
遊びを取り入れたワークショップの非日常性と身体性が、新しいものの見方や身体化された学びを生みだす。そのワークショップを、行動規範の浸透という課題に対して作用させると何が起きるのかを、その場にいなかった皆様にも感じ取っていただける対談になりました。ワークショップもさることながら、この鼎談も共創してくださった資生堂の田岡様、今泉様、ありがとうございました。
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