未来の事業を支える組織基盤を作るべく、リーダーが成長していく軌道を「線」で考える。70年続く老舗建設会社が対話で踏み出した新たな一歩

滋賀・福井・京都を中心に、住宅やオフィス、工場などの設計から施工までを一気通貫に行ってきた、株式会社澤村(以下、SAWAMURA)。同社は、三代目社長である澤村 幸一郎さんを筆頭に、組織の再構築やリブランディングに力を注いでいます。今回MIMIGURIは、変革期にあるSAWAMURAとともに、これからの組織開発の方向性について、答えのない問いを一緒に探ってきました。

VISION(社員総会)設計の前段階として行われた、ワークショップづくりのワークショップ

SAWAMURAがMIMIGURIと協業するきっかけは、SAWAMURAのビジョン「滋賀を代表するブランド企業になる」について考える社員総会の企画でした。これまでメンバー個人が自分の仕事とビジョンを結びつけて考える場がなく、ビジョンに掲げられている“ブランド企業”とは何か、メンバーと分かち合うことができていなかったことに課題認識を持たれていました。そこで、社員総会を双方向のコミュニケーションを生み出すワークショップ形式に再設計しました。

その後、MIMIGURIとSAWAMURAは、社員総会という点”の組織開発だけではなく、組織と事業を横断した線”でのアプローチで組織開発に取り組むことになりました。全社総会やその他研修にはしっかりと力を入れてきたものの、現状の施策で十分なのか、経営方針・事業戦略と紐づいた施策になっているのか、という点が明確ではありませんでした。そこで、特定の組織開発の施策を検討する前に、まず、今後の事業戦略の解像度を高めつつ、その事業戦略を実現する人材戦略を再設計し、今必要な組織開発施策が何か、について考えを整理していくことにしました。

まず着手したのは、全社戦略、並びに各事業部の戦略・今後の未来予想図について解像度を高めることです。具体的には、事業責任者たちにSAWAMURAのこれからについて、事業と組織という2つの軸から考え言語化していく、というプロセスを踏みました。ただし、部門長ごとに意識が向くポイントは異なります。事業軸が考えやすい方、組織軸が考えやすい方とそれぞれの部門長の特性があります。その特性を踏まえ、各部門長が考えやすい軌道で考えてもらうことを意識しました。また、言語化された戦略について、部門長同士がしっかりと対話していくプロセスを重視しました。聞く・話すを反転させながら対話する「リフレクティングワーク」によって、これまで何気なく使っていた言葉も話し手によって意図が異なることを知り、本質的な意味や目的に気づいていったと部門長からは声が上がりました。そこで浮かび上がってきた事業戦略を踏まえて、人材戦略の再設計につなげ、人材評価における等級要件の見直し、並びに重点人材範囲の特定を行いました。これらにより、グレードごとに期待したいことを明確にしつつ、今後の事業戦略において特にどのグレードの人材が鍵となるのか、明確にしていきました。

事業戦略、人材戦略の見立てが揃う中、MIMIGURIは、研修などのピンポイントのアプローチだけでなく、会議体なども含めた「組織ルーティン」の再設計による人材育成支援を提案。現状行っている公式/非公式の組織施策を洗い出し、組織ルーティンを整理しつつ、今後の理想的なルーティンをともに考察しました。さらに考察によって生まれた仮説に従い、現状の組織開発施策を見直し、新規施策を検討しました。

社長と事業責任者がじっくり話し合うことで、微妙な認識の違いが浮かびあがり、今後の事業や組織戦略の見立てが揃う中で生まれた新たなルーティン。こうした日々の仕事を通じて、歴史のある事業と組織を、新たな歴史へと繋げていく。変化の渦中にあるSAWAMURAのこれからのアウトプットが楽しみでなりません。

(文:大藤ヨシヲ)

  • Project Owner & Project Manager

    田中 風花

  • Project Owner & Consultant

    塙 達晴

  • Workshop Planner

    猫田 耳子

  • Videographer

    栗林 拓海