パーパスの解釈を多様なまま受容する。TBSグロウディアが目指す、人々の「免疫力」が向上する未来とは。
Point
- パーパスの解釈を多様なまま受容するプロセスを設計。
- 部署を横断する全社ファシリテーションをエバンジェリストに委ねることで、理念浸透と組織開発を兼ねるプロジェクトに。
- パーパスを言語と非言語で“遊び”ながら解釈する、組織カルチャーと親和性の高いアプローチ。
人間にとっての「免疫力」とは何なのでしょうか。
一般的には、「人体の防衛機構」という生物学上の定義で認識されることの多い言葉です。しかし、この「免疫力」を社会活動との関係の中でも解釈しうるものとして捉える企業があります。それが、株式会社TBSグロウディアです。
同社が掲げるパーパスは「楽しさや感動、わくわく感を届け、人々の免疫力をあげる」こと。国内外にエンタテインメントを提供する総合メディアグループ組織として、多彩な事業を行なっています。
2019年4月にTBSグループ7社が合併し設立された、約550名の組織。合併後、オフィス拠点を統合して間もない状態でコロナ禍に突入しました。対面機会に制限がある中で、組織の求心力をいかに高められるのか。TBSグロウディアとMIMIGURIによるパーパスの全社浸透プロジェクトは、2社の大きな共通点を見出したことから始まりました。
パーパスの解釈を多様なまま受容するプロセスとは。
コンテンツ事業、ショッピング事業、イベントラジオ事業、デジタル技術事業と、事業内容も文化も異なる、元はバラバラの組織に在籍していた約550名の社員。その全員に対して、パーパス・ビジョン・バリューを浸透させること。コロナ禍においては、そのプロセスがオンラインであることも必須要件でした。
MIMIGURIが驚き共感したのは、プロセスの設計にあたってのインタビューで代表取締役社長の園田憲さんが語った「多様性を尊重したい」という思いでした。「パーパスは全員が同じ解釈をする必要はない」「4つのバリューに、全員がすべて当てはまらなくてよい」──社員を画一化しないこの思想は、事業が多様であることだけが理由ではありません。同社が「GLOWDISM」と呼ぶ行動規範で「異論をひきだそう」と掲げられているように、TBSグロウディアの人材開発において常に大切にされているものだったのです。これは、組織ファシリテーションにおいてMIMIGURIも大切にしている思想でした。
そこでMIMIGURIは、パーパスの解釈を多様なままに受容しながらも、理解を深めるプロセスをプランニング。核にある「免疫力」という有機的なキーワードを、その抽象性を失わずに、かつさらに高い解像度で咀嚼できるよう、フレーズごとに分解して解釈するワークを設計しました。
そのプロセスでは、「免疫力をあげる」や「楽しさや感動」を個人の体験を起点に言い換えることに始まり、グループの対話により互いの解釈を分かち合います。キーワードのうち「人々」については、パーパスを実現した先にある「人々の状態」をアイコンや図形を用いて、コラージュするワークを導入。このエンタテインメイント企業らしい遊び心のあるワークは経営層からも歓迎され、展開した社員からも好評を博しました。
対話の担い手を全社に。実践の助走に寄り添いガイドする。
今回の理念浸透のプロセスが組織開発をも兼ねるよう、本プロジェクトは各部署で任命された代表メンバーがファシリテーターを担うエバンジェリスト制を取り入れ、ワークグループは部署を横断する構成となるよう企画しました。オンラインでのワークショップは全社的にほぼ未経験のため、MIMIGURIはファシリテーションの基礎スキルとともに、オンライン対話ツールのノウハウも含めて学べるワークを設計。実践の走り出しがスムーズになるよう、研修とロールプレイによるシミュレーションの両方を行いガイドしました。
研修用に制作した、ワークショップにおける“台本”を兼ねるガイドブックには、ツールの基本的な操作方法のみならず、オンライン特有の場づくりのノウハウを収録。運営時の体制の構築方法や心理的安全性を高める場の築き方に加え、あらゆるシチュエーションに対応するQ&Aも含めました。
エバンジェリストに向けた研修においては、「提供側」と「受講側」で分断を生まないよう、不明点のみならず不安や懸念を共に分かち合う場づくりを実施。その振る舞いを真似ることで、心理的安全性の高い場を構築できるようシミュレーションも行いました。その後、エバンジェリストが実施した全社のワークショップは計30回。参加率は9割にも上ったと言います。
パーパスを実現した先にある未来を、非言語で“遊び”ながら語り合う。
パーパスを実現した先にある未来を、TBSグロウディアの多様な業種・職種の一人ひとりがどのように描いているのか。エバンジェリストたちが担い手となりファシリテーションした場では、個性豊かな情景が色とりどりに語られていたようです。実施後のアンケートでは「パーパスの解釈に変化があった」「他部署との交流を深めるきっかけになった」「視覚的な表現も交えることで理解が深まった」という声が多く集まりました。
今後は、同社の4つのバリューを総称する「グロウディズム」を軸に、組織に好循環を生む新たな施策を展開予定。それらを視覚で象徴するZoom背景も開発し、今後その活用の機会もさらに増えていく見込みです。
組織と個人の関係性への思いを同じくする2社が、組織をファシリテーションする共同体となった本プロジェクト。TBSグロウディアに集う、多様な個の創造力から生まれる「人々の免疫力があがった」未来とは、はたしてどんな景色なのでしょうか。その情景を一人ひとりが問う度に、そして解釈に“異論”が生まれる度に、その輝きは増していくに違いありません。
(取材・文:田口友紀子)
Project Owner
小田裕和
Project Manager
佐藤比呂
Planner & Facilitator
渡邉貴大
Art Director
五味利浩
Designer & Illustrator
中園英樹
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