実現したい未来を描き、いまを逆算する。 トリコの「ブランド開発」と「評価制度開発」

多くの人にとって最適な選択肢であっても、それが自分に適しているとは限りません。しかし、人とは違う、自分にとってベストな選択をするためには、自分らしさを見つけ出せる環境と、自ら選ぶという意思が必要です。

美容という領域において、人々が選びたいものを選びとるために、背中を押すのがトリコ株式会社(以下、トリコ)です。トリコはこれまで、サプリメントの「FUJIMI」をはじめ、一人ひとりに美容分析を行うパーソナライズビューティブランドでユーザの信頼と共感を獲得してきました。

組織は、事業とともに拡大し、変容するもの。ブランドイメージを維持しながら既存の事業を展開し、さらに新たな事業に取り組み続けるためには、実現したい社会の解像度を上げ、到達するために必要なブランドとそれを下支えする組織を整理する必要があります。そこで、トリコとMIMIGURIは実現したい未来を描く対話を行い、現状を今一度整理した上で、今後の成長を見据えた「ブランド開発」と「能力定義」をしました。

「2030年、どういう姿でありたいか?」未来から今を逆算する。

「パーソナライズビューティブランド」を掲げ、事業をスケールしてきたトリコ。その世界観は確立されていたものの、組織の成長が加速し、組織図が大きく変わる中で、人事制度の改革と、その核となるブランドのあるべき姿の言語化を必要としていました。

トリコとMIMIGURIの取り組みでは、その対話の起点として、「人事制度」や「ブランド」に直接アプローチするのではなく、あえて「2030年、どういう姿でありたいか?」という問いから考えることに。市場での立ち位置を再考し、「どういうブランドでありたいか?」をあらためて思索することでゴールイメージを形作り、共有することにしました。共通のゴールとして上がってきたのが、美容を基点とした「社会における心身の潤いの提供」と自分が選びたいものを選ぶ、という意思を肯定できる「自己肯定感の高い社会の実現」です。

ゴールの策定や達成に向けた対話の中で「そもそもなぜ成長しなくてはいけないのか?」、「どこを目指し、何が必要で、どうしたいのか?」を突き詰め、トリコのブランドにおいて鍵となる資源が改めて整理されました。「パーソナライズ」と「クリエイティブ性」、「テクノロジー」をキータームに、画一的な美しさでなく、自分らしい美しさを日々の中で達成していく、というストーリーが得られました。

得られたインサイトをもとに、トリコとMIMIGURIは「ブランドガイドライン」を共創しました。そして、ブランドコンセプト「美しさを私らしく」とミッション「私らしい美しさで、私をもっと好きになる」を再認識しました。

変化をチャンスに。人事評価を再考して「個人のWill」に向き合う

実現したい未来に向け、ブランドを問い直した結果、従来の組織、制度をそのまま運用しても、新たな事業の未来に向けた成長を促進できないのではないか?という課題が見えてきました。

事業が成長していく一方で、現場で必要とされる人員の数やスキルの幅が急速に広がることが明らかに。従来通りの組織や、その中の制度の運用では、更なる成長を促進できないリスクが見えてきました。「評価制度」も大きな変化が必要だったのです。そこで、まず「社会における心身の潤いの提供」と「自己肯定感の高い社会の実現」というゴールを達成するために、事業ポートフォリオを探索するワークショップを行いました。

ブランドの再認識とともに、事業全体の戦略、構想を改めて整理し、その構想を支えるために、要員計画なども踏まえ、どのような組織を作り出すべきか、大まかな組織計画を洗い出しました。そこで、課題として上がってきたのが人財の育成・発達です。人が発達できる組織をデザインすべく、トリコとMIMIGURIは、評価制度に着目し、見直しを進めることにしました。

評価制度を再構築する中で、主に行ったのは、「評価におけるグレードの再定義とグレードごとの期待値調整」、そして「その期待値を達成するための具体的な評価フローなどの支援の仕組みの構築」です。

プロジェクトメンバーが対話をする中で、意外な発見も多数ありました。例えば、グレードについて。トリコのマネージャー全員で各グレードに期待したい姿や、グレードごとの基準値を話し合っていく中で、マネージャーごとに、その姿や基準値が違うかも・・・といった気づきが得られたのです。同じグレードに高いレベルを求めたいマネージャーや、現在地を踏まえながら実現可能な姿を求めていたマネージャーなど、少しずつ前提が異なっていたのです。評価制度について語り直すことで、その違いに気づき、その違いをどう捉えるか、更なる対話を重ねました。その結果、どれくらいの期待を各グレードに求めるべきか、考えが深まっていきました。

また、自己肯定感を高めること、の価値と意義を体現するために、評価フローの中に「個人のWill」について語ることが盛り込まれました。目標として、個々人が「自分自身のWill」を立てる仕組みを作ったのです。成長に向け、人財や能力の定義という観点で、スタートダッシュを切るためのインフラが整いました。

協業することで、事業ビジョンの解像度が上がる。「本気」だから得られたベネフィット

トリコとMIMIGURIの取り組みにより、トリコにおいて中期の事業戦略やロードマップの解像度が上がり、それをマネージャーレイヤーに共有、新たなスタートダッシュを切るための立脚点ができました。この取り組みを通じ、感じたことをMIMIGURIのコンサルタント、濱脇賢一はこう語ります。「プロセスの最中、メンバー全員が本気でした。ともにゴールを見据え、そのゴールに向かって行動、対話を起こしてくれたのです」。

今回、共に作った「ブランドガイドライン」や「人事評価制度」はあくまで「現在」という一つの転換点で機能するものです。これらを活用して、得られた新たな価値を社内やユーザに還元し、成功体験を得たときには、更なるアップデートが必要になります。そのときに、今ある「ブランドガイドライン」と「人事評価制度」をスタートラインとして、改善し、自走してくれるだろう。そう思える信頼関係を対話を通し、築けたからこそ、今回のアウトプットは生まれました。

みんなが選ぶもの、ではなく「私」が選びたいものを選びとる人々をパーソナライズを武器に支援し、日常の中で人々の自己肯定感を高めていくことを言祝ぐトリコ。日々の何気ない自己決定の積み重ねが、人々が自分が選びたいものを選べる環境を拡大し、自分が選びたいものを選べる、自己肯定感を基盤とした社会を実現していくのではないでしょうか。
そして、積み重なった変化の先の未来を、共に見届けましょう。

(取材・文:大藤ヨシヲ)

  • Project Owner & Consultant

    濱脇 賢一

  • Consultant

    塙 達晴

  • Project Manager

    根本 紘利

  • Copywriter

    大久保 潤也

  • Creative Director & Art Director

    八木彩(AYA YAGI)