変革の成長点を定義する。創造的対話を生み出す、ゆめみのリブランディング。

Point

  1. 定義づけをゴールにせず、変化を前提としたCIを構築
  2. 全社員を巻き込んだ対話を実現するため、ワークショップを自社内で完結するよう規格化
  3. 変革の成長点となる組織の因子を定義し、クリエイティブへと接続

2020年、「新しい日常(ニューノーマル)」な生活様式への移行が求められるとともに、日本社会は大きな変革を迫られました。DX推進のさらなる加速が期待される一方で、経済産業省からは「2025年の崖」とも言われるDXへの危機感が示される現在、私たちは新たなスタートラインに立っていると言えます。

あらゆる企業が変革を求められる中で、いち早く適応的(アダプティブ)な組織作りに取り組んだのが、株式会社ゆめみでした。インターネットの可能性を実現するリーディングカンパニーとして時代を先駆けるサービスを創出し続ける同社は2018年、組織そのものを変革し続けていく「アジャイル組織宣言」を提唱。すべてのメンバーが代表取締役権限を持つ「全員CEO制度」など、数々の斬新な制度を導入し、話題を呼びました。

そんなゆめみが、20周年という節目を迎えたタイミングでCI(コーポレート・アイデンティティ)を刷新。元来の先進性や開発力を生かして、より良い未来に向けた新しい事業領域にチャレンジし続けることが宣言されました。
リブランディングとは「自らを再定義をすること」。ゆめみには、常に変化し続ける組織のCIを、いかに定義するかという命題がありました。この矛盾した命題に挑戦するため、戦略やワークショップ設計をMIMIGURI、クリエイティブは合同会社STUDYという3社共創のリブランディングプロジェクトが始まりました。

定義を終着点にせず、創造的対話を生み出す起点となるCIを。

2018年の「アジャイル組織宣言」を契機に、事業方針や組織構造が大きく変化したゆめみ。社内が変化すれば、社外へ発信するメッセージや提供価値にも影響が及びます。プロジェクトリーダーの工藤元気さん(ゆめみ 取締役)は「『ロゴを変えよう』とかではなく、『ゆめみのブランドそのものを考えよう』という話でした」と振り返ります。そうして折しも創業20周年と重なるタイミングで、リブランディングプロジェクトが始まったのです。

常に変化し続ける組織のCIを、いかに定義するか。この矛盾した命題に向き合うべくMIMIGURIとゆめみは対話を重ね、定義することそれ自体を終着点とするのではなく、変化を前提に、創造的対話を生み出す起点となるCIを作り上げることをゴールとして見据えました。グラフィック表現においても、プロジェクトの性質と親和性の高いDI(ダイナミック・アイデンティティ:可変的なビジュアルを構築する手法)を取り入れることが決定しました。

自走する対話ワークショップを規格化。個の語りが、組織の実像を浮かび上げる。

ゆめみは個を尊重する組織であることから、リブランディングにおいても全社員を巻き込むプロセスを設計。オンラインでの対話によりゆめみを象徴する単語を抽出し、そのエッセンスを要件としてコピーライティングやビジュアライズを行う形で進められました。

リモートで勤務する200名以上の社員をなるべく多く巻き込むためには、対話機会を連続的に何度も設ける必要があります。そこでMIMIGURIは、ワークショップをゆめみに委ねられるように規格化。ファシリテーションが滞りなく走り出せるように、最初は「私」という個人を主語として語る、難易度の低いワークから始まるプログラムが設計されました。

一人でも多くの社員を巻き込むため、ゆめみはワークショップをゲリラ的に複数回行い、その内容を踏まえてMIMIGURIもコアメンバーを中心としたワークショップを実施。組織の今と未来を多様な個人が多角的に語り、個と個の言葉が混ざり合っていくことで、ゆめみという組織が立体性をもった実像として浮かび上がっていきました。そうして紡がれた言葉をクリエイティブへと接続する際の鍵となったのが、変化を許容する余白の設計でした。

組織の余白を定義する。「ゆめみの成長因子」がもたらす、変革の起点。

可変の性質を持つDIを構築するためには、定義しながらも設計に余白をもたせる必要があります。その相反する2軸を成り立たせることは、本プロジェクトの焦点でもありました。

予め抽出していたゆめみを象徴する4つの要素について、MIMIGURIは対話で語られた内容をもとに、「多面的有機体」「ワークフルライフ」「共創パートナーBnB2C」「互いに学び合う場」とワーディング。常に立ち戻る思想の原点となると同時に、成長点を兼ねるものとなるよう、この4つを「ゆめみの成長因子」と名付けました。

STUDYによるシンボライズも、この成長因子をデザイン要件として進められました。DIは可変であるがゆえに「使いにくい」ものとなるリスクもあるために、STUDYとMIMIGURIはロゴ案について意味と機能の検証も実施。もたらす印象や可変の幅について対話を重ね、結果としてシンボルは「私」「YUMEMI」「共創パートナー」を象徴する、3つの等しい形状の羽が旋回するように集合するものとなりました。ゆめみの持つ多面性を表現すべく、状況や環境、個々の意思に応じて12色相に変化するカラーリング展開となっています。

こうして生まれたCIは、コーポレートサイトはもちろん、ビデオ会議用の背景画像など各種ツールへと展開。ローンチ後のリモートワークの場ではその背景画像が社員に続々と使われ、現在もCIを起点に、CM動画の制作や組織開発などのプロジェクトが拡大しています。

3社が情熱を注ぎ共創で生み出した、変革の成長点を定義するCI。シンボルマークの3枚の羽は、ゆめみがもたらす新たな変革の風をまといながら、今日もその意味がアップデートされ続けています。

(取材・文:田口友紀子)

  • Project Leader

    濱脇賢一

  • Project Management

    根本紘利

  • Workshop Planning & Facilitator

    淺田史音

  • Communication Planner

    田島一生

  • Copywriter

    大久保潤也

  • Brand Book Designer

    竹内美由紀