「わがままで、感謝される」。“SSR”の人材が集まるgroxiの、CIリニューアルプロジェクト。

  • 吉田稔

    コンサルタント

  • 吉田直記

    デザイナー

  • 高田洋明

    プロジェクトマネージャー/コピーライター

  • 横浜国立大学経済学部卒業。総合人材サービス企業で中途採用コンサルティングとキャリアアドバイザー業務に従事。その後地元前橋市で実兄と洋菓子店を創業、接客から経営全般業務に従事。特に地場産業と連携した商品企画、ブランディングに力を入れる。2018年よりDONGURI(現MIMIGURI)に参加し、ブランディング・事業開発を中心にコンサルティング業務に従事。

  • 東京造形大学デザイン学科グラフィックデザイン専攻卒業後、2014年にDONGURIへ入社。 視覚表現のスペシャリストとして、web/プロダクト/グラフィックまで、表現探求に深くコミットしたクリエイティブをマネジメントしている。

  • デザイナーとしてキャリアをスタートし、現在はプロジェクトマネージャー/クリエイティブディレクター/コンセプトプランナー/コピーライターなど、プロジェクトによって立ち位置を変えて臨んでいる。特に文章を書くことを好む。認定スクラムマスターでもあり、プロジェクトだけでなく良いチーム作りにも興味が強い。日々、楽しい時間を1分でも多くするにはどうすればいいのか、わりと真剣に考えている。

ITインフラの構築や運用などを中心に、様々なソリューションを提供する株式会社groxi。

2019年10月には、「Lee.ネットソリューションズ」から社名を変更し、新たなコピーを掲げました。

「わがままで、感謝される。」

「わがまま」なのに「感謝される」という一見、相反する言葉が並んだように見えるこのコピーは、個々が高い技術を身につけ、信頼を獲得して進化を重ねていく個性溢れるgroxiのマインドが表されたものでした。

あちこちがはみ出すように動く、大胆なVI。架空のアニメ作品をモチーフとした採用サイト。

社内外から高く評価されたというこの一連のプロジェクトが、どのように生まれたのでしょうか。

groxiとDONGURIの2社にその道のりを聞いてみると、その核に込められた、「人」への強い想いが見えてきました。


匿名の生の声から、社員の“本当の本音”を知る。

2019年、社名を「Lee.ネットソリューションズ」から 「groxi」へと変更されました。同時にCIもリニューアルされた一大プロジェクトでしたね。

浅井設立30周年という節目を前に、会社として変わらなければならない、改革が必要だ、という強い決意で本腰を入れて進めました。「殻を破る」というのが大きなキーワードでしたね。

groxi株式会社 執行役員 兼 経営管理部 GM 浅井克央さん

その「殻」とは、どのようなものだったのでしょうか。

浅井僕たちはありがたいことに長くお付き合いいただける顧客が多くて、提供しているサービスも10年くらいずっと一緒なんですよ。組織としても人の入れ替わりがあるくらいで、人数規模も変化がなくて。安定の反面、停滞とも言い換えられるような空気が漂っていて、このままでは経営者も含めた社員全員、意識が鈍化していってしまうんじゃないかっていう危機感を抱いていました。もちろん、一朝一夕で変われるものじゃないんです。でも、まずは「変わろう」「殻を破ろう」というメッセージを強く出したいという思いで、このプロジェクトがスタートしました。30周年でもあり、RPAの事業も新しく始まるときだったので、変わるタイミングとしてもちょうど良かったんです。

今回のプロジェクトは、全社的な改革のスローガンでもあったんですね。社名変更は自社内、CIのリニューアルに関してはDONGURIと体制が分かれていますが、これはどのような理由からなのでしょうか。

浅井CIに関しては「外部のプロに頼むべきだ」って初めから決めてました。僕たちはその道のプロでもないので、仮に自分たちで作れたとして、その中に正解があったとしても、それが正しいと判断できないと思うんですよね。

海野中途半端なものしか出てこないから、っていうのは浅井がずっと言っていましたね。

浅井内部だけで考えていても客観性に限界があるんですよ。だから、ちゃんとプロの方にお願いしたかったんです。

groxi株式会社 経営管理部 管理ユニット 海野江里子さん

そのパートナーとして、DONGURIを選ばれた理由は何だったのでしょうか。

浅井僕はすごく“人”を見るんです。人柄とか、組織の壁を超えて一緒に取り組んでいける関係性とか、そういうものをすごく大事にしていて。極端な言い方をしてしまえば、「泥になっても一緒にやれるかどうか」。うちも顧客に選んでいただける理由が、それなんですよ。例えプロジェクトが複雑で困難な状況になったとしても、どこまでも一緒にやりきるっていうか。初めてDONGURIの吉田(稔)さん、次に早川さんともお会いして、このおふたりなら、って強く思ったんですよね。あともうひとつ、「この人たちから学びたい」っていうのもありました。年下の若い方達の最先端の仕事、思考を学びたいなって思ったんですよね。DONGURIさんって、うちの同じ年齢層の社員と比べても、なんか違う感じがするんですよ。それが何かっていうのは、うまく言えないんですけど。

早川吉田(稔)は、提案書も特に書いていないんですよ(笑)。だから、浅井さんは本当に”人”で選んでくださったんだろうなと思います。

株式会社DONGURI ファシリテーター 早川将司

浅井なんでしょうね。「この人とだったらやっていける」って感じですよね。でもめっちゃ学ばせてもらってます。こう見えて意外と、皆さん真面目なんですよ。失礼なんですけど(笑)。

一同(笑)

浅井いやね、若い世代でカジュアルな感じもあるんですけど、めちゃめちゃロジカルに、真面目な仕事をされていて。そういうところも良いな、間違ってなかったなって思うんです。

浅井さんがDONGURIのメンバーと最初に会ったときには、どんなお話をされたんでしょうか?

吉田(稔)当初は周年事業としてのCIリニューアルだとお聞きしていました。社名変更は既に社内で進めているっていう段階だったと思います。

株式会社DONGURI ブランドコンサルタント 吉田稔

浅井その内製で進めてた社名変更のプロジェクトも、実は途中で止まりそうになったことがあったんですよ。顧客の要件に合わせて正しく、間違いなく作るっていうのがうちの主業なので、正解がないものを作っていくっていうのに慣れていなくて。その動きを見ていてもかな、やっぱりプロに頼もうって思ったんですよね。

吉田(稔)確か、その少し前に組織の体制を変えられたとかで。その組織図ですとか、会社として向いていきたい方向ですとか。周年事業で社名を変えることになったこのタイミングで、このプロジェクトを活かして会社を良くしていきたいっていうお話をたくさんしていただいたんですよね。

早川浅井さんの感性、「やってみよう」っていう感じが、僕らからもすごく見えてて。一緒に、とにかくやってみましょう! って感じでしたね。

浅井もう本当、アジャイルですね(笑)。

そのヒアリングの内容から、どのようにプランニングを行なっていったのでしょうか?

吉田(稔)今後10年20年の展望をお聞きしたとき、その理想と現状にギャップがあるというお話になったんですね。客先で現場に常駐する社員の方が多かったりするので会社への帰属意識が低い感じがある、企業としての求心力もテコ入れしなきゃいけない、というような。あとDONGURIの実績紹介のとき、ボトムアップ的にCIを策定していく事例にすごく共感していただいたんです。なので今回も現場社員の声を抽出して、それをCIに繋げていく設計になりました。

勤務形態の違いが個々の帰属意識に影響しているということですね。その状況で現場の声を吸い上げるのはなかなか難しいと思うのですが、どのような設計にしたのでしょうか。

吉田(稔)プロジェクト全体の流れとして、アンケートで現場社員の方の声を抽出して、ゼネラルマネージャーの方へインタビューを行った上で、ワークショップで固めていくという設計にしました。アンケートなら勤務場所を問わず全員の声を平等に拾えますし、匿名である分、生の声をどんどん吐き出してもらえるんじゃないかという狙いでした。

そのアンケートは、どのような項目を設計されたのでしょうか。

浅井ほとんどDONGURIさんにお任せでお願いしていましたね。

吉田(稔)設計の狙いとしては、経営サイドが重視するポイントと、社員の方々が個人のキャリアで重視するポイントを聞きました。その2点のギャップを見ることで、会社への期待や不満を抽出できるような項目にしています。あとは会社に対して改善してほしいことなど、自由記述を意識的に設けました。半数以上は自由記述での回答をいただけたと思います。

浅井すごく真面目に書いてくれてましたね、皆。

早川「会社への帰属意識が低い」という課題をお聞きしてたんですけど、アンケートを見ると意外にその、無関心じゃなくて。「意見は言いたい」っていう方がたくさんいたので、僕らもなんか不思議に思ったんですよね。なのでその後のヒアリングやワークショップでも、そこは掘り下げていきました。

軸をずらしたテーマ設定で、会社を自分ごと化する。

課題とアンケート結果にギャップが出ているというのは確かに気になりますね。その掘り下げというのは、どんなふうに行っていったのでしょうか。

早川ミドルメンバーとボードメンバーという対象者別に分けたワークショップを通して、情報を吸い上げていきました。初めに集まっていただいたミドルメンバーは、10年後20年後を担ってくれるような若手だったり中堅だったりの方々ですね。この方々には、「自分たちがこれから採用していくのはどんな人が良いのか?」というテーマのワークショップを実施しました。このテーマにした理由は、会社を自分ごと化して、どうしていきたいか? というのを考えていただきたかったからです。「会社の良いところ悪いところ」というストレートなテーマでは自分ごとになりにくいので、ちょっと軸をずらしたテーマ設定にしました。

採用という会社の「外側」の視点を意識することで、逆説的に自分ごと化していくんですね。そのときに出た意見は、どのようなものだったのでしょうか。

浅井僕、その場にいなかったからわからないんですよね。

早川そう、本当に本音で話していただきたかったので、僕らDONGURIだけでワークショップを行わせていただいたんです。「どういう人材が欲しいか」というテーマのときに、「自分や自分たちみたいな人たちが欲しい」という声が出てきていて。あまり会社ごと化した意見が出なかった印象があるんですよね。

海野会社じゃない、サークルです、みたいな意見も出ていましたよね。

早川そうですそうです。会社とか組織の枠では捉えきれない、みたいな話で。アンケートについても「こういう意見が挙がっているけれども、どういう意図なんですか?」っていうのをお聞きして、代弁者的に色々答えていただいたんです。会社への興味が薄いのかと思いきや、働きやすさや居心地の良さがある、という声もあったんですね。アンケート結果で「帰属意識の低さ」はあるものの「意見は言いたい」というギャップが見られていたように、良いところと悪いところが表裏一体で存在するというか。

おそらく、率直な本音が飛び交った場だったのだと思います。いくらワークショップといえど、本音で話してもらうのは難しいのではと思うのですが、どのような点を意識されたのでしょうか。

早川それはもう、最初の設計ですね。浅井さんや海野さんには入っていただかず「若手と中堅の方々と、僕らだけでやらせてください」って僕たちからお願いしたんです。

早川「ワークショップの場で『いくらでもいいんで正直に話してください』って言ったら、本当にたくさん話してくださったんです」

本音を打ち明けられる場を設けることが、メンバーの理解につながるんですね。

早川理解が深まった結果としてなのですが、実はワークショップを進めている途中で、当初の設計とは異なる進行に変更したんです。

浅井判断が早かったですよね。1ヶ月くらいで方向転換した記憶がある。

早川確かそのくらいですね。ワークショップの2回目の資料の最後に、「今後の進行を相談させてください」って載せて。というのも、1回目の終わりに食事会を開いてくださったんですけど、そのときにワークショップに参加していないメンバーの方々も来てくださって、色々お話してくださったんですね。もともとは、ミドルメンバーのワークショップでミッションやビジョンのもととなるMIのプロトタイプを作って、その後にボードメンバーと接合するっていう仕組みを設計していたんです。でも実際にミドルメンバーと対話したところ、事前にボードメンバーにヒアリングしていた内容との意識の乖離が大きいことがわかったんです。その段階でMIのプロトタイプを固めるのは難しそうだと判断したので、浅井さんや海野さんにご相談して、プロトタイプの構築でなくリサーチに全振りしたという経緯がありました。ミドルメンバー一人ひとりの情報を収集しきった上で、その情報を元に会社の方向性やボードメンバーの宣言を立てるという流れで進めることにしたんです。

当初の設計とは異なる、大きな方向転換をされたんですね。ミドルメンバーとのワークショップを経て、ボードメンバーの方を対象としたワークショップではどのようなことを実施したのでしょうか。

早川今まさに会社を動かしている8名の方々で、会社の方向性のお話は時間をかけて行いましたね。ベクトルとしてどちらを向くべきなのか、対顧客なのか対社員なのか、あるいは社会貢献、対社会なのか、とか。この段階で「ミドルメンバーがやりたいこと」はまとまっていたので、「ボードメンバーが何をしたいのか」を改めて知るための対話を重ねていきました。あとはアセットの考え方ですね。今の事業を大きくしていくのか、何を資源として武器にできるのか、今あるアセットで新しい事業を建てられるのか、っていう3つの軸を決めて、調整していく感じでした。このワークショップを経て、「わがままで、感謝される。」というMIの言語化ができたんです。

VIは「会社の人格」。矛盾のない表現が、信頼につながる。

そのMIをもとに、今のVIがどのように開発されていったのでしょうか?

早川MIを非言語で表現するために、これまでのプロセスをVI担当の吉田(直)に共有していきました。あと、ワークショップで「自由」っていう言葉が共通言語として出てきていて。「受動的な自由」か「能動的な自由」か、という話が挙がったんですね。結論としては「勝ち取る自由」がいい、となったんですけど。そういうワークショップで発話された言葉も、表現を変えずにそのまま共有することは意識しました。要約や客体化をしてしまうと、良かれと思ってのことであっても、熱量が失われてしまうところもあるので。

吉田(直)そのときには新しい「groxi」という社名も決まっていて。「成長」(grow) と「輝く」(glow)、「たくさん」(”xi”=being one more than ten)が組み合わさっているという由来も合わせて共有をもらいました。「わがままで、感謝される。」っていうMIは社内外に伝わっていく言葉なので、ワークショップで発話された「勝ち取る自由」という言葉も含め、それまでのプロセスでの複数の要素をすべて矛盾なく、VIの世界観と確実に紐付けていこうと考えていきました。というのも、VIは「ありたい状態」「あろうとしている姿」が視覚化されたもので、会社の人格の塊でもあるんですよね。なので、そこに矛盾があるとどこか不信感を与えてしまうんです。社内外どちらに対しても。なので、矛盾なく統一した世界観を与えるために、これらの要素はすべて何かしら接合していくっていうことをすごく大事にしました。

株式会社DONGURI アートディレクター 吉田直記

複数の要素を矛盾なく接合させるのは、難しい作業でもあると思います。どのような考え方でVIの構築を進めて行ったのでしょうか?

吉田(直)「わがままで、感謝される。」は、あくまでも言葉として設定されているものなので、画として、非言語として何をどう表現していくかっていうのが次のフェーズなんですよね。まずは「わがままで、感謝される。」がどういう状態や様子を表すのかを、言葉を抽象化しつつマッピングしてキーワードを見つける作業を進めました。次に、そのキーワードをもとに視覚的なメタファーを探すという流れでしたね。たくさんの言葉を出していくなかで、それまでのプロセスの資料から「なんとなく、こっちのワードの筋がいい」っていうのは感覚的にわかっていくんですよね。そうしてマッピングを続けて、筋のいいワードをハイライトしていくと、言葉の方向性が見えてくるんです。そのときに出て来たのが、「全身全霊でわがままをする」という言葉でした。この「全身全霊で」っていうのはMIを可視化するためのフックとして設定したもので、MIの世界観の文脈にも沿った言葉です。

「全身全霊でわがままをする」というキーワードから、どのように視覚化を進めて行ったのでしょうか。

吉田(直)視覚的なメタファーを探すために、文字とか色、マークとかのVIの要素が集約されているロゴから着手を進めていきました。コンセプトと画については、切り分けて提案したんですよね。多分1回目の提案で、今の最終案に近い流れはできていた気がします。

浅井そうですね。そこから詰めていく感じでした。

VI開発資料の一部。コンセプトづくりの過程が可視化されています。

吉田(直)視覚イメージって強いので、画だけをお見せすると感覚的な判断をされやすいというか。好き嫌いの主観の判断になってしまうこともあるんです。でも本当はそうではなくて。繰り返しになりますが、会社の人格として矛盾ない表現で紡がれているか、というのが重要なんです。ロゴを含めたVIを起点に、社員や関係者が企業価値を語れるための要素が矛盾なく設定されていくことが必要なんですよね。バイアスや前情報の理解度によって間違った選択をすることもあるので、そういうことがないように、コンセプトと画を切り分けて、ストーリーとして矛盾ない選択をしていけるような提案を意識しました。

適切な判断のために、提案にあたっての情報設計も入念に行われたんですね。

吉田(直)最終的には、「人の動き」を抽象化してロゴマーク化しています。両手両足を動かす様子で、「全身全霊でわがままをしている」ということが感覚的に伝わるように設計しました。VIとしてどのタッチポイントでもgroxiらしさを視覚的に感じてもらうために、例えばツールへの展開であれば「ロゴの一部が何かしら見切れている」っていうルールを設定しています。「わがまま」を感覚的に伝えることと、「わがままで、感謝される。」っていうMIを知っていればその意味がわかるという。

浅井ご提案も色々出していただきましたもんね、本当に。

吉田(直)ロゴ提案するときもイメージしやすくしたいので、ツールの展開案も合わせてお出ししていましたね。

早川今のオフィスのエントランスのロゴも、すごい存在感ありますよね。はみ出そうな大きさというか。

浅井選択肢の中で一番大きくて良いパターンで注文しました(笑)。うちのオフィスには大きすぎるくらいですけどね。「変わった」っていう社内外へのメッセージを、まずは強く打ち出したかったんです。

「型にはまれなかった」“SSR”の人材を求めて。

本当にすごくインパクトがありました! エレベーターを降りたら、すぐにパッと目に入ってくる大きさで。

浅井初めてのことなので、社内外含めて定着するかどうか不安だったんですよ。変えるっていう経験もなかったし。そしたら本当にね、びっくりするくらい切り替わった。スッと馴染んで。

海野社内に保守的なところがあるので、心配でしたよね。でも蓋を開けてみたら意外と皆、待ちに待ってました感があって(笑)。

浅井社名変更もCIのリニューアルも、結果としては成功だったんです。創業者もめちゃくちゃ喜んでくれていて。「これこれ、こうなってほしかったの」って言われたんですよね。

創業者の方から! それは嬉しいですね。

浅井嬉しかったですね。採用サイトもすごく良い、インパクト抜群のものを提案いただけて。即決でした。

groxi株式会社の採用サイト。架空のアニメ作品をモチーフとした世界観になっています。

え、即決だったんですか?

浅井はい(笑)。

海野でも、最後に出て来た案でしたよね(笑)。

浅井あの瞬間は忘れもしない。

海野私もすごい覚えてます。

浅井真面目な提案が続いた後に、最後「実は……」って感じで出された、提案資料として出力すらされてない案でしたね(笑)。

吉田(直)なんか楽しくなっちゃって(笑)。裏で描いてたんですよ。

すごい、ビジュアルがほぼ出来てる……!(笑)

浅井これが出て来た瞬間にもう、インパクトがすごかったですね。

この案に至るまでの過程が気になるのですが、採用プロジェクト自体はどんな感じで進んでいたんでしょうか?

海野社名が変わるからには採用サイトのリニューアルも必要で、このタイミングで採用ツールも全部見直しましょうっていう話になりましたね。

吉田(稔)そこから、最初に採用計画と施策をヒアリングさせていただきました。応募者や選考プロセス、今使っているツールや、タッチポイントなど全体的に網羅する形でお聞きして。

そのとき顕在化していた採用課題というのはどのようなものだったんでしょうか。

浅井どちらかと言うとクロージングですね。歩留まりを良くするためにツールもサイトも見直そう、というところがスタートだったと思います。

その課題について、DONGURIとしてはどのようにプロジェクトを設計していったのでしょうか?

吉田(稔)何のツールを作るかというところと、CIのワークショップのときに「どういう人材が欲しいか」という採用に関するペルソナの話があったので、それをターゲットとして採用の設計をしていきました。そういう人を振り向かせるためにはどういうコピー、コンセプトで採用コンセプトを作っていくべきか、みたいなことをお話しさせていただいた感じです。

採用サイトにある、「型にはまれなかった者たちへ」というコピーがとても印象的でした。

高田そのコピーの経緯についてお話しすると、採用サイトもインパクトありきっていうので、初回の提案のときに吉田が本当に最後の最後で、「実は」って出して、そのまま満場一致みたいになって。

浅井あの場でめっちゃくちゃ盛り上がりましたよね(笑)。大拍手でした。

高田それで、そのままアニメパロディの方向に決まったんですよ。そこから浅井さんとかとお話しさせていただいて、キャラクター設定を実際いらっしゃる社員の方とか求める人材のところに落とし込んでいこう、というお話になっていったんですね。それで実際の社員の方のお話を聞いていくと、groxiに入る前に50社落ちてる人とか、入社の目的が「脱フリーター」っていう人がいたりして。あとは面接だったり、実際に社内にいらっしゃる方達に「SSR(ゲームにおいて入手難易度が最高レベルのカード、キャラクター)になりなさい」って伝えてると聞いたんですね。それってもう、一般的に出るカードじゃないじゃないですか。groxiが求める人たちへの強い想いを感じたんですよね。

株式会社DONGURI スクラムマスター 高田洋明

高田社会の固定観念とか、既成概念の枠に収まらないのがSSRのカードの人たちで。それはむしろどっちかっていうと、「収まらない」っていうよりは、社会自体がその枠を用意できてないから「収まれない」人たちなんじゃないかって思ったんですよね。なので「型にはまらなかった」っていうよりは、「型にはまれなかった」人たち、なんだけど、その特異性でスペシャリティを持っている、ポテンシャルの高い人たちに来て欲しいっていうのが浮かんで来て、このコピー、コンセプトが降りてきたんです。だからなんか、「代えが効かない能力」みたいな、アニメパロディっていうのが画としても、浮かんで来ちゃって(笑)。先行して画まで出てきちゃったっていうのがあったので、じゃあそこに徹底的に落とし込んで、言語化してコンセプトを作っていく必要があるなっていうので、ここはかなり吉田(直)と話しながら作って行きましたね。あのラフも、前日くらいに吉田(直)から「実はこういうの用意してて」っていう見せてもらってて。「めっちゃいいじゃん」「これでいきたいよね」って話はしてて(笑)。ですけど、当日の空気感で出す出さないジャッジをしよう、ってなったんです。

浅井そうですよね。他社の方に「普通は決裁通らない」「羨ましい」って言われたもん(笑)。

浅井「採用サイトでこれだけ大胆に振り切れるっていうこと自体が、groxiの社風の表現にもなってるんですよね」

吉田(直)最初はお見せするつもりは本当に無くて。確か、提案の場で「アニメが好き」っていう会話があったはずなんですよ。そこで、「あ、これは」と(笑)。で、本当にその場のノリで出したっていう。

そしたら、満場一致の即決(笑)。でも、この採用サイトを見た方は、「あのキャラのモデルはどの人?」って気になりそうですよね。

浅井聞かれます。なんかちょっと聞きづらいみたいで、入社して1ヶ月くらい経った頃に聞いてきますね。「ずっと気になってるんですけど」って(笑)。

やっぱり、皆さん気になるんですね(笑)。サイト以外のところで、採用のツールはどんなふうに作られたんでしょうか。

海野冊子ですね。あとクリアファイル。

浅井ある意味、映画のパンフレットみたいなね。

海野全部あの世界観で統一して。

この世界観のツールは、かなりインパクトありますよね。

海野イベントとかですごく反応があります。置いておくだけで……

浅井取り合いになるよね。

海野「ください、ください」って。

「ください」って、すごいですね……!

海野あと、採用媒体の担当者さんとお話しするときに、すぐにうちの会社のことをわかっていただけるんですよね。

海野「雰囲気とか求めている人材がわかりやすく表現されているので、説明がすごく楽になりました」

採用ツールとして説明が少なくなるのは理想ですね。

海野社内でも入社して間もない人たちだと、採用の場とかで会社の強みがうまく説明できないことが多かったんです。でも今は皆が、あの採用サイトを軸に自分で説明できるようになってるんですよね。

言語と非言語の両方で矛盾なく表現されているから、伝わるものになっていってるんですね。同じタイミングでリニューアルされたコーポレートサイトは、どのようにプロジェクトが進んでいったんでしょうか。

吉田(稔)CIのリニューアルに合わせてっていうところと、目的としては採用と営業の2面がありましたよね。

浅井コーポレートサイトは実はちょっと悩んだんですよね。というのも、うちは属人的な人脈営業が多い分、コーポレートサイトがあまり利用されないという背景があって。なので、特に以前を知っている人に対して「変わった」って伝えることは大事にしました。

ターゲットや使用される場面を絞って設計されていったということですね。

吉田(稔)そうですね。既存事業で営業として使われることはないものの、ちょうど新しくRPA事業をスタートする段階だったんですよね。なので、新規の営業で使われることも意識しながら、営業と採用で導線は分けて考えていきました。採用の導線としては、ユーザーが採用サイトに最初に訪れて、その後にどんな企業だろうってコーポレートサイトに遷移して、どんな事業やってるんだろうって回遊するシミュレーションで考えていって。営業面でも採用面でも、回遊性とか下層コンテンツでの情報みたいなところは意識して設計しました。

浅井結果として、サービス情報もあえて詳細に載せない形になりました。メインは新しいVIでのトップページですね。こちらでちょっと悩んだところもあったんですが、良い形にまとめていただけて助かりました。

「全身全霊のわがまま」が表現されたトップページは、間違いなく「変わった」という大きなインパクトを与えていますね。社名やCIを改められた今、これからの展望はどのようにお考えでしょうか?

浅井事業としてはITインフラに強みを持っているので、安全なIT環境を築いていくことに引き続き注力していきます。ただ僕としてはそれに加えて、「既存事業の壁を越える」というのを掲げています。どうやって実践するのかという定義も特にしていないのですが、実際、少し形になり始めているところもあって。例えば、新しく始めたRPAの事業をきっかけに、デジタルトランスフォーメーション(DX)のお取り引きが増えてきているんですよ。これからは既存事業の壁を、ゆくゆくは国境の壁も超えたビジネスに挑戦していきたいですね。あと僕個人のミッションとしては、最終的に「地球から宇宙へ行きたい」と本気で考えていて。これ言うと驚かれることもあるんですけど、実は20代の頃からずっと、ブレない軸として持っているんです。IT業界にいる理由も、宇宙に関することがやりたいからなんですよ。何事も、願い続けていれば不可能はないんじゃないかなと思っていて。そういうわがままを僕個人としても持ち続けていますし、社員の皆にもそれぞれ大事にしていって欲しいんですよね。自分のわがままで、人に感謝されていく。MIそのままのビジネスを、これから体現していけたらと思います。


「変わる」という強い決意のもとに取り組まれた、今回のリニューアル。

その道のりには、“人”への想いと、矛盾のない本音で紡がれた表現がありました。

「わがままで、感謝される」。groxiがこれから繰り広げる“わがまま”の先には、ますますたくさんの輝きが広がっていくのでしょう。

  • Writer

    田口友紀子

  • Photographer

    永井大輔