人事が挑んだ、初の学会発表。 組織文化の統合に貢献した「社内放送局」の知を“開く”まで。

  • 和泉 裕之

    HR

  • 熊本ひとみ

    HR/コーポレート/コンサルタント

  • 西村歩

    リサーチャー

  • 戸田真梨子

    HR

  • 日本赤十字看護大学卒業。在学時より対話やワークショップに関心を持ち、看護師・保健師の国家資格取得後、フリーランスのファシリテーターとして独立。医療職対象の対話型ワークショップを病院や薬局などで多数実践後、株式会社ミミクリデザインの立ち上げに参画。コンサルティング事業部のマネージャーとして、少人数~数万人規模の組織開発・人材開発プロジェクトに従事。現在は株式会社MIMIGURIの組織人事として、社内放送局「MIMIGURI ch」の総合プロデューサーを担当。

  • 中央大学卒業。スタートアップの立ち上げフェーズから、2社で経営企画/新規事業推進/人事/バックオフィスマネージャーを経験した後、MIMIGURIの前身であるDONGURIにジョイン。自社の組織開発推進の他、メガ/ミドルベンチャー/スタートアップ中心にクライアントの組織デザインコンサルティングを行う。

  • 東京大学大学院情報学環客員研究員。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。科学哲学・科学社会学を専門とし、修士課程ではデザイン学における実践研究方法論に関する調査に取り組む。現在はデザインファームに内在する実践知の形式知化を主軸とする「実践知型研究組織」の概念構築に従事している。電子情報通信学会HCGシンポジウム2020にて「学生優秀インタラクティブ発表賞」、電子情報通信学会メディアエクスペリエンス・バーチャル環境基礎研究会にて「MVE賞」を受賞。

  • エンジニア/営業/Webディレクターを経験した後、人事へ。創業/拡大期のクリエイティブ/エンジニア職の採用、理念開発、組織開発、人材育成などの施策を企画/推進。その後、合併に伴い理念戦略/人事評価制度の策定、組織統合などPMIプロジェクトを担当。MIMIGURIでは人事・広報の領域を担当。人の才能/ポテンシャルに触れることが好きで、組織/チームの創造性が発揮される環境や仕組み作りについて探究している。

2022年6月26日、ヒューマンインタフェース学会ユーザエクスペリエンス及びサービスデザイン専門研究委員会(SIGUXSD)にて、MIMIGURIはフルリモートワーク環境における自社の組織開発の取り組みとして「COVID-19禍の企業合併での文化統合に挑戦した企業内放送局-MIMIGURI channel奮闘記」を発表しました。この発表は、MIMIGURIの組織人事部門が自ら発案し、推し進められました。

一般的には「バックオフィス」とも呼ばれ、組織を支える“縁の下の力持ち”のような印象も多い組織人事部門。なぜ今回学会という場で、その発表を行うに至ったのか。

MIMIGURI channelの立ち上げ、運営メンバーである組織人事部門の和泉・熊本・戸田と学会発表をリードしたMIMIGURI研究開発部門の西村による対談を実施。自社での実践について学会での発表を決めた背景や当日のエピソードや、組織の暗黙知を形式知化する意義など、深堀しました。

なぜ、組織人事部門が学会発表に挑戦したのか。

そもそも、組織人事部門での実践知を学会で発表する、という取り組みは、MIMIGURIでも初めてのことだったと思います。このアイデアは、どのような経緯で生まれたものだったのでしょうか。

和泉まず、私がコンサルティング部門から組織人事部門に異動してきて、初めに担当することになった「社内放送局」という組織開発の施策が、開始から1年経ちまして。安定した運用ができるようになり、新しい運営メンバーも関わるようになったこともあって、今までの活動をどこかのタイミングで体系的にまとめておきたい、という思いがあったんですよね。

とはいえ、率直に言ってしまうと……「学会発表」というものに憧れがあり、一度やってみたかったという、僕個人の興味や好奇心が大きく働いたところはあるかもしれません(笑)。一般的なビジネスパーソンとしてキャリアを積む中では、やはりなかなか経験できることではないですからね。

熊本MIMIGURI channelを立ち上げた当初のことは、実は以前、ayatoriでもお話ししているんですけど。MIMIGURIは2つの異なる会社が合併して生まれた組織で、2020年3月には2社の資本業務提携による横断経営を開始し、2021年3月にはMIMIGURIとして合併したという経緯があります。オンラインビデオ会議ツールZoomを使用した「社内番組」の配信を開始したのは合併前の2020年11月で、ちょうどコロナ禍のフルリモートワークの最中にオンラインで組織統合するという大きなイシューがある状況だったんです。よりよい組織づくりのための改善に夢中で、なかなか取り組みの成果までリフレクションする機会が持てていませんでした。何かこれまでの実践で得たみんなの「知」を、より汎用的で再現性のある「形式知」にまとめることができないだろうかと、どのようなものだったらMIMIGURIらしいアウトプットにできそうか、和泉さんにちょっと考えてもらったんです。

社内放送局「MIMIGURI channel」の様子。毎回リアルタイム配信(社内では「生放送」と呼ばれている)で行われ、録画は社内の誰もがいつでも観られるようにデータベースに蓄積されていく。

和泉ちょうど、2022年3月にMIMIGURIが文科省認定の研究機関になったタイミングだったんですよ。よい機会ですし、思い切って学会発表してみるのはどうだろうか、と。

西村僕も研究開発部門のリサーチャーとしてジョインしたばかりで、社内の人と連携をとっていきたいなと思っていたところだったんです。和泉さんのアイデアを知った時、僕が学会発表に関するリードで力になれることが色々あると思ったので、協力を申し出ました。

戸田時を同じくしてみんなの思いが重なって、研究開発部門と私たち組織人事部門のメンバーが、1つのチームとなり学会発表に臨むことになりました。計5名、そのうち3名が学会発表未経験だったので、西村さんによる様々なリードでプロジェクトが進んでいきましたね。

実際にプロジェクト化されたときは、どんなお気持ちでしたか?

和泉MIMIGURIには多くの研究者が在籍していますが、研究者ではない僕らのようなメンバーが学会発表に臨むのは初めてのことで。新しい挑戦でもあったので、非常にワクワクしていました。MIMIGURIにはそれこそ研究開発部門もあり、実践知の研究に携わる部署としてはコンサルティング事業部や、自社で運営するオンライン学習プラットフォーム「CULTIBASE」の事業部もある中で、このような「実践知の学会発表」を、バックオフィスである組織人事部門が率先して行うことは、他にあまり類を見ない取り組みであるとも思いました。

熊本社内にも研究開発部門ができ、そういうムードが醸成されていたことも大きいですね。実践知を形式知にまとめるという活動そのものが、まさにMIMIGURIのバリュー「知を開いて、巡らせ、結び合わせる」とも繋がっていましたし、社員一人ひとりが培ってきた実践知もより汎用性の高い、再現性のある形にレベルアップできたのではないかと思っています。研究開発部門と組織人事部門の初の合同プロジェクトで、各個人の知的探究との繋がりもある取り組みとなりましたし、研究活動そのものが、知的創造の循環になれたのではないかと思います。

西村自分たちの行った実践を体系的知見として外部発信するということ、そして「学会」という社会全体的な知の発展に貢献しようと働きかけたことは、研究機関としてもひとつ目に見える成果になったのではないかと思いますよ。

ちなみに学会とは、一般的にどういうことが行われる場なのでしょうか?

西村学会は研究者たちが集まる共同体であり、例えば今回はヒューマンインタフェース学会ユーザエクスペリエンス及びサービスデザイン専門研究委員会での発表を選択しましたので、サービスデザインに関する専門性に持つ研究者たちが集まっている場といえます。研究者という肩書きでなくとも、サービスデザインの研究に興味関心がある人であれば、所属を問わず自由に参画することができるものです。
学会では各々が行っている研究の内容について、領域によって異なりますが予め12,000字程度の論文調の予稿(発表のための要旨をまとめた原稿)を用意しておき、その内容について当日にプレゼンテーションを行います。その後、質疑応答という形で研究者からのフィードバックを受けるというのが一般的な流れです。最新の知見が報告される場であると同時に、研究者同士のネットワーキングの場でもあり、新しい研究テーマの動向や知見を交換し合うことができます。

なるほど。

西村その学会活動の中でも私は、「研究者による研究発表」とは異なる「実践家による研究発表」に関心を持っています。最近では学術の世界だけでなく、何か探究するテーマを持って、一人ひとりの問いを大事にしようとする企業や組織も、結構出てきていると思うんですよね。数としてはまだ少ないかもしれないし、研究テーマを一人ひとりが持っている、となると更に珍しいかもしれないですが。
その探究内容を社内研究者がきちんと「研究」としてファシリテーションすることにより、質の高い事例研究として公知化できる上に、実務の現場での議論を研究者コミュニティに還元できるという価値が果たせるのではないかと考えていました。

和泉自分たちの業務の中で探究するにとどまらず、実際に研究者たちの学会発表に足を踏み入れることもできて。ブログやSNSに記事を公開するみたいな枠を超えて、研究という形に昇華できた、探究のレベルを上げに行けた感じがしたんですよね。それが良かったなぁと思っています。

西村研究者コミュニティの関心は、果たしてこの知見は社会的に有益なものか、信頼性に足るものか、世の中にとって真に新しいものかなどが挙げられます。そういった関心度の高い人が集まるコミュニティで発表し、さまざまな専門性をもつ研究者と批判的に議論することは、その発表された「知」を研いでいくことでもあるんです。特に今回の発表先である「サービスデザイン」に関連する学会では、企業がなかなか学会で事例を発表しないことが、研究と実務に距離が生じている一つの要因ではないかと指摘されてきたこともあり、実務の知見を学会に届けることの重要性について頻繁に語られてきました。その意味でも、従業員向けのサービスデザインの事例が報告された和泉さんの発表は、サービスデザイン研究がデザイン実務との結びつきを目指す上でも重要な試みではないかと考えています。そして個人的にはMIMIGURIだけでなく、多くの企業のデザインの実践知が学会で報告される流れが生み出されることが望ましいと考えています。

組織人事部門以外にも、社内には様々な実践知が積み上がっている中、題材に「MIMIGURI channel」を選んでみて、結果として振り返るといかがですか?

熊本MIMIGURI channel開局からの1年は、資本業務提携から合併という大きな組織イベントがある中で、とにかくいろんなトライアンドエラーを繰り返してきた1年でもありました。他にも社内には色々な施策がありますけれど、「運用し始めてから結構歴が長いもの」「今も継続していて、これから先も拡張とか発展のポテンシャルが大きいもの」、と考えるとベストな題材だったと思います。MIMIGURIのミッション「CULTIVATE the CREATIVITY」にも繋がる機会になる意味でも、効果的な選択だったと思っています。

今回の学会発表の取り組みは、ミッションとどのように繋がるのでしょうか。

熊本MIMIGURI channelを開始すること自体やその後の運用は、私たち自身にとっても学習の連続だったんです。だからこそ、施策として実施するまでのスピード感も意識していましたし、振り返りも1週間単位でいろんな施策を見て改善する動きをやってきました。そんなふうに、うまくいったことだけじゃなく失敗したことも含めて、ちゃんと整理して言語化や構造化した内容を、学会という場に知見を出すことで、新たな実践や研究のきっかけになるかもしれませんよね。もしそうなれたら、それはまさに「CULTIVATE the CREATIVITY」に繋がっていくなと考えているんです。
私たちとしても、じっくり全体を俯瞰してそれぞれの取り組みが何にどう繋がっていて、どう社内の文化に貢献しているのか、リフレクションする機会は先延ばしになっていたので、振り返りのいい機会にもなりました。

和泉せっかくMIMIGURI channelの運営を通じて得た実践知を形式知化するなら、何かMIMIGURIらしいアウトプットにしたかったんです。ちょうど目の前に現れたのが「学会発表」という形式だった。これまでにもMIMIGURIでは、実際に学会発表まではしていないけれど、コンサルティング事業部の頃から暗黙知を形式知化するという積み重ねはしていたので、点と点が線で繋がった感覚もありました。あぁこれだ、組織人事部門の形式知化の先導になることで、チームにも組織にも貢献できるかもしれないって。

MIMIGURI channelの施策としての振り返りだけでなく、個人としてもこれまでの実践知と新たな実践知を掛け合わせて形式知化するいい機会になったということですね。

和泉そうですね。ただ放送回数を重ねるというだけではなく、社内放送局というものが、リモート組織内の日常ルーティンに組み込むことができる「価値創造型の組織開発手法」として有効である、っていうところを認知してもらって、それを実践していくためのデザイン論を構築していきたいと思ったんですよね。

MIMIGURI channelの番組表。必須のものと任意のものがあり、これらの番組の視聴が社員の日常的なルーティンとなっている。

戸田「放送局を作っちゃおう!」という遊び心から始まり、番組構成をTV番組らしいものにしたり、​企画に合わせたBGMを選んだり、オリジナルのロゴやジングルを制作したり。やるからには本気で細部までこだわり作り込むところも、MIMIGURIのカルチャーを体現していると思います。

こういった、事業としての売上には明確には直結しないかもしれない社内向けの施策については、組織の中ではどのように理解されているのでしょうか。

戸田MIMIGURIでは、人と人との関係性や組織学習のような、売上にどう繋がるのかはっきり説明がつかない事柄を大切にしています。そういった経営陣の考え方や組織の土壌があってこそ、思い切ったことができたということはあるかもしれません。
従業員エンゲージメントやオンボーディングに関しては、特にリモートワークが本格化する中で、多くの組織が悩んでいる部分だと思います。社員の声からも、MIMIGURI channelの取り組みがそれらにポジティブに影響しているという仮説があったんですよね。

だからこそ、体系化することで多くの組織で活用できる知になりそうだなと思いました。和泉さんの探究テーマは「大人の遊び」というものなんですが、それとも繋がっていて、この研究活動を通じて、今後の組織開発の取り組みを更に促進できるイメージも持てました。

西村事業部だけじゃなく組織開発も率先して研究に取り組んでいきたいという、和泉さんの情熱がすごく伝わりましたし、研究者としてこの火を絶やしてはならんなと。僕はまだ新卒入社してすぐのオンボーディング期間でしたけれど、MIMIGURI channelを実際見てきて、これを組織デザインや組織開発について悩んでいる人たちに、定性調査を通して得られた社員の声など、実践をやってみなければ得られない素材がたくさん眠っていそうだなとも思っていましたから。

調査すらも「番組企画」に。研究対象とすることで得られた、新たな知見とは。

そうして研究が行われていったわけですが、実際にはどのように分析されていったのでしょうか。

和泉簡潔に前提からお話しすると、今回の「社内放送局」というのは、PMI(Post Merger Integration/企業の合併や買収後の統合プロセス)における組織開発の施策にあたるんです。少し話は逸れますが、PMI施策として、同時期には平行して理念開発のプロジェクトなども進んでいまして、その内容は以前にayatoriでもご紹介しているので、もしご興味ある方はそちらもお読みいただけるとよいかもしれません。
そのようにリモートワーク環境におけるPMI施策として組織デザインや組織開発を多様に行っていく中で、異なる組織文化を統合するには、やはり何かしらの工夫が必要だったんですね。そこで僕たちが実践した放送局の取り組みを、ひとつの「合併事例」として取り上げて分析しました。放送中は、社内で日常的に使用しているSlackで視聴者用のスレッドを立てているんですよ。なので、その発言数や視聴者数の可視化をしたり、社内で定性的なアンケートをとり、その回答から分析を行っていきました。

その分析結果が、学会で発表されたわけですね。

和泉分析にあたってのリサーチクエスチョンは2つあり、1つ目は「社内放送局は、DONGURIとミミクリデザインのコロナ禍における合併の文化統合にどのような貢献を果たしたのか?」、2つ目は「この事例から、リモート下のM&Aが行われた際の文化統合に活かされる『コツ』はどのようなものが挙げられるのか?」でした。
詳細は次の掲載スライドからご覧いただければと思いますが、放送局の施策によって社員の「個人」性に着目した情報が持続的に発信を続けるプラットフォームが生成されていたのではないかと示唆されました。そして番組を視聴することで、登場する社員に「勝手に親近感」を抱ける場が生成されていると解釈できたんですね。この2つの要素が、2社の文化統合を支えていたと考察を加えました。

和泉「コツ」については、文化統合という目的を持ちすぎず、「人を知るためのプラットフォーム」の役割に留めることや、合併前の両社の価値観や組織の人間を理解が深い人物を施策の中心に据えること、社員の要求に迎合しすぎず、 企画者の衝動を反映できる企画体制にすることなどが重要であると主張しました。放送をリアルタイムで視聴していなかった、つまりその「場」にいなかった人にも共有することも重要なのですが、この方法論はまだ確立されていないので、今後の課題でもありますね。

実践を形式化する研究活動のプロセスを通じての気づきや学びを教えてください。

和泉一番の学びは、何のために研究をするのかという意味づけの重要性です。研究のための研究ではなく、自分たちや社会の実践をより良くしていくためにあるんだ、ということを押さえておくことが大事だと感じました。研究を成立させるために情報収集するというのではなく、先の実践を見据えたときにどういう情報が必要になりそうかとか、データをまとめる中で他に得られる知見はないかとか、幅広い視点が必要だと思いました。

西村研究の過程で今回のMIMIGURI Channelの実践の何が重要なポイントだったのかをケーススタディとして分析できたことで、結果的に日々の実践に生かしていく知見が獲得されたのではと思います。発表資料の記述には客観性も必要なので、アンケート調査やヒアリング、また視聴率調査などから得られたデータを基に確かに言えることをとりまとめて伝えるというのは重要なスタンスでした。そのスタンスを守ることによってMIMIGURI channelの今後の取り組みにも繋がる上に、組織開発や組織デザイン研究へも有益な一次資料を提供するという研究価値が果たされたのではないかと考えます。

チームメンバーには、何か変化や影響はありましたか?

西村研究プロセスを通して、僕からの見え方にはなるんですけど、和泉さんが専門家としての自覚というか、自分はこの専門性があります、っていう自信が持てたような感じがして、それはなんか嬉しかったですね。学会で発表する和泉さんの姿も、当然ですけど発表資料をまとめあげる工程を経ているから、すごく自分の中で整理されてる感じがして。この知見に関しては俺に任せとけ、みたいな。それが僕の中では結構一番大きい成果なんじゃないかなと思っています。

和泉僕はコンサルティング部門に所属していた頃は、ファシリテーションや対話の専門家として活動していました。ですが組織人事部に移動した際、また初学者に戻り一から再スタートした感覚があったんです。そんな中、今回の学会発表を通じて、自身の専門家としてのアイデンティティをこれまでよりも拡張させることができた気がしています。西村さん始め、関係者の皆さんには本当に感謝しています。

熊本分析する上でメンバーからの声をもらう必要があったのですが、それすら「MIMIGURI Channelの特別番組」という企画にしたんですよね。
メンバー数人を番組ゲストという形で呼んで生の声を聞いたり、視聴してくれたメンバーもSlackで続々とコメントをくれたり。それ以外にも用意したアンケートへ意見をもらったのですが、想像以上にMIMIGURI channelがみんなの生活に馴染んでいて、インフラになりつつあるっていうところがデータとして取得できたんです。みんなから集まった意見を寄せ書きみたいに並べていると、なんかジーンとくるものがあって。良い効果は出ているという感触はあったけれど、リアルに確信が持てましたし、相手にちゃんと気持ちが伝わってる感じがしてすごく嬉しかったんです。そういう研究過程で感じた「人と人が繋がった記録」みたいなものが、和泉さんをMIMIGURI channel専任プロデューサーとして、研究発表者として、更に気合いを入れさせるものになったんだろうな、とも思いましたし。

戸田自分達のやっていることがちゃんと組織に届いているのか、運営側の私達がきっと一番知りたかったことなんだろうな、とも思いました。なんでもっと早く聞かなかったんだろうなと(笑)。
和泉さんの学会でのプレゼンテーションも、素晴らしかったなと私は感動しちゃって。このプロジェクトを始めるときは、まさか和泉さんがここまで冷静にかつ情熱的に学術研究の作法を得て掘り進めていけるようになるとは思っていなかったので。メンバーの成長過程を間近で見ることができたのも面白かったです。

実践の暗黙知を編み直し、社会へ還元したい。

今回の学会発表というひとつの大きなアウトプットを経て、今後のMIMIGURI channelはどのように変化していきそうですか?

西村カルチャー統合や組織開発の領域ではまだ道半ばかもしれないですけれど、ここまでの会話の中でもかなり言語化されてきてるのを実感しますし、大きな起点ができてまたさらに面白くなるんじゃないかなと思いますね。

熊本一旦発表は行いましたけれど、やっぱりそれだけで終わってしまっては意味がないので、アンケートでいただいた貴重な意見を元に、細やかなアップデートもどんどんしていきたいです。ちょうど今、MIMIGURIは企業として組織としても、どんどんフェーズが変化していく渦中にあるんですよね。なので、その時々の状況を踏まえながら、社内放送局自体の在り方もチューニングが必要になるかなとは思っています。関わる人や番組が増えていったり、色んなケーススタディを経て、MIMIGURIにとって、なくてはならないインフラであり続けることを期待しています。

和泉そうですね、私も今回のケースを手始めに、実践と研究の往復を継続的にやっていきたいと思っています。各施策に対してちゃんとリサーチクエスチョンを立てた上で、仮説・実践・リフレクションのサイクルを短期と中期でバランスよく回していきたいと思っています。

戸田MIMIGURIメンバーは、それぞれ個性的で多様な背景を持っているので、その多様性を活かした研究や新たな知には、個人的にもワクワクしています。MIMIGURIの中にはまだまだ、暗黙知がたくさんあると思います。アカデミックな研究領域とビジネスの実践領域が溶け合うような活動から新たな知がどんどん生まれていくことがとても楽しみです。

今回の研究活動は、今後の組織人事部門/研究開発部門の活動や、MIMIGURI社内・社外にどんな影響や変化がありそうですか。(研究機関でもあるMIMIGURIの活動として)

西村僕としては、企業の研究開発部門のロールモデルのような動きができればいいなと思っています。個人とチーム、組織の創造性ひいては社会の創造性について、具体的にどう耕していけばいいのか、どう循環させていけばいいのか、グッドプラクティスは多くあっても「とりあえずこういうものをやってみました」という暗黙知として埋もれている知見が多そうなので。それをちゃんと企業の研究開発部門が分析に携わり、日々の実践を改善していくロールモデルを提示していきたいという思いがあります。一緒に研究に取り組める企業さんがもっと増えたら良いなと思います。

和泉リモート化が進んで、社内ラジオや社内テレビをはじめ、色々なことを新たに試している組織は増えていると思うんです。ですがそれらをただの具体事例で終わらせず、形式知化した上で汎用的に活用できるデザイン論として編み直し、世の中に広く還元していくという役割を率先して担っていきたいです。

  • Writer

    MIMIGURI編集部