組織開発を日常のルーティンに組み込む重要性(後編)

Guest :
安斎勇樹代表取締役Co-CEO
  • 安斎勇樹

    代表取締役Co-CEO

  • 1985年生まれ。東京都出身。東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。研究と実践を架橋させながら、人と組織の創造性を高めるファシリテーションの方法論について研究している。組織イノベーションの知を耕すウェブメディア「CULTIBASE」編集長を務める。主な著書に『問いのデザイン-創造的対話のファシリテーション』(共著・学芸出版社)『リサーチ・ドリブン・イノベーション-「問い」を起点にアイデアを探究する』(共著・翔泳社)『ワークショップデザイン論-創ることで学ぶ』(共著・慶応義塾大学出版会)『協創の場のデザイン-ワークショップで企業と地域が変わる』(藝術学舎)がある。

前編あらすじ

安斎・ミナベが、2人の出会いからMIMIGURIとして合併した今に至るまで、経営統合プロセスを組織文化の観点から振り返っていく。資本業務提携に向けてミドルマネジメントの融和がうまくいきはじめた矢先に訪れたコロナウイルスの感染拡大。3年ほどかける予定だった経営統合プロセスのスピードを上げざるを得ず、「葛藤の連続だった」と安斎・ミナベは語った。

コロナ不安を乗り越えて始まった、合併への対話

  • 「なんとか生きていくことはできそうだ」と思いはじめた2020年9月ごろ。感染拡大が甚だしかった3月ごろには社内に生まれていた不安も落ち着き、経営者自身が現場に入り込んでリードしていく必要性は薄まった。
  • 同時に、合併への対話が始まった。当初はホールディングス化を想定していた安斎・ミナベだったが、すでにお互いのケイパビリティへの理解が醸成されつつあったミドルマネージャー陣が「むしろ合併してしまったほうがいい」と主張。対話的に社名開発などを進めていくことになる。
  • とはいえ、お互いのケイパビリティへの理解は容易ではなかった。表面的な「できること」は理解していても、その礎となっている思想が理解できていなかったからだ。しかし、試行錯誤のうちに「ミドルマネージャー全員で話して解決する」という成功体験が生まれてきた。
  • また、いまだ感染拡大がおさまらない時期でも合併への探索を続けられたのは、toCサービスであるCULTIBASEの成長があったからでもある。おうち時間の増加に伴い、CULTIBASEは会員数を一気に伸ばすことになった。
  • 「今の可能性をうまく活かせるにはどうすればいいか」という探索の軸と、「探索を止めるサクセストラップを回避し続けるにはどうすればいいか」という探索を止めないための軸。これら2つが掛け合わさって、危機的状況かでも統合プロセスの探索を止めずにいられたのだ。


MIMIGURI誕生から今後へ

  • 2021年3月、ついにDONGURIとMimicry Designは合併し、MIMIGURIが誕生する。よく「MIMIGURIが生まれてからPMIプロセスに着手した」と思われているが、これまで話したことから分かるように、実際のところ順番は逆だったのだ。この時期には「2社をどう融け合わせるか」ではなく「MIMIGURIとして何を大切にしていくか」という意識が高まっていた。
  • 組織開発に重点を置き、1ヶ月に1回、全社会として一日中ワークショップをする日を設けているMIMIGURI。長期的なルーティンプロセスのなかにあらかじめ組織開発プロセスを組み込んでおり、行事化している。
  • スタートアップでは「いかにサイクルを作るか」が大切だとされることも多いが、MIMIGURIの試みはそれを組織文化のレベルから行なっていることだとも言える。
  • また、この時期は経営者である安斎・ミナベが新たな葛藤に直面していたタイミングでもある。採用の加速により、社内には、旧DONGURIのメンバーと旧Mimicry Designのメンバーだけではなく、「MIMIGURIにジョインしたメンバー」という多様性が生まれていた。
  • 例えば、合併前には「デザインをどう活かすか」という問いを念頭に全社スピーチをすることが多かったというミナベ。しかし、メンバーの多様化によって、その種々様々な関心を包括できるような問いをもってスピーチできるように態度を変容させた。
  • 振り返ってみると「経営者がまず葛藤、探索して切り拓いた道を、権限委譲していく」というサイクルは一貫している。現場の権限委譲を進めてきたこれまで。徐々に経営のリーダーシップを委譲できるイメージもついてきており、経営幹部層の育成にも力を入れていきたい。