社内放送局「MIMIGURI ch」ビジュアル・アイデンティティ開発の裏側

Guest :
和泉裕之HR
夏川真里奈ファシリテーター/アートエデュケーター
五味利浩デザイナー
  • 和泉裕之

    HR

  • 夏川真里奈

    ファシリテーター/アートエデュケーター

  • 五味利浩

    デザイナー

  • 日本赤十字看護大学卒業。在学時より対話やワークショップに関心を持ち、看護師・保健師の国家資格取得後、フリーランスのファシリテーターとして独立。医療職対象の対話型ワークショップを病院や薬局などで多数実践後、株式会社ミミクリデザインの立ち上げに参画。コンサルティング事業部のマネージャーとして、少人数~数万人規模の組織開発・人材開発プロジェクトに従事。現在は株式会社MIMIGURIの組織人事として、社内放送局「MIMIGURI ch」の総合プロデューサーを担当。

  • 幼少の頃より、特殊な創造性教育を受けて育つ。東京学芸大学教育学部初等教育教員養成課程美術選修卒。東京学芸大学大学院教育学研究科修了。研究領域は主体性・創造性教育。幼・小・中(美術)・高(美術・工芸)の教員免許を保有し、アートエデュケーターとして、芸術教育を通した創造力を育むワークショップの実践を多数行う。「創造性の土壌を耕す」ことを軸に、教育者、研究者、表現者を往還させたアートグラフィーな働き方を探究している。

  • 東京造形大学デザイン学科グラフィックデザイン専攻卒。卒業後代表ミナベトモミとデザインファーム株式会社DONGURIを創業。VIデザインを基軸に、CI、WEB、商材パッケージなど幅広い表現領域でブランディングに携わる。

  • MIMIGURIのPodcast「ミグキャス」の番組『MIMIGURIの談話室』。この番組では、日々の活動で得た知見を汎用化すべく、メンバー同士の生煮えの対話をお送りする。
  • 今回は、和泉裕之、夏川真里奈、五味利浩の3名が、社内放送局「MIMIGURI ch」のVI(ビジュアル・アイデンティティ)開発のプロセスについてお話しする。

「みんなで作る放送局」を体現するために

  • MIMIGURIの社内放送局「MIMIGURI ch」では番組ごとにロゴなどのクリエイティブがあるが、放送を始めておよそ10ヶ月間、「放送局」として全体を包括するVIが存在せず、統一感がない状態が続いていた。
  • 「MIMIGURI ch」を運営する和泉は、「みんなで作る社内放送局」というコンセプトを体現するため、各自が「自分がVIを作っている」と思えるような共創をしていきたいと考え、デザイナーの五味、ファシリテーターの夏川に相談をした。
  • 結果として、デザイナーの中園も加わり、30体のキャラクターがひしめく賑やかなVIが完成した。このキャラクターたちはプロジェクトメンバーだけで考えたものでなく、ましてキャラクターが誕生することも予想していなかったと3名は振り返る。

ブランドの現在と未来を表現する、擬人化という手法

  • はじめの段階では、全社に向けた「MIMIGURI ch」の印象や魅力を問うアンケートをもとに、現在と未来について考える対話をプロジェクトメンバーで行なった。
  • 対話を通じて皆の素直な想いに触発された五味は、VIの方向性を擬人化によってまとめようと考えた。擬人化すると、今後どう成長していくか、どうするとすくすく育つのか、どう愛着をもてるのか、わかりやすく共通認識をとれるメリットがある。
  • 擬人化のポイントとして、良いところだけでなく、欠点がブランドの核となることも多いと五味は語る。愛すべき欠点があることで、より愛着がもてたり、ブランドに深みが出ることもあるのだ。

擬人化した「MIMIGURI chさん」の旅路を支える「4次元道具」を考える

  • 全社向けのワークショップは、「おはようMIMIGURI」という全社朝会の番組内、15分で実施した。夏川は、全員が楽しめて、VI開発に繋がり、各自が「自分が関わった」と思えるワークショップを作ることに頭をひねったが、楽しい経験だった振り返る。
  • ワークショップでは、「MIMIGURI chさん」の旅路を支える「4次元道具」を全員で考えた。
  • どんな職種でも、全員が同じスタートを切り、同じ歩幅で楽しめるようにすることを大切に設計したと夏川。特に今回のようなワークだと、絵を描くことに苦手意識を感じる人もいるが、抽象的なアウトプットも許容したり、デフォルトの図形機能を活用したりと、できるだけハードルを低く、一方でやりこみ要素も残した難易度に調節した。
  • 時間が15分と限られていたことも奏功し、作る力に差が出ずに、共通の目線で楽しめるフレームを用意することができた。

クリエイティブの余白がうむ触発

  • 遊び心にあふれたワークショップの場自体が「MIMIGURI ch」を体現していたと考えた五味は、「4次元道具」をそのままキャラクターとしてビジュアル化することにした。当初キャラクターを作ることは全く考えておらず、「本当にすごい触発をワークショップから受けた結果になった」と当時を振り返る。
  • 個々のキャラクターデザインは、ガイドラインのみ相談し、あとはデザイナーの中園を信頼して自由に制作してもらった。
  • こうした余白をもたせた進め方だったからこそ、触発し合いながらVI開発を進めることができたのではないかと和泉。これに五味は、余白があるということは、伸び代が十分にあるということでもあると重ねる。キャラクターが誕生した後に、社内で遊んでもらえているのも、作ったかいがあったと話した。
  • 夏川によれば、全社の有志によるワークにおいて、コラボレーションの探索のために活用されているという。例えば、社員1人ひとりのポテンシャルを最大限活かしたプロジェクトの実現を目的に実施されたワークでは、理想とする姿に成長するために、自分をを助けてくれるキャラクターを3体選んでみるといった活用のされ方をしている。
  • それぞれのキャラクターには、4次元道具をつくるワークを通して、MIMIGURIの理想の組織のあり方や想いが存在するのだ。

組織と共に成長するVIへ

  • 今回のプロジェクトに対して和泉は、MIMIGURIのミッションである「創造性の土壌を耕す」を体現していたのではないかと振り返る。
  • 「MIMIGURI ch」の取り組み自体が、社員の1人ひとりや、チーム、組織のポテンシャルをより引き出すことを目指しているが、今回は番組コンテンツや言葉ではなく、クリエイティブのチカラを起点に創造性がより耕されていた実感があったと。
  • 今後も「MIMIGURI ch」を通じて「創造性の土壌を耕す」取り組みを続けたいと和泉。これに対して五味は、企業の成長とともに別の視点が生まれ、必要な「4次元道具」も変化するのではないかと話す。リブランディングでは、それまでのVIをリセットすることも多いが、フェーズに合わせてキャラクターが増えたり変化したりしても面白いのではないかと、3人は今後の展望を語った。