ブランドを経営資産にするためのデザインの営み

Guest :
巣内雄平アートディレクター/グラフィックデザイナー
吉田直記デザイナー
五味利浩デザイナー
  • 巣内雄平

    アートディレクター/グラフィックデザイナー

  • 吉田直記

    デザイナー

  • 五味利浩

    デザイナー

  • 多摩美術大学卒業後、複数社を経て2017年、独立。ブランディング、VI、グラフィックを主戦場に、ディレクション領域からアウトプット領域まで一気通貫した支援を得意とする。 経営層や担当者と膝を交えた丁寧な壁打ちとともに、上流からブランディングに携わる。

  • 東京造形大学デザイン学科グラフィックデザイン専攻卒業後、2014年にDONGURIへ入社。 視覚表現のスペシャリストとして、web/プロダクト/グラフィックまで、表現探求に深くコミットしたクリエイティブをマネジメントしている。

  • 東京造形大学デザイン学科グラフィックデザイン専攻卒。卒業後代表ミナベトモミとデザインファーム株式会社DONGURIを創業。VIデザインを基軸に、CI、WEB、商材パッケージなど幅広い表現領域でブランディングに携わる。

  • MIMIGURIのPodcast「ミグキャス」の番組『MIMIGURIの談話室』。この番組では、日々の活動で得た知見を汎用化すべく、生煮えの対話をお送りする。
  • 今回はゲストに、アートディレクター/グラフィックデザイナーの巣内雄平さんをお迎えし、MIMIGURIの吉田直記、五味利浩が、ブランドを経営資産にするためのデザインの営みについてお話しする。

経営者の問いを起点にブランディングが始まる

  • 巣内さんが、デザイナーとして企業に伴走しながらブランディングを進める際に気を付けているポイントは4つあり、最初のポイントに「経営者の問いを起点にすること」を挙げた。
  • 経営者は、達成したい目標を持っており、目標達成に高い熱量がある。熱の根本にあるのは経営者の問いであり、問いを起点にビジョンが策定され、ブランディングが始まる。巣内さんは、ブランディングは経営者の問いを捉えて、どう編集し見せていくかの手法と考える。
  • 経営者の持つ問いは変化するからこそ、経営者と共に問いをアップデートしたり、ブランドオーナーとなる部署やステークホルダーをエンパワーメントすることが、デザイナーのあるべき関わり方ではないかと五味。
  • また、経営者が問いを自覚していない場合もある。その場合は、デザイナーが問いの根源となる想いを掘り起こしたり、問いを持たせることから始めたりして、経営者の熱量や内的動機をブランドと紐づけるようにしている。

クライアントと二人三脚でブランドを育てるためコツ

  • ブランディングの知見が浅いクライアントとのプロジェクトでは、スコープの整理から始めて、時には最初から完璧なブランドツールを作らないことも提案する。重要なのは、クライアントが運用できる成果物を提供することであり、定期的に話す関係性を維持しながら、その時々で必要な成果物を作れると、お互いにとって無理のないプロジェクトになる。
  • 五味は、デザイナーがクライアントの話を聞いて、考え方を整理しながら、一緒にブランディングの必要性を考える二人三脚の体制が理想的と言う。

ブランドのフィット感と差異化の両方を抑える

  • 巣内さんが、2つ目に挙げたポイントは「フィット感」。ブランドが、経営者や企業に所属する人々の想いとフィットすることが重要になる。
  • デザイナーが正しいと考えたブランドを提案しても、クライアントが腹落ちしないことがある。フィット感を醸成するには、デザイナーが経営者や企業に所属する人々がブランドと向き合うことに寄り添い、提案を腹落ちできる状態まで対話を重ねることが大切である。
  • 3つ目に挙げたのは、他のブランドと異なることを示す「差異化」。
  • クライアントの想いだけでブランドを作ると、他者が見た時や社会に置かれた時に、想いが伝わりづらいブランドになりがちである。デザイナーは、ブランドとユーザーの接点をデザインする立場だからこそ、他とは違うユニークなブランドであることにも責任を持たなければならない。

デザイナーがブランディングの初期から関わる意義

  • デザイナーがブランディングの初期フェーズから携わるメリットは、ブランドへの解像度が高い状態で、ブランドを活用したコミュニケーション施策や、コピーライティングを実行できることだと、巣内さん。
  • クライアントにとっても、ここまで挙げた3つのポイント「経営者の問い」「フィット感」「差異化」を押さえるブランドになるメリットがある。
  • ブランドの要件定義が終わってからアサインされると、デザイナーは、コミュニケーションの改善点を見つけて直したり、ブランドと経営者の問いなどの間に生じた矛盾に気付いて解消することになる。こうしたステップを踏まないためにも、早い段階からデザイナーが関わる意義はある。
  • 吉田は、デザイナーは矛盾や足りない何かに気付く能力に長けていると言う。経営者やコピーライターのような専門性を持ったメンバーが集まるブランディングのプロジェクトにデザイナーが加わることで、気付きの能力が補完され、より強度のあるプロジェクトになる。

ブランドを経営資産とし、中長期のゴールを見据える

  • 巣内さんは、最後のポイントとして、どれくらいの期間でブランドゴールを達成したいか「中長期の指標を設定すること」を挙げた。役職を問わず企業の中の人たちが、中長期のブランドゴールを共通認識として持ちながら、経営や事業を前進できるかが難しくもあり、非常に重要だと言う。
  • 五味は、中長期の時間軸を見据えると、経営資産となるブランドやその根底にあるビジョンを、どう社内に浸透させて、みんなで一緒に作っていくものと思わせるかも大切と考える。ブランドやビジョンは企業のトップ層が決めるからこそ、メンバーに決定事項だけを伝えると反発を受けてしまう。だからこそ、ブランドを策定する立場にいる人が、メンバーの意見に興味を持っていることを示す必要がある。
  • その1つの手段として社内ラジオが有効ではないかと、巣内さん。実際に、クライアントとブランドを作る過程で、メンバーにラジオの形式で作る立場の人たちの気持ちを知ってもらい、フィードバックを受けて進めることで、メンバーにもプロセスを体験させる事例がある。
  • 今後はこれらをどう実行しているかの手段についても話してきたい。