COO原申による"多角化経営の探究"とは

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ミナベトモミCo-CEO
原 申執行役員COO
  • ミナベトモミ

    Co-CEO

  • 原 申

    執行役員COO

  • 早稲田大学第一文学部 ロシア語ロシア文化専修卒。広告ディレクター&デザイナー、家電メーカーPM&GUIデザイナーを経て、デザインファーム株式会社DONGURIを創業。その後に株式会社ミミクリデザインと経営統合し、株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEOに就任。デザインキャリアを土台にしながら、組織/経営コンサルティング領域を専門とし、主にTech系メガ/ミドルベンチャーの構造設計・制度開発を手がける。特に人数規模500名超えのフェーズにおける、経営執行分離・マトリックス型の構造設計と、それらを駆動させるHR制度運用を用いた、経営アジリティを高める方法論が得意。

  • 2005年マクロミル入社。 営業から営業企画、営業部長、人事責任者、PMI、管理本部長、新規事業開発室長など複数の部門を統括。 2014年よりグループ執行役員、ニューロマーケティングのCentan代表取締役副社長に就任。 2019年9月に退任し、製造業の受発注プラットフォームを展開するスタートアップCADDiにジョイン。ビジネスオペレーションリード、営業企画の立ち上げ等を経て、2021年よりHead of HR。 その後2年弱で約80名の組織を650名規模まで拡大させ事業のブリッツスケーリングを実現。2023年4月より現職。

  • MIMIGURIのPodcast「ミグキャス」の番組『MIMIGURIの談話室』。この番組では、日々の活動で得た知見を汎用化すべく、メンバー同士の生煮えの対話をお送りする。
  • 今回は、ミナベトモミと原申の2名が「COO原申による"多角化経営の探究"とは」についてお話しする。

組織の拡大とともに職種やポジションが変化

  • 原申が4月6日にMIMIGURIのCOOに着任した。原はマーケティングリサーチ会社である株式会社マクロミルにて、セールス、企画、人事責任者、PMI、事業開発などを経験。最終的には、グループ執行役員として新規事業開発やM&Aなど多角化経営を実践し、企業価値向上に奔走してきた。ベンチャー企業だったマクロミルが大企業へと変貌していく中で、組織規模拡大とそれに伴う自身のポジション変化と連動し視座が上がっていった。
  • ミナベは、原のキャリアが「グレイナーの企業成長モデル」とリンクすると話す。グレイナーモデルは、組織のフェーズを5段階に区分けし、段階ごとに組織設計の指針が異なるという理論だ。ミナベは、原が経営の多角化を事業開発・HR・マネジメントなど何かしらの役割で担ってきたことから、原自身の思考が多角化されているのではないか、と話した。

スピードとビジネスモデルの異なる企業での経験

  • 原は、40歳という節目と子どもが生まれたことをきっかけに、主語が自分から社会になり、後世により良い社会を残したいと考えるようになった。社会により大きいインパクトを与えたいという想いから、日本の主要産業である製造業に関わるため、2019年10月に製造業の受発注プラットフォームを運営するキャディ株式会社に入社。ビジネスサイドのオペレーションリードや営業企画の立ち上げを経てHRヘッドとして営業企画の立ち上げなどを行い、その間に社員数は約80名から約650名までに拡大した。
  • キャディでは日本でも有数と感じるハイタレントが、心からミッション実現に向き合い、モノづくり産業のポテンシャルを解放することに全力でコミットしていた。そのような環境での3年強は、原の価値観を大きく変え、マクロミルにいた14年感に匹敵する密度だったという。
  • 原はマクロミルで体得した暗黙知や成功原則を持っていたものの、キャディでそのまま適用できたわけではなく、アンラーニングの連続だったと話す。その理由として、事業と組織が拡大するスピードとビジネスモデルの違いを挙げた。マクロミルはインターネット情報産業であるのに対し、キャディは金属加工品を扱う製造業。バリューチェーンが長いし、実際のモノが絡むことで物流拠点のマネジメント等情報産業にはない変数を複数考慮してビジネスを設計/推進していく必要があった。

多角化の再現性を高めるため経営陣に必要なこと

  • 原は、マクロミルで経営の多角化の難しさを感じたことからMIMIGURIで多角化経営の再現性を探求していきたいと話す。多角化が難しい点として、事業特有の時間軸を踏まえた意思決定が難しい点を挙げた。
  • 〇〇年以内に〇〇億の利益が出なかったら撤退などの厳密な基準を設けてそれを満たさない場合は事業を必ずクローズするなど機械的な意思決定することは、認知限界の観点で合理的であると思うものの、最適な意思決定基準は事業の特性(投資回収が短期でできるもの/中長期で大花開く性質のもの等)によって異なるものだと原は話す。
  • できる限り最適な意思決定をする為には、経営ボードの中で市場観をある程度揃え、それに基づいた精度の高い議論と意思決定・事業ポートフォリオマネジメントができるようにする環境を創ることが肝要である。
  • ミナベも、多角化は理論としてあるものの実践知として提供はされていない、そのために失敗とラーニングを繰り返していくしかなく、組織がスケールしにくくなると話す。
  • 原は多角化経営を成功させるためには、市場観を揃えることに加えて、ボードメンバーのアンラーニングが必要だと考えている。企業規模が大きくなるほど、経営会議は発言が減り、セクショナリズムにより話がまとまらなくなりがち。本来経営会議は積極的な創発の場であるべきで、その為には固定化した認識や価値観をアンラーニングする必要がある。
  • 経営陣のアンラーニングと関連して、ミナベは「ナレッジマネジメントリーダーシップ」という概念を挙げた。企業が拡大しても、経営陣が新しい知の探索や探求を積極的に行っていると、組織内でも同様に探求や探索が行われ、イノベーションが起きている可能性が高いという概念だ。

多角化におけるカルチャーを形成する難しさ

  • 原は多角化の難しさとしてカルチャーについても語った。マクロミルで業界第二位の企業を買収した際に、カルチャーのコアを維持しつつ新しく形成し状況に合わせて変化していく塩梅に課題を感じたそうだ。
  • カルチャーはなんとなく重要だと理解されながらも壊れたり不全を起こしたりしてから、重要性に気づくことが多い。原は、カルチャーを定義し多角化の際に統合する手段を解き明かすことが、企業や社会に与えるインパクトが大きく「より良い社会を後世に残す」ことにつながるのではないかと考えている。