“使われ、問われる”理念の開発。合併から1年で、MIMIGURIはいかに理念統合をやり遂げたか。

  • 濱脇賢一

    コンサルタント

  • 根本紘利

    プロジェクトマネージャー

  • 吉野拓人

    デザイナー

  • 渡邉貴大

    ファシリテーター

  • 筑波大学理工学数学類卒。大学在学中よりコンサルタントとして独立し、創業支援や事業計画の立案、広告戦略立案や地域ブランディングに従事する。また、長期でのBPRによる業務改善、中期での経営企画部・営業部へのハンズオンコンサルティングも経験。2018年より前身であるDONGURIに入社。現在、MIMIGURIにおけるコンサルティング事業の事業長を務め、経営コンサルティングや組織デザイン・ブランド戦略の策定などのプロジェクトオーナーも努め、幅広く企業・組織・事業の成長に伴走する。

  • ECコンサルティング業デザイナー→アパレル小売業Webマスター→在京民放テレビ局番組Webサイト制作・運用→地域商社プロジェクトマネージャー→Slerプロデューサーを経てMIMIGURI(旧DONGURI)に入社。 クライアントワークの開発プロジェクトにおける設計や進行に加え、組織開発・推進のプロジェクトに従事し、自社ではプロジェクトマネジメントの体系化と組織浸透を目指し、全社プロジェクト品質の底上げやアジャイル推進を進めている。

  • 新卒でシャープ株式会社に入社し、裸眼3D液晶ディスプレイの研究開発に約5年従事。スマートフォンやゲーム・車載用途の開発に携わる。ものづくり領域における「デザイン」への意識向上を目的のひとつとしてデザイナーへ転身。AD/フロントエンドエンジニアを経て、現在はクリエイティブ組織のオーナーとして組織開発・組織デザイン・ファシリテーションマネジメントを実践しながら、CG技術活用の探究に勤しんでいる。

  • 早稲田大学商学部卒業。規模/業態の異なる複数の組織において、人事やコンサルタントとして業務に従事。チェンジ・エージェントとして組織変革のファシリテーションを実践してきた。MIMIGURIでは個人と組織が自らの「story writer」となり、自分や自分たちの物語を紡ぐ機会を演出する組織・事業開発、イノベーションプロジェクトのPMとファシリテーションを担当している。

2021年3月に合併したMIMIGURIは、同じく2021年内に、新たなミッションとバリューを開発しました。

「Cultivate the Creativity」──「人材、組織、事業、経営のあらゆる専門知を編み直すことで、組織と社会の創造性の土壌を耕す」。

この理念は、MIMIGURIに所属するメンバー全員で「MIMIGURIらしさ」を問い直し、「共感」と「わからなさ」の間で揺れ動きながら、様々な対話を経て辿り着いた言葉です。

ミミクリデザインとDONGURIという異なる2つの企業が、1年間の横断経営を経て合併し、その後の1年間でひとつの新しい理念を生み出す。つまりこのプロジェクトは、PMI(Post Merger Integration/企業の合併や買収後の統合プロセス)の一環でもあったのです。

決して容易ではないはずのその歩みを、MIMIGURIは全社メンバー、当時の総勢49名で「らしさ」を問い直すことでプレイフルにやり遂げました。

今回は、この理念開発プロジェクトの企画と運営を担った、MIMIGURIの社内事務局メンバーにインタビュー。「今や日常的に業務の場で使われ、新たな問いを生み出し続けてる」という理念がどのように生み出されたのか、その裏側を取材しました。

異なる職能の掛け合わせが、事業のケイパビリティを拡大する。

理念開発のお話をお聞きする前に、改めて合併後の歩みについて所感をお聞きしたく思います。MIMIGURIの記念すべき創業第1期を振り返って、率直にどう思いますか?

根本「地に足を着けて動けた」感覚がありますね。MIMIGURIが合併する前、2社で横断経営した1年間は、ある意味で“助走期間”でもあったと思うんです。その期間を経て、これからお話しする理念開発も皆で進めることで、「一つになれたな」という感覚を覚えますね。

濱脇助走期間があったからこそ、撒いた種が芽吹いて花が咲いた、結実したみたいな感覚があります。「全事業のケイパビリティがこんなに広がるのか」と、合併後の成果に驚いたところもありました。なぜかというと、事業展開の領域が予想を大きく超えてきているんですよ。

根本合併直前に作った全社向けの資料を読み返したときに、過去の自分に対して「視座が低いな」って思っちゃいましたからね(笑)。濱脇が言うように、当時の目標値が現状よりもずっと低くて。1年を経て、案件規模や数値の目標を実態が大きく上回っているのは本当にありがたいことですし、「こんなことってあるんだなあ」みたいな気持ちで見てしまいます。

渡邉組織文化の面でも変わりましたよね。初めは「合併前の2社、DONGURIとミミクリデザインを越えていこう」「2社を融け合わそう」「異なる職能を繋いでいこう」みたいな意識があったと思うんです。でも下期に入ったくらいから、それも当たり前になり、2社を分けて考えることもなくなりました。職能を掛け合わせた新たな取り組みも生まれてきたので、それが案件規模の拡大に繋がったのだろうなと思います。1つ新しい事例が生まれるとそれが起点になって、次の案件はそれをベンチマークとしながらもどんどん膨らんでいく。ケイパビリティが連鎖的に拡大していくダイナミズムを目の当たりにしましたね。

濱脇そうなっていくように、横断経営の時から意図的に仕込んでいたところもありましたよね。

それは先ほどのお話にあった“助走期間”であったと思うのですが、例えばどんな仕込みだったんでしょうか。

濱脇「仕込み」と言うとなんだか計算高い印象を与えるかもしれないんですが(笑)、「こうなったら絶対に楽しいじゃん!」みたいな、ワクワクする気持ちから動いていたのが実際でしたね。
僕の場合は、旧DONGURIのコンサルタント兼マネージャーとして、合併する可能性を高めに見積もって準備をしていたんです。同じことを考えていた旧ミミクリデザインのマネージャーと一緒に、「2つの組織を横断する案件を増やしていこう」と率先して事例を作っていったりとか。旧DONGURIは事業領域としてコンサルティングとクリエイティブを、旧ミミクリデザインはファシリテーションという3つの異なる柱を有している状態なので、掛け合わさった時のケイパビリティがどれだけ大きく広がるかも想像に難くない。そういう話を、横断経営の時からよくメンバーに話したりしていましたね。

渡邉結果として、旧ミミクリデザインと旧DONGURIが垣根なく一緒に取り組んでいる、っていう状況の方が先に生まれていたんですよね。合併したばかりの段階でそういうプロジェクトはいくつも存在していたので。理論や理屈を超えて融け合えたのは、それが大きかったように思えます。

吉野本来なら3年かけて組織変容するようなところを1年でやっていた、みたいな感覚はすごくあって。やはり濃密だったなと思います。
同じプロジェクトに取り組む中で、2つの異なる組織のメンバー同士が自然と仲良くなり始めて。その後、理念開発のプロセスの中で完全に融け合ったな、というのを感じています。

全社を横断・縦断する理念開発。全体像から整理する、対話設計の勘所。

合併にあたっての社名開発から理念開発までは、プロジェクトとしては別々でありながらも、地続きにつながる営みだったかと思います。2020年9月に始まった新社名開発は、ayatoriデザインビジネスマガジンdesigningのインタビューでも全社的な対話を重ねたプロセスだったと語られています。2021年3月の合併と新社名発表を経て、2021年7月から理念開発が始まりました。

濱脇理念開発の中で良い機会だったなと思うのは、お互いの会社のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を棚卸ししたことですね。これまで大事にしてきたものを、組織と個人の両方の観点で対話していったんです。
「旧ミミクリデザインが使ってた“衝動”ってそういう意味だったんだ」「旧DONGURIが使ってた“プレイフル”って、いい言葉だね」みたいな。社名開発の時にも同様のプロセスはあったものの、より深いところまで問い直しや理解が進んだ機会だったなと思います。

そして新しいミッション「Cultivate the Creativity」とバリュー「知を開いて、巡らせ、結び合わせる。」が、2021年9月に決定しました。旧ミミクリデザインを知る人の中には、同社の当時のミッション「創造性の土壌を耕す」とも似た印象を抱く人もいるかもしれません。

濱脇このアイデアが出たばかりの頃、「英語になっただけなのでは?」という率直な疑問は、社内でも挙がっていました。でも、もちろんそういった安易な話ではなくて、たくさん対話を重ねた上での結論なんです。

吉野「創造性の土壌を耕す」の意味するところを考えると、言わば植物の根、つまり個人やチームの衝動が焦点だったと思うんです。でも旧DONGURIと一緒になることで、事業まで含めた意味の広がりが生まれたように思っていて。
開発の場でも、デザインストラテジストでありリサーチャーの小田 裕和が「Creativityの意味するものは創造性だけではない」という話題を挙げたんですよね。「創造(する行為)」や「制作物」の意味合いもあり、「創造“性”」という物事の傾向を示す日本語よりも「Creativity」の方が解釈の余地や意味の拡張性があるのではないか、と皆の解釈が広がっていったきっかけでもありました。
ミッションのボディコピーでは耕したその先にある未来、結実するところまで言及しています。なので、過去のミッションと似て聞こえるかもしれませんが、その焦点の対象が拡張されているんです。

渡邉結果だけを見ると「似ている」「どう変わったのか」という過去との比較に意識が行くかもしれないんですが、今回の理念開発は、既存のミッションの意味や解釈を分解して、それをまた統合していく、というプロセスで行われているんです。つまり、過去のミッションを下地として「どう変えるか」の対話をした訳ではなく「私たちらしさ」を改めて純粋に言語化していった末にたどり着いたコンセプトなんです。

開発プロセスについて、もう少し掘り下げてお聞きします。まず、MIMIGURIで月に1回開催されている全体会のうち、7月に理念開発プロジェクトのキックオフが行われました。大まかな流れを整理すると、その7月にCo-CEOによって過去のミッションが解説され、全員で「MIMIGURIらしさ」を分かち合う対話がなされました。その後、コミュニティ(MIMIGURIの事業部内にあるチームの呼称)ごとの対話を経て理念体系の構造が検討され、8月の全体会ではその検討された構造をもとに、今度はコミュニティで作成した理念の原案を全員で分かち合う。そしてその後、最終案の決定はマネージャーに委ねられ、9月の全体会で発表する──という流れだったと思います。

まずは個人を起点に「MIMIGURIらしさ」を語りながら分かち合い、その後にコミュニティと全社での対話が横断的になされていくという設計がされているかと思います。MIMIGURIの場合は、社名開発からそのまま理念開発へと繋がっていく流れがありましたが、設計にあたってはどんなねらいがあったのでしょうか。

濱脇外せないポイントが3つあって、1つ目は対話プロセスを踏襲すること、2つ目は社内外の情報の対称性をとること、3つ目はプロセスのスピード調整です。
順番にお話しますね。1つ目の対話プロセスは、社名開発の段階から“パス”の流れを入念に設計していました。メンバーとコミュニティマネージャー、コミュニティマネージャーと各事業部のマネージャー、そして各事業部のマネージャーとCxO(Chief x Officer)の対話機会……というように、縦と横で全社をくまなく網羅する対話機会を設けているんです。
例えば僕ら事務局で対話して考えた要件があるとして、それをいきなりメンバー個人に伝えるのではなく、まずは必ずマネージャーに展開します。そのパスの流れを、社名開発と理念開発で同一にしていますね。余談ですが、僕ら事務局メンバーも多少の入れ替わりはあるものの、ほぼ同じメンバーで担当しています。
2つ目の情報の対称性は、「社内では盛り上がったけど、いざ社外に展開してみたらなんだか伝わらなかった」というようなことを避けるためですね。市場や社会から見たときに同じ意味や熱量で伝えられるかを常に意識していました。理念開発で用いた対話のMiro(オンラインホワイトボード)でも「その言葉の眼差しは内向きか、外向きか」を検討できるように構成しています。
3つ目のスピードについて。これは、どんなに良いプロセスであったとしても、皆が忙しい時にはあまり気分が乗らないでしょうし、逆にゆっくりすぎても不適切だからです。なので、実際の稼働状況を見ながらペースを調整したり、皆の認知負荷が高くなりすぎないように情報量や粒度の調整をしたりしていました。
これには葛藤もあって。実は、最初の設計では合併からの1年間でミッションとバリュー、クレドの3つ全てを作るプランだったんですよ。ですが、状況を見て「まずはミッションとバリューで一旦ストップして、今回はクレドを作らない」という意思決定をしました。

“誤読”の余地が、組織のアクションに多様性を生み出す。

このプロセスは、PMIであるとも言えると思います。MIMIGURIの社員数は約50名と、組織として決して小さくはない規模です。対話のパス設計が入念であることは前提として、実際に全社対話をワークさせるために意識したことはあるのでしょうか。

濱脇コンテクストを絶やさないことでしょうか。理念って「全体会のときだけ考える」ような非日常のものではないと思うんですよ。開発された後は、営業活動や採用活動はもちろん、日常会話的に使われる場面もあります。だからこそ「日常にいかに溶け込むべきものか」という活用の観点はすごく大切だと思っていて。
なので、キックオフの数週間前から各事業ドメインとコミュニティの日常の場でどんな対話がされていくか、という時間軸まで含めて設計していました。理念開発について語りやすい状況を個々人の活動に紐づけて作っていくんです。月に1回の全体会での対話内容を、翌週の事業ドメイン定例、コミュニティ定例、そしてメンバーとマネージャーとの1on1の場で共有し合いながら対話して、その内容が事務局に共有され、プロセスのチューニングが行われる。それが1巡、2巡と重なって、次の全体会に進んでいくんです。

確かに、全体会の後のSlackでは、各事業ドメインやコミュニティのチャンネル、あるいは各個人のtimes(分報・日報感覚で自由に作成・活用できる、出入り自由でオープンなチャンネル)で理念に関する対話や新たな気づきが日常的に共有されていたように思います。バリューのうち「開く」なども、すぐにメンバーが自発的にスタンプを作って活用されていきましたよね。

濱脇そうでしたね。やっぱり月に1回の場で対話するだけだと「あんまり覚えてないな」みたいな状況も生まれてしまうと思うんです。

吉野全体会は月初の金曜日であることが多いので、その翌週の月曜日のマネージャー定例でリフレクションやヒアリングをして、火曜日の1on1でメンバーとマネージャーが対話して……というように、MIMIGURIが元々、全社的に設計しているカレンダーデザインがワークした側面もあると思います。

実際の全体会のワークショップに同席していると、同意や共感はもとより、違和感や「わからなさ」を率直に伝え合ったり、そこに新たに問いを立てるような場面も多く見られました。心理的安全性がとても高い場になっていたと思うんですが、何か工夫した点はあるのでしょうか。

渡邉「MIMIGURIらしさ」を分かち合う7月全体会の対話の場で、「違いと重なりを見つける」「自分たちで理念を創り上げていくことに実感を持つ」という2つの目的を目線合わせして、実施しました。「理念を作るよ」と呼びかけたところで、なかなか経験がないことなので実感がわかないのが正直なところだと思うんですよね。
「違いと重なり」を見つけたり、共有しあう機会になるようにとも意識していて、「言い残しが無いようにね」という呼びかけもしていました。というのも、僕は理念というのは“誤読”が起きうるものだと思ってるんです。理念には解釈の多様性や多義性のある言葉が必要で、なぜならそれが結果的に、アクションの多様性に繋がっていくからです。
「イノベーションを起こしていく」ことを目指す組織や、ダイナミックケイパビリティを持った集団であれば、解釈の多様性があればあるほどアクションの多様性にも繋がっていく。けれども、皆共通した哲学を持っている──というバランスが重要だと思っていて。元の2つの組織のミッションにはすでにそのエッセンスがあると思ったので、それをエピソードで棚卸ししてエビデンスを共有した上で、お互いに共感するものだけでなく「わからなさ」まで対話する、という場になればと思ったんです。

1回目の7月全体会が拡散であったとするなら、2回目の8月全体会は収束だったと思います。

渡邉1回目の全体会ワークショップで拡散して、2回目の全体会までの間に各コミュニティで理念体系の構造の意味と機能を共有して、箱と原案を構成する形にしたんです。

渡邉言うならば理念にとっての「箱」とも呼べるこの構成について、解釈の解像度を上げることも2回目の目的でした。「ミッション・バリュー・クレド」がそもそも何を意味してるのかを、一般的な定義として説明するのと自分たちが一度言葉にして改めて解釈するのとでは、やっぱり理解の深まり方が違うんです。
結果的に、バリューとクレドについては収束が難しかったものの、ミッションについては全体的にすごく解像度が上がった状態で着地できて。そこから最終案の決定まではマネージャーに委ねられた……という流れは先ほどの話題に挙がったとおりですね。

吉野その後のバリュー開発のマネージャーの対話では、重心が個人ではなく組織になるように調整をする、というタイミングも何回かありましたね。

それは、具体的にはどのような状況なのでしょうか。

吉野マネージャー自身の語りが「メンバーの代弁」になっているタイミングがあったんです。例えば「個人の衝動が発揮されていることは大切だ」というのはもちろん正しいことなんですけど、それだけだと、MIMIGURIが掲げる組織の創造性を発揮するための見取図「Creative Cultivation Model(CCM)」で言うところの1階層目に留まってしまっていることになるんですよ。

渡邉本来、バリューの重心はチームレイヤーにあるんです。例えば、MIMIGURIは職能毎に組織化(以下、横断組織)しているので、事業を横断してチームを組成しています。故に、横断組織が溶け合いながら機能する営みに重心が置かれることが必要になります。なので、個人衝動を尊重する観点にとどまってしまうと、それはCCMの観点では重心が下がった状態になってしまってるんですよ。

吉野マネージャー自身は2階層目のチームのレイヤーに焦点を合わせようとしながら、メンバーの多様性という1階層目になってしまっている、という。僕ら事務局側もそうでしたが、この重心の違いやズレは意外と自分では気付きにくいものだったりもするので、ミナベ(MIMIGURI 代表取締役 Co-CEO)からインプットを得たりして、対話で調整を行っていきましたね。

メンバーを尊重する思いや、愛がある故に重心がそちらに寄ってしまう……というのもありそうだと思いました。Podcast「MIMIGURIの談話室」でも、ミナベさんとMIMIGURI 代表取締役 Co-CEO 安斎さんによる「問いで組織の重心を調整した」というエピソードが語られていましたね。

濱脇そうですね。僕ら側の視点でも、やはりフィードバックというよりはリフレクションでした。プロセスの中で「それで良いのだっけ?」と問いでリフレーミングするような。

渡邉Co-CEOの2人は、ミドルマネジメントに意思決定を委ねてくれていたので「どうしなければいけない」みたいなことは言わずに、僕らのメタ認知を高める働きかけをしてくれた感じでしたね。それによってミドルマネジメントを担う全員が「あっ」と気づいたんです。

「“開く”ってなんだろう?」​​理念開発と浸透のプロセスが、日常にまで溶け込んだ。

MIMIGURIが掲げるバリューの中には、「良さ」についての言及があります。今回の理念開発で事務局の皆さんが感じた「良さ」には、どんなものがありますか?

根本繰り返しになってしまうかもしれませんが、組織全体がファシリテーションされていく一体感ですね。個人とコミュニティ、全社を縦断・横断して対話が進み、一つの言葉に収束していく営みそれ自体が、すごく良いなと思いました。

吉野一人ひとりの発言の熱量も高かったですし、本当に全員が一丸となって「MIMIGURIらしさ」を問い直していく営みでしたよね。あとは裏話的なところをお話しすると、全体会の開始前や昼休憩のタイミング、各セクションの間では、マネージャーが自主的に集まって進行を振り返ったり、確認し合ったりしてたんですよ。まるでスクラムを組むような感じで。

濱脇そうそう、円陣組んでた。リモートのビデオ通話なのに、あの瞬間はなぜか体育会系的なノリがありましたね。

そんなことがあったんですか! 全体会の場に参加していたのに、全然知らなかったです。裏側には、そんなドラマがあったんですね。

渡邉組織ファシリテーターとしてのミドルマネジメントの役割が機能したプロジェクトでもあったなと思います。あえて違う観点も言うと、月に1回しかない全体会を2回も使ってほぼ終日、理念を対話して決めていく場を共有できたのは、すごく良かったなと思ってますね。この場にいる49名全員が“創業メンバー”だなって感じがして。

濱脇MIMIGURIの第1期目ですからね。間違いなく皆が創業メンバーです。僕が思うのは、Slackやミーティングの場でメンバー同士の対話が増えていることですね。そして、開発した言葉が実際に日常で活用されていること。やっぱり、皆で開発するからには「活用されたい」って僕は思うんです。先ほどの「バリューの言葉がすぐにスタンプとして作られた」とかもそうですが、「“開く”ってなんだろう」と色々な場面で対話されていたりするのも嬉しくて。理念開発と浸透がシームレスに繋がる形になったのは、やっぱり良いなと思いますね。

ミッションとバリューを新たに掲げながらも、プロジェクトは「クレド」の策定へと続いていきます。MIMIGURIが社会に向けてどのような価値を提供していこうとしているのか、描く未来像をお聞かせください。

渡邉手前味噌になるかもしれませんが、MIMIGURIは「面白いからやってみよう!」と思ったら素直にそう言えるし、実際に取り組んでもいける組織だと思うんですよね。クライアントとのプロジェクトでも、そういった営みを少しずつつくっていけているところなんです。
僕は、世の中にある色々な場について「もっと遊べるといいのにな」と思っていて。「会社」という場も「会社っぽくなりすぎてる」と感じるんです。例えば、「自由にできないのは会社のせいだ」「この仕組みがよくないんだ」みたいな声があったりしますよね。そういった事実もあると思いますし、批判自体は決して悪くないんですけど、僕自身やMIMIGURIが関わることによって、仕事という場や世の中に“遊び”の感覚を取り戻したり、高めたりすることができたらいいなと思います。

吉野マネージャーの立場で思うのは、MIMIGURIに新しく入社したメンバーは、皆が「会社員っぽくない」ことに戸惑うんですよね。「会社員として、こうしないといけない!」みたいな固定観念を剥がしていく、その人の本来の姿に戻していく。そういう変容が起きるのがMIMIGURIのオンボーディングの特徴でもあって。
MIMIGURIは本当に飽きることが全く無くて、僕自身もずっと触発され続けている環境なんです。こういう組織のあり方を僕ら自身も体現していきたいですし、社会にも広げていけたらいいなと思います。

濱脇ふたりが全部言ってくれた感じがしますが(笑)。じゃあ僕からは、あえて実践的な目線で。バリューに掲げる「開く」は多様な解釈が認められる言葉ではあるんですけど、これは社内の人たちを奮い立たせる言葉じゃなくて、社外の人と共にそうありたいっていう意味でもあるし、何なら世の中がそうなったらいいな、という意味も含まれてると思うんです。
だからMIMIGURIは、自社プロダクトであるCULTIBASE(MIMIGURIが運営する学習プラットフォーム)事業やコンサルティング事業、研究活動で実践中のナレッジや知見をどんどん“開いて”いきたい。それを社内だけでなく、社外の色々な人たちと取り組んでいきたいなと思いますね。

根本第1期を改めて振り返ると、社名開発や理念開発社内でのCCMの解像度が底上げされたり、視座がチームや組織全体に上がりつつあったりと、まさに自社で「Cultivate the Creativity」が体現された1年だったなと思います。
ミッションやバリューを体現したMIMIGURIらしいプロジェクトや事業が、それこそ結実してどんどん社会に生み出されていく。そんな未来を実現するための一人ひとりの道のりが、どんどん解像度高く見えてきているのを感じるので、その歩みをさらに加速させていけたらと思いますね。

(2022年2月 取材)

  • Writer

    田口友紀子