1000万DL数を誇る「バンドルカード」を運営するFinTech企業のカンム。 躍進するカンムがさらなる事業発展に向けて実行したこと

株式会社カンム(以下、カンムさま)は、2011年に創業し、誰でもすぐにつくれるVisaプリペイドカード「バンドルカード」や“投資と決済”を1つのアプリで完結できる「Pool」などを提供するFinTech企業です。同社は「銀行機能のアップデート」を目指しており、その取り組みによって飛躍的な成長を遂げています。さらに、2022年には三菱UFJ銀行との資本業務提携を発表し、翌年にはグループの参画を果たしました。
カンムさまは一層の事業拡大と組織の成長を見据え、今回はMIMIGURIと共に新たな理念(ミッション・バリュー)を開発し、2024年2月に発表しました。今回はMIMIGURIのプロジェクトメンバーである矢口泰介、小田桐翔大、山里晴香、大久保潤也が「新しい理念開発の背景やどのようなプロセスで誕生したのか」を語ります。

躍動するカンムの事業多角化に向けたステップ


—— 今回は、カンムさまからどのような相談をいただいたのでしょうか。

矢口:新たな理念の策定です。現在のカンムさまはコンシューマー向け、業界向け事業と多角的に展開していますが、これまでの理念である「心理的Unbankedをソフトウェアで解決する」はこれまでの主力事業におけるメッセージに限定されていました。共に働く仲間も増え、投資家や提携企業などの関係者が増えていく中で、カンムさまがどうあるべきか、カンム株式会社 代表取締役 執行役員CEO八巻渉氏(以下、八巻CEO)がどのように考え、何を目指しているのかを伝える必要あると考えられ、全ての事業を包括した理念の開発されたいとお話しがありました。

——はじめに理念開発のプロジェクトについて教えてください。今回はどのような体制で取り組みましたか?

山里:MIMIGURIは、プロジェクトオーナー矢口、プロジェクトマネージャー山里、ファシリテーター小田桐、コピーライター大久保の4名です。カンムさまからは、執行役員CHRO 横井さま、広報の宮本さま、人事の勝股さまが参加されていました。

——今回はミッションを八巻CEOと、バリューをマネージャークラスの皆さまとのワークショップを通して開発したのですね。

山里:「理念」は企業における道標なので、経営の意思を込めることはもちろん重要です。ただ、道標として機能するためには、策定時に組織全体を適切に巻き込み、思いをきちんと乗せてもらうことが大切だと考えています。特に、ミドルのリーダー層の皆さんは、事業においても、組織においても要になります。

矢口:今回のような理念開発に限らず、MIMIGURIのコンサルティングは基本的に全てオーダーメイドでプロセスを考えることを基本にしています。私たちが掲げるCCM(※)の考え方や学習観を基盤に、目指すゴールに向けて「いま明らかにするべきことはなにか?」について、社内のメンバーはもちろん、クライアントも巻き込みながら一緒に考えていきます。

(※)CCM
安斎勇樹(株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO / 東京大学大学院 情報学環 特任助教)によるウェビナーより:https://mimiguri.co.jp/ayatori/webinar-ccm/

カンムさまらしい表現をさまざまな角度から検証

——ミッションはカンムさまとのどのような対話の中で生まれたのでしょうか?

大久保:八巻CEOとの対話が主体のプロジェクトの中で「FinTech事業を営む企業は、特性的に目指すゴールが近しく、ミッションも似たような表現になる傾向がある」とお聞きしました。今回のプロジェクトでは、どのようにカンムさまらしさを表現するかがポイントだったと思います。なるべく早い段階から叩き台となるプロトタイプを出し、それを基に対話を重ねて、”カンムさまらしさ”をプロジェクトメンバーで言語化していきました。

——言葉の提案において、大久保さんが特に意識したことは何ですか?

大久保:比較的早い段階から、掲げるべきメッセージの方向性は見えていたのですが、カンムさまらしい言葉を見つけるのがゴールなので、コピーのアウトプットだけではなく「なぜこの表現に至ったか」の思考やコンテクストを説明することに時間を使わせてもらいました。八巻CEOとプロジェクトメンバーで対話していく中で、こだわりや大切にしている思想が徐々に明らかになっていき、それを踏まえてさまざまな表現で検証を重ねていきました。

小田桐:コピー案の言葉ができたことで、その言葉が思考をより一層触発し、新たな問いも生まれ、さらに深い対話につながっていきました。

——バリュー開発に向けてマネージャーのみなさまと取り組んだワークショップはいかがでしたか?

山里:ワークショップでは、これまで培ってきたカンムさまの文化を起点に、これから個人・チームがより価値を発揮するために体現したい姿勢について対話しました。実施前は対話の場が受け入れられるだろうかと不安もありましたが、マネージャーの方々のカンムさまへの想いがわかち合われる時間になったと思います。

小田桐:ワークショップを設計する際は「問い」の設定や軌道が肝となります。今回のバリュー開発に向けてマネージャーの皆さまと取り組んだワークショップでも、組織としてもマネージャーの皆さまにとっても、考える意義のある問いの設定や思考を触発する問いの軌道にこだわりました。ワークショップの当日は、これまで大切にしてきたカルチャーを見つめ直すことから始め、事業成長を見据えた日々の中で体現したい姿勢について対話するという軌道で実施しました。結果、マネージャーの皆さまがとても真剣に取り組んでくださり、バリュー検討の種が生まれる時間となりました。

——また今回は、新しい理念のお披露目もMIMIGURIが関わったと聞きました。

山里:お披露目の場は、理念を起点に個人やチーム・組織の今後をみんなで見つめる機会にできればと思い、カンムさまと一緒にワークを考えました。

当日MIMIGURIは参加せず、カンムさまがファシリテーターを務めることになっていたので、私たちからアイデアは出しつつもカンムさま自身がどういう場にしたいか引き出すことを意識していました。

カンムさまは、常に仲間の反応を思い浮かべながら、伝え方のニュアンスや用いるワード一つ一つを丁寧に練られていたのが印象的でした。あとで当日の写真を見せていただいたのですが、みなさん活き活きとした表情でした。アンケートでは「立ち止まって考えることができてよかった」「行動指針の捉え方の解像度が高まった」といった声もあったそうです。
組織づくりは、組織の文脈や特徴を捉えた方法によって効果が変わってくるものだとあらためて感じ、その一歩に伴走できたのはとてもよい経験でした。

全てのプロジェクトを終えて

——プロジェクト終了後、八巻CEOからは「自分たちのみで進めると時間がかかりそうなところを、マイルストーンを切ってプロジェクトグリップしてくれたのがよかった」とコメントをいただいたんですよね。

山里:プロジェクトマネージャーとしては嬉しいお言葉です。プロジェクトの進め方やより良い方法についてカンムさまが率直に意見をくださったおかげでお互いにとってよいやり方を模索することができました。

小田桐:毎回のミーティングでも、プロジェクトのゴールからブレイクダウンして、「今日のミーティングではここまでを目標にするのはどうでしょうか?」のようにミーティング単位でもゴールを目線合わせすることで、各ミーティングの対話も深まり、結果的にプロジェクト全体の進行の安定感にもつながったかと思います。

——対話が主体のプロジェクトに馴染みがない方が少しだけでも対話の価値を感じてくださったのは嬉しいですね。

矢口:心からそう思います。一方で同時に僕たちは「自分たちのやり方が唯一の正解だ」という意識でお客様に向き合っているわけではありません。パートナーの組織文化と向き合い、その企業文化の良さをみつけていくことを大切にしています。その過程で「考え方が整理された、とか、理念開発というチャレンジをしてよかった」と思っていただく変容に立ち合うことが私たちが最も目指すことです。その意味では僕たち自身も、毎回の対話型のプロジェクトを通じて変容したいと思っているんですよね。

新しいカンムのミッションとバリュー

お金の新しい選択肢をつくる

金融の存在意義は、消費や投資の機会を増やし経済成長を促すことです。
しかし、まだ多くの個人や企業が金融から距離を置いており、
経済活動の機会損失が生じています。
私たちはソフトウェアを通してお金の新しい選択肢をつくり、
日々の生活や事業、商流の中に金融を溶け込ませ、
誰もが自然な形で金融にアクセスできる社会を目指します。


——それでは最後に、新しい理念について感想を教えてください。

山里:カンムさまの以前のミッションは「心理的Unbankedをソフトウェアで解決する」でした。こうして振り返ってみると新しいミッションはこれまでのカンムさまの歩みから地続きでつながっていて、発展した存在であると改めて感じました。

小田桐:ひとつひとつの言葉から対話をした時の景色や想いが想起される、カンムさまらしいメッセージだと思います。そして何より、対話のプロセス自体に価値があったと思いますし、対話を重ねてきたことで、皆さまにとって手触り感のあるミッションになっていたら嬉しいです。

大久保:3つの行動指針に加えて1つ、「with PLAYFULNESS|楽しくやろう」を入れられたことはとてもよかったなと思ったところでした。プロジェクトの中で、これまで言語化されていなかったけど、社員って実はこんな意識を大切にしているよねと対話が深まったことで生まれた言葉だなと思います。

矢口:理念策定のセッションの中で八巻CEOから「カンムはものづくりを大事にしている」とお話をいただいたことが印象に残っています。企業のアイデンティティは、事業ドメインもさながら、自分たちの文化やルーツをどのように認識しているのか、という感覚にも表れると思います。今回のミッションに「つくる」という言葉があることがとても素晴らしいと感じています。


——ありがとうございました。

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カンムのミッションを再定義。代表 八巻が語る「お金の新しい選択肢をつくる」とは

  • コンサルタント / プロジェクトオーナー

    矢口泰介

  • コピーライター/コンセプトプランナー/サウンドプロデューサー

    大久保潤也

  • プロジェクトマネージャー

    山里晴香

  • ファシリテーター

    小田桐翔大