オリンパスならではの「医療×デザイン」ワークショップメソッド確立を支援。

Point

  1. 基礎から実践、形式知化までを支援し、これまで続けてきた独自ワークショップをより強固なメソッドに確立する。
  2. 「体験そのものが学びとなる」学習機能と再現性を両立した演習プログラム設計。
  3. 演習で生まれた「問い」がそのまま実践の起点として使用できるゴール設計。

1950年、世界初の胃カメラとなるガストロカメラがオリンパス株式会社(以下、オリンパス)により実用化されました。それ以来、オリンパスは内視鏡事業をはじめとする医療関連事業で成長し続け、多彩なサービスで世界の人々の健康やQOL(Quality of Life)向上に貢献し続けています。

そんなオリンパスグループがすべての活動の基本思想として掲げているのは、「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」。そのデザイン部門となるオリンパスデザインセンターでは、製品に使いやすさや統一感を与えるのみでなく、独自のブランドアイデンティティを形成することも重要な使命としています。

不確実性の高い時代の中で、よりイノベーティブなプロダクト開発が行えるよう、デザインセンターは縦割りの部門体系からの脱却を図っていました。製品開発においても、これまでは開発ドリブンのアイディエーションが多かったものの、部門や世代、そして医師などの外部の専門家を交えて共創する場づくりを必要としていました。

基礎から実践、形式知化まで。これまで育んできた独自のワークショップを、より強固なメソッドに確立する。

マーケティング部門と開発部門、専門家である医師、そしてデザイン部門が一体となりワーキンググループを作り、デザインワークショップによってアーリーフェーズのコンセプトを検討する場づくり。そのために課題となっていたのが、自社の事業特性に合わせたワークショップデザインの手法でした。

対話を重ねたところ、将来的には全員がファシリテーターとなるビジョンがあることがわかりました。そこでMIMIGURIはスコープを中長期に拡大。ワークショップ単体のアップデートを目的とする短期的な研修のみでなく、10年後、20年後を見据えながら、実践から定着、形式知化までの長期的なスコープでワークショップメソッドの確立を支援するプロジェクトに転換しました。

MIMIGURIはワークショップの基礎概念を身につける研修に加えて、オリンパスがこれまで育んできた独自のプログラムをより良くアップデートする監修、そして自社ナレッジをトレーニングプログラムとして内製化する開発サポートまでの3つのステップをプランニング。ファーストステップとして基礎概念とコアスキルの習得をゴールとした最初の演習プログラムがスタートしました。

「体験そのものが学びとなる」学習機能と再現性を両立した演習プログラム。

デザインセンターのワークショップに参加するステークホルダーは、マーケティング部門に開発部門、そして医師と多岐に渡ります。医療という専門性の高い分野であることから、演習プログラムはどのようなテーマや条件にも応用しやすい基礎的なフレームをデザインしました。

MIMIGURIは「プログラムデザイン研修」と「ファシリテーション研修」のそれぞれに特化した演習プログラムを展開。演習プログラムを受けたメンバーが、その設計自体をメタ認知的に捉えることで設計手法を学べると同時に、同じプログラムを他メンバーへも応用して展開可能な、学習性と再現性を持たせたプログラムデザインとなっています。

デザインセンター内ではワークショップの経験者と未経験者が混在していたため、いずれのプログラムにおいても経験差を埋める目線合わせのチェックインワークを設計。「あなたがイメージするワークショップとは?」「あなたが考えるファシリテーションの役割とは?」という問いかけをそれぞれに設けることで、ワークショップやファシリテーションの類型を個々の経験と紐付けて学べる足がかりを設けました。

演習で生まれた「問い」が、そのまま実践の起点となる。

「10年後にはどんな病気が多いだろうか?」「オリンパスは10年後の医療にどんな貢献ができるだろうか?」──「プログラムデザイン研修」当日の演習で生まれる問いは、デザインセンターの日常の業務と密接なものばかり。オリンパス社内の具体的なシチュエーションを設定することにより、演習の最後に生まれる問いを起点に、そのまま実践へと接続できるゴール設計となっています。

「ファシリテーション研修」においては、一般的によく見られる「向き不向きがある」という誤解を生まないよう、個々のロールプレイ演習の後に、その特徴をファシリテーターの“芸風”として受講者が互いにフィードバック。その人ならではの個性を類型化するフローを含むことで、ファシリテーションの得手不得手の壁を作らず、誰もが個性を生かしたスキルを発見できるプログラムを設計しました。

その後、センター内では「プログラムデザイン演習」のゴールであった「問い」を起点に、ワークショップの実践が始まっています。そのプログラムは当日未参加だったメンバーへも展開され、人材育成の機会が生まれるとともに、ファシリテーター自身のスキルアップも兼ねる機会となっています。

現在は、オリンパスがこれまで育み続けてきた独自のワークショップをより良い形へアップデートする監修プロジェクトも進行中。オリンパスのデザイナーたちがこれから生み出す共創の場が、10年後、20年後にグローバルでどのような提供価値を創出するのか。次々に生まれ続ける問いこそが、その新たな道を切り拓くに違いありません。

(取材・文:田口友紀子)

  • Workshop Planning & Main Facilitator

    渡邉貴大

  • Reviewer & Sub Facilitator

    和泉裕之

  • Project Leader & Project Management

    瀧 知惠美