ミドルマネジメントが楽しくなる!? ウェビナー『チームを覚醒させる「問い」のデザイン』開催レポート

  • 安斎 勇樹

    Co-CEO

  • 東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。現在は東京大学大学院 情報学環 特任助教を兼任。博士号取得後、株式会社ミミクリデザイン創業。その後、株式会社DONGURIと経営統合し、株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEOに就任。経営と研究を往復しながら、人と組織の創造性を高めるファシリテーションの方法論について探究している。主な著書に『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』、『問いかけの作法:チームの魅力と才能を引き出す技術』、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』、『ワークショップデザイン論』などがある。

MIMIGURIは、2023年10月3日、安斎勇樹(株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO / 東京大学大学院 情報学環 特任助教)による『チームを覚醒させる「問い」のデザイン〜新時代のミドルマネジメントの真髄』オンラインセミナーを開催しました。

1,800人(当日参加者・アーカイブ配信視聴者合計)以上のご登録・ご視聴いただき、アンケート回答では総合満足度97.8%(TOP2回答|とても満足している62.5% 満足している35.3%の集計値)、共感度97.9%(TOP2回答|とても共感できた63.8% 共感できた34.1%の集計値)と大変ご好評をいただきました。※登録人数は2023年10月30日時点

本記事では、ウェビナーの内容と視聴者の感想をご紹介します。

安斎勇樹が著書の『問いのデザイン』を大幅アップデート

HRアワード2021の最優秀賞にも選ばれた『問いのデザイン』は、問題の本質を見抜き解くべき問いの設定、課題解決の思考法・スキルを体系化しました。発行部数は5.6万部を超え多くのミドルマネージャーやファシリテーターに届いています。

本ウェビナーでは、10月1日「大切な問いに向き合う日」に合わせ、『問いのデザイン』を大幅アップデート。問いを起点に組織を変えるミドルマネジメントの新原則として、目標設定、ミーティングデザインや1on1、問題解決などの具体的方法から、冒険心を突き動かす「問い」の重要性まで幅広くお話ししました。

ミドルマネージャーは“組織の靭帯”ともいえる重要な役割ですが、伝言ゲームと上下からのモグラ叩きで意志なき調整役になりがちです。問いの力を味方にすれば、メンバーが成長し、チームの問題解決能力が向上し、生産性と成果を最大化できます。何より、チームの覚醒と共にあなた自身の個性と創造性が発揮され、マネジメントが楽しくなるはず!

背景:軍事的世界観からの脱却

令和の時代に直面しているマネジメントの命題として、あまりにも軍事的世界観に偏りすぎているという点があります。これはメタファーではなく、孫子「兵法」による軍事戦略に始まり、現代のビジネスフレームワークの数々が戦争論に基づいて作られ発展し、今なお経営論の中核になっています。

しかし、人間と社会の価値観は大きく変化しています。例えば、会社のために隷属する旧来の「会社中心のキャリア観」から、さらなる自己実現を探究するための構成要素として会社があると考える「人生中心のキャリア」観に変化しています。事業観も、競合との領地の奪い合いから、仲間と共創するよりよい社会の開拓へ変わっています。

これらを、MIMIGURIは「軍事的世界観」から「冒険的世界観」へのパラダイムシフトだと捉えています。

組織マネジメントも、完全トップダウン型のマネジメントから、半トップダウン半ボトムアップで流動的で自律的で創造的な組織へと転換が求められています。

今も昔も、組織においてミドルマネージャーが大事であることは変わりません。ただし、これまでのコマンドを下ろし管理する役割から、経営と現場の間に入りシナジーを生む役割に変える必要があります。経営と現場には様々な矛盾が飛び交い、上から下から斜めからベクトルが向く中で、ミドルマネージャーは、その力を合気道のようにうまく生かしシナジーに変換していく。そのための「ファシリテーション能力」が必要です。

※軍事的世界観から冒険的世界観への変化は、前回のウェビナーでも触れています。合わせてご参照ください。
軍事的世界観から冒険的世界観へ。3,200人以上が登録・視聴した『新時代の組織づくり』ウェビナー開催レポート

冒険的世界観へのシフトを妨げる軍事的組織の2つの現代病。「認識の固定化」と「関係性の固定化」

過度なトップダウンで合理的すぎる業務効率化を繰り返すことにより、物の見方が近視眼的な状態になると「認識の固定化」に陥ります。例えば、本当に信号って青で渡った方がいいのかな? そもそもあれって緑と青どっちなのかな? と逐一考えていると遅刻してしまう。目の前のことを深く疑わない方が効率的なことがままあります。しかし、認識の固定化が蔓延すると主体性と創造性が失われ冒険的世界にシフトできなくなります。

さらに、組織の各所で認識の固定化が蔓延すると、機能的で合理的な役割分担の慣習化によって、お互いの個性や長所を理解するミュニケーションが欠落し精神的なつながりが希薄になります。これが「関係性の固定化」です。

実際にMIMIGURIにご相談いただいた事例から

あるメーカーの方から「若手のエンジニアは頭が硬く、自分たちでアイデア提案せず、イノベーションが起きない」とご相談を受けたことがありました。我々は一瞬立ち止まり、エンジニアの方にもお話を伺うと「うちの上司は頭が硬くて新しい技術を聞いてもらえない」と言っていました。組織における一種のあるあるで、お互いがお互いを「頭が固い」と言い合ってるという状況です。これを心理学で確証バイアスといい、お互いに「この人ってこういう人だよね」と決めつけると、それが現実化していきます。

技術的問題と適応課題

経営学者ロナルド・A・ハイフェッツは、組織の問題を「技術的問題」と「適応課題」に分けました。技術的問題は、やり方を知っていれば解ける問題です。他方で適用課題は、ノウハウではなく当事者たちの認識や関係性を変えないと解決しない問題です。情報や知識が溢れ、多様な専門家の方がいる現代で、組織の中で解け残る問題は「適応課題」なのではないかと整理しています。

先ほどの事例もまさに「適応課題」です。両者ともに、頭が硬くて意見を言わない・話を聞いてくれないという認識を持っている、当事者の関係性が問題の根本です。

適応課題解決のキーワードは「対話」

氷山は、大半が水の中に沈んでいて目に見える部分はごく一部に過ぎないというメタファーですが、人間も同様に、その人の言動や行動は、本質のほんの一部に過ぎません。大事なことは、何を考えてそれを言ったのか。なぜそう考えたのか。根っこにある前提や価値観にあたるものを、仕事現場やチームの中で可視化することが必要です。前提や価値観をもってコミュニケーションをすることが対話の本質です。

特にリモートワークでは、見える部分が少なくなります。また、スモールチームでは対話がおろそかにされがちです。同僚や上司・部下の対話がなくなると、忙しいマネージャーは、前提や価値観を明かさないままに指示やフィードバックをしてしまいます。言われる側は、なぜ頼まれているのか前提がわからず、納得できずに対応をする。それにより精度がずれ、またフィードバックが繰り返され、心が通い合わないままにすれ違いが起き続けます。

これは、他部署同士でも起きます。営業と開発、人事と事業部、そして経営と現場。組織のあらゆる関係性の中で、どんなに優秀な人たちでも頻発します。冒険的組織づくりにおいては、認識の固定化と関係性の固定化で生まれる適用課題を「問い」の力で揺さぶり、対話を起こしたりしながらチームのポテンシャルを覚醒させていくことが必要です。

問いを起点に組織を変えるミドルマネジメントの新原則

ミドルマネジメント論には複数のトピックがありますが、本ウェビナーでは特に重要な「目標設定」「ミーティング」「問題解決」にフォーカスしてお話をします。

目標設定の新原則:目標に問いを埋め込み、好奇心をくすぐる

目標設定は「目標に問いを埋め込み、好奇心をくすぐる」のが原則です。少し意識するだけで、目標の質感を軍事的なものから冒険的に変えられます。

大前提として、目標が一体何のためのツールなのか、価値観をアップデートする必要があります。これまでの軍事的な世界観においては、目標は勝利条件でした。上が目標を決め、下が従うよう行動をコントロールするのが原則でした。

これからは、数値目標を達成するという考え方を引き継ぎながらも、そもそも目標は何のためなのか、自分たちで意味を解釈する必要があります。冒険的世界観では、目標を受け取った個人の内発的動機を大事にします。目標は、社会や顧客に対して価値を生み出していくための指針になるべきで、一人一人の好奇心を刺激し掻き立てるものであり、やりがいや感情、意義といった感情的・精神的な部分でも動機付けられるものであるべきです。

目標を達成したら終わりではなく、達成することで新たな景色が開かれたり、組織のさらなる可能性が開かれるものであれば、冒険の指針となります。

ウェビナーでは、「ミーティングの新原則」と「問題解決の新原則」もお話ししました。アーカイブ動画では全編をご確認いただけます。
CULTIBASE Labでの視聴(月額2,980円)
CULTIBASE Labに会員登録いただくと全編をご覧いただけます。講義資料もアーカイブ視聴ページにてダウンロード可能です。なお、CULTIBASE Labに初めてご登録いただく方は10日間無料でお試しできますので、この機会にぜひ登録をご検討ください。
CULTIBASE Labでの視聴はこちら

Zoomウェビナーによる視聴(無料/2023年10月31日まで)
Zoomウェビナーによるアーカイブ(オンデマンド)配信は、2023年10月31日までを予定しています。
Zoomウェビナーによる視聴はこちら

総合満足度・共感度ともに約98%を達成。視聴者アンケートレポートより

ウェビナーには、大企業やメガベンチャーのミドルマネージャーの皆さまに数多くご参加いただいたほか、経営者層の方々、教育や医療を始めとする公的機関に勤務の方など、幅広い業種・職種の方にご参加いただきました。ご登録・ご視聴いただいた方の50%を超える764名の方にアンケートに回答いただきましたので、その一部をご紹介します。

総合満足度は97.9%(5段階評価の上位2 合計値|とても満足している62.4%、満足している35.5%)と、大変高い評価をいただきました。

内容に対する共感度は98.0%(5段階評価の上位2 合計値|とても共感できた63.4%、共感できた34.6%)と、こちらも多くの方に共感いただいています。

参考になった度合いは96.4%(5段階評価の上位2 合計値|とても参考になった63.0%、参考になった33.4%)と、こちらでも多くの方に参考になった・具体的に活用できそうと評価いただいています。

実際の声より

問題は入り混じっているという前提で 技術課題と適応課題を切り分ける目線を持つことが本当に勉強になりました。 組織で起きる問題の多くは、適応課題が多いと思うのですが、 自分はもちろん、メンバーが向き合う覚悟を持ってコミュニケーションできるかも重要だなと思いました。 そこに苦労しているので、いろいろ試行錯誤してみます。
これまでさまざまなウェビナーに参加してきましたが、1時間半と長丁場にもかかわらず本当に有意義な時間でした。学びが多かっただけでなく、チャットのやりとりを拝見しながらマネジメントで感じている難しさを皆さんと共有できたような気がして心が軽くなりました。
リーダー職ではない社会人歴3年目の一般社員ですが、とても学びになりました。できてないというレッテルを貼って人を責めたり、「自分の思う正しい対応」をするよう押しつけたりするのではなく、対話・課題設定の意識を持って生きていきたいと思います。また、問いのデザインが自然に実践できるよう、精進します。本当に私の今後の人生に影響するようなウェビナーでした。次回も絶対に参加させていただきます。本日は本当にありがとうございました。
とても有意義な時間を過ごすことができました。ありがとうございました。技術的課題と適応課題という概念を意識することがなかったので、区別する必要性を理解することができました。
今まであまり言語化されることのなかった「ミドルマネージャー」にスポットを当てた内容で非常に興味深かった。

アーカイブ配信と関連動画のお知らせ

CULTIBASE Labでの視聴(月額2,980円)
CULTIBASE Labに会員登録いただくと全編をご覧いただけます。講義資料もアーカイブ視聴ページにてダウンロード可能です。なお、CULTIBASE Labに初めてご登録いただく方は10日間無料でお試しできますので、この機会にぜひ登録をご検討ください。
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Zoomウェビナーによる視聴(無料/2023年10月31日まで)
Zoomウェビナーによるアーカイブ(オンデマンド)配信は、2023年10月31日までを予定しています。
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本ウェビナーの補足コンテンツとして、CULTIBASE Labでは、問いのデザイン力を鍛えるための5つのエクササイズを紹介しています。

また、安斎の著書『問いかけの作法』に関する動画として動画で学ぶ『問いかけの作法』も公開しています。『問いのデザイン』では、本質的な課題を設定する方法を体系化した一方で、『問いかけの作法』では現場ですぐに役立つ実践知をまとめています。あわせて、『問いのデザイン』と『問いかけの作法』について学べるラーニングパスもご利用ください。

法人向け研修プログラムも提供しています

MIMIGURIでは、人と組織の可能性を活かした多角化経営を実現するための「経営・組織づくり」「組織デザイン」「ミドルマネジメント」の叡智を身につける、講義と実践的なワーク形式で柔軟に学べる法人向け研修プログラム『CULTIBASE School for Business』を提供しています。

本ウェビナーをきっかけに、自組織内に展開したい方や、さらに深く学びたい方はぜひご検討ください

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改めまして、『チームを覚醒させる「問い」のデザイン』ウェビナーに多くのご登録・ご視聴ありがとうございました。

  • PR / Editorial

    二宮みさき