経営方針の再構築から、次世代リーダーへの変革継承まで。EBSSのリブランディングと組織変革

Point

  1. 経営トップの「叩き台」を起点に、役員・ミドル層が主観をぶつけ合い、本来のアイデンティティを再発見する対話プロセスの設計
  2. アイデンティティをMission・Vision・Professional Policy(以下MVP)やロゴ・ホームページなどへ落とし込み、社内外へ一貫したメッセージを発信できる状態をつくるクリエイティブ支援
  3. 曖昧だった役職・階層ごとの期待値を明確化し、次世代リーダーを担い手とする継続的な変革推進体制への橋渡し
  4. 全社会での対話を通じ、個人の思いを組織共通の認識へと育て、MVPを日常の「道具」として根づかせるファシリテーション

概要

製造業を支えるITプロフェッショナルファーム、イー・ビー・ソリューションズ(以下、EBSS)は、事業の多角化を進める一方で組織としての強みや「自社らしさ」が曖昧になっていました。加えて、採用競争の激化・中堅層の不在・ベテランの引退が重なって育成と採用が追いつかない構造的な問題が発生するなか、役職ごとの期待値が不明瞭なために率直なフィードバックを伴う成長支援もしにくい状況が続いていました。
そこでMIMIGURIとともに取り組んだのが、MVP(Mission/Vision/Professional Policy)の策定とリブランディングです。経営トップの「叩き台」を出発点に、役員・ミドル層が本音を出し合う対話を重ねてアイデンティティを再認識し、人事制度の刷新や次世代リーダーによる変革推進体制構築へと接続していきました。
一連のプロセスを経て、現在では幹部層やミドル層に変革を率いる言動が現れ、当事者意識が芽生えはじめています。MVPは「答え」ではなく、主観をぶつけ合い対話を続けるための「道具」として、EBSSの日常に根づこうとしています。

PROBLEM

「お客様に向き合うときのように、仲間に向き合えているだろうか。」プロジェクトの起点にあったのは、代表取締役社長である桐生氏が抱いた一つの問いでした。お客様の課題解決を行うコンサルタントとして、お客様が何を大切にしているのか、たとえば財務でも「キャッシュ重視か、利益率重視か」を見極め、相手が動きたくなる文脈を探るといったことは当たり前の振る舞いです。しかし桐生氏は、お客様の主観には寄り添えている一方で、自社の仲間に対しては同じことができていなかったのではないかと感じ始めます。「自分の考える『当たり前』を前提に進めてしまい、社内では互いの主観を確かめ合えていないのではないか」。その気づきが、本プロジェクトの出発点となりました。
その背景には、構造的な課題が積み重なっていました。外部環境の変化に適応して事業の多角化を進めた反動から組織としての強みが曖昧になり、多様な案件にリソースが分散して「EBSSらしさ」が尖らせにくくなるとともに、個々のキャリア実現も実現しづらくなっていたのです。さらに、採用競争の激化・中堅層の不在・ベテランの引退という「三重苦」も重なります。育成と採用が構造的に追いつかないうえに、役職やジョブグレードごとの期待値が不明瞭なため、率直なフィードバックを伴う成長支援もしにくい状態が続いていました。
こうした状況について、プロジェクト責任者である五嶋氏は「組織に根を張った “空気” の問題」として捉えていました。20年以上同じ体制を続けるなかで、社内にはいつしか「自分たちは変わらないのではないか」というムードが漂い、本来変革を推進する主体となるミドル層も公式的な場で声を上げる機会が減少していたのです。だからこそ、MVPの策定を通じて「経営とミドル層が意見を出し合い、動き出す場をつくること」を、プロジェクト設計の核に据える必要がありました。

APPROACH

フェーズ1:経営方針の言語化と、対話によるアイデンティティの再発見(約4ヶ月)

まず桐生社長との個別セッションを通じて、長年明文化されないままとなっていた経営方針を深掘りし、「叩き台」としての言語化を支援しました。その上で、役員・ミドル層を巻き込んだ対話を開始。MIMIGURIは、立場を超えて本音を出し合い、互いの主観を重ね合う場を設計しました。
幹部間では、EBSSが社会や顧客に生み出したい価値・プロフェッショナルとしてこだわりたいスタンスや行動を、ミドル層とは、業務プロセスを分解しながら目に見えない強み(事業ケイパビリティ)を、それぞれ言語化していきました。
ネガティブな本音も含めて双方向に声を交わすプロセスを重ねることで、EBSSが本来持つプロフェッショナルとしてのアイデンティティの輪郭が、少しずつ浮かび上がっていきました。

フェーズ2-1:アイデンティティの、顧客・採用・社内コミュニケーションへの実装(約5ヶ月)

再認識したアイデンティティを、Mission・Vision・Professional Policy・タグラインのコピー、ロゴやホームページデザインへと形にしていきました。MIMIGURIのクリエイティブチームは、言葉やビジュアルの試作を媒介に幹部陣の語りを引き出しながらファシリテートし、顧客・採用・社内コミュニケーションそれぞれの場面で「EBSSは何を強みとした、何者か」を一貫して表明できる手段を揃えていきました。

フェーズ2-2:期待値の明確化と、次世代リーダーによる変革推進体制の構築(約5ヶ月)

並行して、組織図・人事制度・キャリアパスといった多様なアウトプットを媒介に、これまで曖昧なままとなっていた仲間への期待値をどう明確にしていくか、幹部間で議論を重ねました。混沌とした問題事象の数々を紐解くなかで、「誰に何を期待するのか」という、これまで経営が正面から向き合えてこなかった根本的な課題を明確にしていきました。
さらに変革推進プロジェクトチームを複数発足させ、経営・幹部による責任者と、次世代を担うリーダーをアサインすることで、課題解決に向けた自律的な動きへとつなげていきました。

フェーズ3:全社での対話による、価値観の共有と浸透

全社員が集まる全社会の場では、製造業に精通したMIMIGURIのコンサルタントの講演を起点に、社長やEBSSのコンサルタント同士がプロフェッショナルとしての体験と葛藤を語り合うパネルディスカッションを実施。一人ひとりがプロフェッショナルポリシーを立脚点に、「私たちは、製造業に関わり続けるうえで、どのようなプロフェッショナルであるべきか」を自らに問い、言葉にする時間を過ごしました。   

RESULT

一連のプロジェクトを経て、変化はまず幹部層の言動に現れました。ファシリテーターを務めたMIMIGURI柳川はこのように振り返っています。「プロジェクトの開始時は、幹部の中でも次世代リーダーに対して期待を明確に伝えることに対して尻込みをするような、遠慮を含む消極的な言動が多くあったことが印象に残っています。ところが、進むべき方向が明確になったプロジェクトの中盤には、ある幹部の方から次世代リーダーの具体的な巻き込み方に関する相談をいただくようになりました。そして気づけば “理想と現状認識を率直に伝え合い、ともに課題に向き合う幹部と次世代リーダー陣の姿” がそこにはあったんです。」
また、プロジェクト責任者の五嶋氏も「限られた範囲での業務が中心だったメンバーが、会社の成長をリードする役割を明確に期待されることで、自分たちが会社を引っ張るのだという当事者意識を育み始めたのではないか」と語ってくださいました。長年組織が向き合えずにいた課題に、経営とミドルが手を取り合って手をつけようとする空気が生まれています。
こうした変化の先に、桐生社長は「自分の主観を育て、相手の主観を知り、認めていく。それを掛け合わせることで共感を育み、組織を強くしていく」という展望を描いています。
策定したMVPは「答え」ではなく、互いの主観をぶつけ合い、対話を続けるための「道具」です。個性の強い人材がバランスしながら共存するというEBSSの特性を活かし、その道具を日常に根づかせていくことが、これからのテーマとなっています。EBSSはこれからも、「製造業の経営と現場をつなぎ、世界と次世代につなぐ、IT変革のプロ集団」として、対話を重ね、人と企業の持続的な成長環境を支え続けていきます。

  • Account Owner / Project Owner

    柳川 小春

  • Project Manager / Project Owner

    田中 風花

  • Consultant / Facilitator

    矢口 泰介

  • Art Director & Creative Facilitator

    吉田 直記・五味 利浩

  • Copy Writer & Facilitator

    大久保 潤也

  • Workshop Designer / Supporter / Speaker

    乗松 裕介・安野 友博・濱脇 賢一

  • 【Partner】Web Art Director / Designer

    株式会社イチゴウ(上原 繁・永峰 晴香)